「地域で支え合う仕組みづくりを」黒田和代さん


所沢の仕掛人。第11弾

農林水産省と環境省の「平成27年度推計」によると、日本の食品廃棄物は、年間2842万トン。そのうち、まだ食べられるのに廃棄される食品、いわゆる「食品ロス」は646万トンとなっているそうです。これは、世界中で飢餓に苦しむ人々に向けた世界の食糧援助量(平成26年で年間約320万トン)の約2倍に相当!
今回は、「食の無駄を減らし、地域に『食』を通じたセーフティネットのしくみをつくりたい」と所沢に本部を置いて活動している「フードバンクネット西埼玉」の代表理事、黒田和代さんにお話を伺いました。

所沢の仕掛人。第11弾
黒田和代さん「地域で支え合う仕組みづくりを」

VOL.11 Ms.Kazuyo Kuroda ( Representative Director /Food-bank Network Nishi-Saitama )

所沢の情報を発信する「所沢なび」では、「所沢の仕掛人。」をシリーズでお届けします。
このシリーズでは、「所沢を元気にする活動をしている人」にクローズアップしてご紹介していきます。

取材:2019年2月18日 成田知栄子


▲NPO法人フードバンクネット西埼玉 代表理事 黒田 和代さん


1.黒田和代さんのご紹介

黒田さんは、独立型社会福祉士(個人事業主の福祉専門職)として、地元で成年後見の仕事や生活困窮者の支援活動に取り組んでいました。困窮者支援の活動で、たびたび都内のフードバンク団体を利用したそうですが、地理的な距離感から困窮者支援活動がスムーズに進まないことも。そんな経験から「自分が暮らす地域にもフードバンクがあればいいのに」という思いから、「では、自分たちで立ち上げよう」と知り合いに声をかけ、有志で「フードバンクところざわ」を立ち上げ2015年から活動を開始。

翌年2016年には活動が狭山、入間エリアにも広がり「NPO法人フードバンクネット西埼玉」として活動を続けています。

同団体は、「全国フードバンク推進協議会」の加盟団体で、2016年度WAM助成対象事業、2017年度2018年度埼玉県シラコバト基金助成事業を行っています。

 

◆フードバンクとは?◆
飽食の国といわれいる日本でも、一方では今日食べるものがなくて困っている人がいるという現状があります。余剰生産やまだ食べられるのに捨てられてしまう食料品(=フードロス問題)を提供してもらい、食べ物を必要としている人につなげる活動です。

黒田和代さんプロフィール


▲黒田和代さん 社会福祉士 精神保健福祉士

1963年生まれ さそり座 O型 熊本県出身。
早稲田大学教育学部卒業後、専業主婦を経て、30代半ばで福祉の世界へ。
福祉行政のコンサル業務や認知症高齢者専門病院のレクレーションスタッフ、精神障害者生活訓練施設職員などを経て、独立型社会福祉士として活動。

・NPO法人フードバンクネット西埼玉 代表理事
・オリーブ社会福祉士事務所
・NPO法人 サマリア 理事長
・埼玉県社会福祉士会会員
・埼玉県精神保健福祉士協会会員
・貧困研究会会員
・オープンダイアローグ・ネットワーク会員


2.インタビュー
(1)フードバンクネット西埼玉の誕生

——黒田さんが「フードバンク西埼玉」の活動を始めたきっかけを教えていただけますか?

黒田さん:
困窮者支援のNPO活動をしていた時に、まだ安全に食べられる食べ物が毎日大量に捨てられている現状がある一方で、一見平和に見える所沢の街の中にも今日の食べ物にも事欠く人々が少なからずいるという現実に大きなジレンマを感じたんですね。地域で支え合えるようなフードバンクの仕組みが所沢にもあれば、何か変わるはず。そんな思いで、知り合いに声をかけはじめ、有志を募り、所沢にフードバンクを立ち上げました。

〝どんな人にも優しい街〟になる仕組みをつくることで、きっと地域が本当に豊かになるのではないかなと考えています。最初は、果たして継続できるだろうかと不安も大きかったのですが、予想以上に多くの人が関心を持ってくださいました。

 

——地域の理解を得るためにいろいろ努力もされたのでは?

黒田さん:
活動を始めたのは、2016年12月ですが、当初は所沢市内の5か所で食料の寄付を集め、ひとりでも多くの人にフードバンクのことを知ってもらいたいと時間があれば所沢市内の各駅前でチラシを配るという活動をしました。

みなさんのご理解とご協力のおかげで、現在、食料の寄付を集める場所は、所沢・入間・狭山を合わせて30か所以上に増えました

 

——フードバンクの活動からどんなことを感じていらっしゃいますか?

黒田:
「これが誰か困っている人の役に立つなら」「心細い思いをしている人を勇気づけられるなら」と、家から重たい食料品を持ってきて寄付してくださる方々が多くいらっしゃるんです。

そんな方々と出逢って、地域には他人のことを思いやれる人たちがたくさん住んでいるということを実感できますし、社会に大きな希望も感じることができます。フードバンクの活動は、地域の皆さんが食料に託した『やさしさ』を預かり、弱い立場にある人や心細い状況にいる人に届けるという活動であることを活動の度に実感しています

(3)2018年は寄付が半減!その訳とは?


▲偶数月には西武所沢ワルツで「家庭で余っている食料品」の寄付を募集しています

——年々食品の寄付の集まりはいかがですか?

黒田さん:
食料品の寄付は個人の方の力も大きいのですが、企業の大口の寄付の量が多いので、2018年度は昨年度のほぼ半減しました。それは、昨年は全国で災害が多かったので被災地支援のほうが優先になったのだと思います。

一方で私たちの活動でも、入間や狭山エリアの取り組みが進んでいますので、地域で寄付された食料品がそのまま地域で還元されるようになってきたこもあるかもしれません。これまでは、すべてを一度、所沢の倉庫に集めて集計作業をしていたのですが、それが減ってきたということの現れだと思います。これは、地域密着型のフードバンクスタイルが確立する方向に向かっている証でもあるので、今後も地域のフードバンクが繋がり合いながら地域密着で役立つ活動を継続していけたらと考えています。

また、収益がまったくない活動ですから、食料の寄付だけでなく、倉庫の家賃などの必要経費などの活動費の支援もお願いできたらと思います


▲「フードバンクネット西埼玉通信 2019.1月号」より

(4)横の連携で効率よく食料シェアを

——フードバンクの今後目指すところはどんなことでしょうか?

黒田さん:
今は、地域で「子ども食堂」活動をする団体も増えていて、それぞれが食料の寄付を呼び掛けている状態です。そうではなくて、「フードバンク」と「子ども食堂」とが連携・協力体制が取れれば、必要な人に必要な食料をシェアでき、支援いただいた食品ももっと有効活用できるのではないかと思っています。

「子ども食堂」も、食料の寄付を受け取ったけれども量が多くて持て余すことや、「子ども食堂」に見合わないものが提供されることもあると聞いています。これがもし、フードバンクネットが地域の中で、食べ物を集約できる場所として機能できれば、それぞれ「地域の子ども食堂」や「困窮者支援の窓口」などのニーズに応えて効率的にシェアしていけるようになります。

—それにはどうしたらいいのでしょう?

黒田さん:
今は「子ども食堂」など食料支援の活動をしている団体とは連携がとれていないので、今後は連携をとれような仕組み作りをしたいです。

現在、社会福祉協議会とは、困窮者の窓口があるので連携はできているのですが、「子ども食堂」となると、部署が別になってしまうので、なかなか繋がれないというのが現状なのです。わかっているのに、なかなか繋がることができない。そのためには、行政や社会福祉協議会の協力が欠かせないと考えています。

埼玉県の行政では、「子ども食堂」と「フードバンク」をつながることが必要だと考えていただけているようで、昨年、埼玉県主催の「子ども食堂フォーラム」に「フードバンク」も参加させていただきました。


▲子ども食堂フォーラムで出展した「フードバンクネット西埼玉」のブース

黒田さん:
埼玉県内で食料支援団体の連携の進捗には地域によって温度差があるように感じます。例えば越谷市はすでに連携がとれてうまく回っているのですが、東武・西武線側のエリアでは、狭山市の一部を除いて、子ども食堂の運営団体同士の横のつながりがない所がほとんどのようです。

それでも、ふじみ野市、三芳町などは社会福祉協議会を通じて、私たちの団体と協力して食料のシェアができている状態です。「子ども食堂」を充実させるには、個々の地域の「子ども食堂」だけを考えるのではなくて、地域全体の「子ども食堂」を考えることが必要だと思うんです。

地元の所沢市はどうかというと、せっかく所沢にフードバンクネットの倉庫があるのに、子ども食堂の横の連携がとれていない状況で、地域で十分活用されていません。これからは、それをなんとか繋げていきたいと思っています。

(5)今春からITを活用した連携の仕組みづくり開始!

——連携を良くするために何かお考えのことはありますか?

内閣府より補助金をいただきましたので、来年度はIT企業のサポートを受けて「地域で支え合える仕組み作り」を進めていきたいと考えています。

フードバンクを利用してくれている「困窮者支援の窓口」や「子ども食堂」さんなどと繋がり、ITを活用してそれぞれのニーズをリアルタイムで把握できるようにしていくことで、ボランティア団体や行政との連携もしやすくなるのではないかと思います。「困った時はお互い様」。〝地域で支え合う仕組みづくり〟を念頭に活動を進めていきますので、よろしくお願いします。


▲取材日に本部で活動していたみなさん。黒田さん(左から3番目)

3.私たちでも支援できること

「フードバンクネット西埼玉」の代表理事の黒田さんにお話を伺いましたが、同団体は、「フードバングところざわ」「フードバンクいるま」「フードバンクさやま」で構成され、下記の3つの理念を掲げて活動しています。

◆優しさのプラットホーム「フードバンク」
◆「もったいない」を「ありがとう」へ
◆いつでも食べるものがもらえる場所があること

それは「生きる権利」を守ること

「フードバンクところざわ」では、毎週月・木曜日に活動メンバーが集まり、倉庫作業を中心に、事務作業、啓発広報活動に取り組んでいます。

私たち一般の市民でも支援ができることがあります!
下記は、食料募集の案内です。

企業からの余剰生産食料の寄付を随時受け付けているほか、個人家庭からもまだ食べられるけれど、余って捨ててしまう食料品の寄付を募集しています。

西武所沢ワルツでは、偶数月の最終土曜日にフードドライブ(食料品の回収)を実施しています。


▲西武所沢ワルツでのフードドライブ活動

黒田さんをはじめ、メンバーは完全に無償のボランティアで活動しています。活動資金を支援してくれる方、企業も募集しています。
1口1000円から。詳細はホームページで。

NOP法人フードバンクネット西埼玉へのサポーター、寄付金について

取材:2019年2月18日 成田知栄子


【PDFはこちら】

 



記事の執筆者プロフィール

成田 知栄子 Chieko Narita
成田 知栄子 Chieko Narita
ラジオ、テレビでの取材活動を経てフリーになり、ライター活動12年目を迎えました。情報は「人と人とを繋げ、生活をより豊かにする」をポリシーに、所沢の情報を近隣の地域に、そして全国へとお届けして、地域活性化につながればと思っています。ちなみに、所沢住民になって24年、趣味はバイオリン演奏、好きなタレントは「トコろん」です。よろしくお願いします(2019年1月)。

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