セルフリノべの古書店は交流拠点にも!西所沢サタデーブックス


所沢在住のライター、前原です。

わが家の最寄駅は所沢駅より西武池袋線で西にひと駅の「西所沢駅」です。
「西武球場の手前の乗り換え駅」として覚えている方もいるのではないでしょうか?

その西所沢、駅近辺に大きな商業施設はなく、どちらかというと静か、住むにはちょうどいい感じのエリアです。

その、西所沢駅付近に「古書店(こしょてん)」が、それも年季の入ったとんかつ屋さんの2階にオープンすると知り「どんなお店になるのだろう~?!」と注目しておりました。

今回は、2020年6月20日(土)のオープン当日にその古書店「サタデーブックス」さんに来店させていただいた前原が、どんなお店なのか、そして店主の方についてレポートします!

文:2020年7月 前原麻世
写真撮影:平本仁一・前原麻世

 

築52年の物件をセルフリノベーション


蔦の緑色が「読書欲」をかきたてます。

西所沢駅徒歩2分、いくつかの飲み屋が軒を連ねる坂道を下ったところに「サタデーブックス」はあります。

築52年の物件をセルフリノベーション。

1階は地元民に愛されるとんかつ屋さん。蔦の絡まる風情ある外観は、古書店がまるで以前からずっとあったかのような気持ちにさせてくれます。

店主はローカルメディア「西埼玉暮らしの学校」を主宰する大竹悠介さん。


サタデーブックス、店主の大竹さん

地域交流・エリアデザイン・メディア論・地域からの情報発信・キャリアデザイン・働き方……、店内には、大竹さんの目利きにより「ここに置くべき本」として選ばれた本が陳列されています。

サタデーブックスの名の通り、古書店としての営業は土曜日、そして日曜日の「週末のみ」


緑が窓から見える「絵」になる古書店です。お客様を撮影させていただきました。

本の販売だけではなく、読書会などのイベントを行う「地域の交流の拠点」として活用していくそうです。

平日は、フリーランスとしても働く大竹さんの仕事場となります。

 

「コミュニティ難民」だった20代の頃

と、ここまで読んで、「店主の大竹さんって、(写真見た感じ)若そうだけど、古書店を開くって……どんな人なの?」と思う方もいるのではないでしょうか?
私もそうでした。

文化的な要素がすくない西所沢駅周辺エリアで古書店を開いてくれるなんて、いち住民としては「なんだか面白いな~」という気持ちなのですが、「いったいなぜ?どんな人なのか?」と……。

聞けば大竹さん、所沢市内のご出身で、現在の本業(収入のメインの柱)は「ショートショートフィルムフェスティバル & アジア」(俳優の別所哲也さんが発起人。映画好きには有名な映画祭です)の広報を担当しているとのこと。

もともと大学時代は記者を志していたそうですが、地域活性を興す側にまわりたいと広告代理店に就職、その後転職し、現在はパラレルキャリアを標榜し映画祭の広報以外にもフリーランスとしてライターや下北沢の再開発に携ってきました。

ライフワークとしては「西埼玉暮らしの学校」というウェブメディアを主宰し西埼玉地域でイベントの企画運営を行っています。
また、変わったところでは、月イチで銀座のバーの日替わり店長を勤めています。

そんな大竹さん、「20代の自分は“コミュニティ難民”だった」と語ります。


所沢って都心にすぐ出られるから便利ではあるんですよね……。

所沢市民の皆さんなら(おそらく)おなじみの「埼玉都民問題」。
「居住地は埼玉県だが勤務先は東京都。地元には帰って寝るだけ、地域とのつながりが薄い」という”課題”を大竹さんも自身のこととして感じていたそうです。

大竹さん:「地元に居場所がない、休日にココスしか行くところがない……という悩みがありました」

やがて、「自分が満足できるもの」を地元に作りたいという思いを抱くようになります。

大竹さん:「ベッドタウンってファミリー層やシニア世代に向けた街だから、“文化”が弱い。また、意外と地方には影響力のある“プレーヤー”がいて周りを巻き込んでいることもあるが、この辺りにはいない。だったら自分たち世代が満足できるカルチャー的要素を自分の手で地元に作ろうと思いました。そこで、ウェブメディアとイベントを連動させた企画『西埼玉暮らしの学校』を立ち上げました」


西埼玉暮らしの学校のイベントにて

今回オープンした古書店「サタデーブックス」はその延長線上にあり、リアルな地域の交流の拠点として、そして”コミュニティ難民“だった大竹さんが自身の生き方を模索するなかで出会った「エリアリノベーション」という考え方を盛り込んだ場として機能させていこう、というものなのです。

 

「エリアリノベーション」とは?

「地域=商工会、のイメージがあるけど、そうでないものを提案していきたい」という大竹さん。

大竹さんの地域との関わりに影響を与えた考え方のひとつが「エリアイノベーション」です。


大竹さんが影響を受けた建築家・嶋田洋平さんの著

「エリアイノベーション」とは、空き店舗や遊休不動産などを再生しまちの新しいビジネスを生み出しエリアを再生させることです。

実は大竹さん、物件を探す中で、その考え方に賛同してくれる不動産会社(吉祥リビングさん)にも出会えたそうです。やりたいことを後押ししてくれる不動産会社に巡り合えたというのも、大竹さん自身の風を読む力がなせる業なのかもしれません。

自分も地域で何かしたい! という気持ちのある方は、大竹さんに相談してみてはどうでしょうか?
店内には参考文献がありますし、大竹さんからも何かヒントになることを聞けると思いますよ!


ローカルのことを考えるにあたり参考になる本があります。

 

なぜ「本」なのか?

お話を伺うなかで、私の中にひとつの疑問が。

「地域交流の拠点として、なぜ古書店という形態をとる必要があるのか」ということです。

コミュニティ拠点というと、カフェやイベントスペースをイメージする人も多いのではないでしょうか?

大竹さん:「本って人となりが出やすいもの。『西埼玉暮らしの学校』のコンセプトや世界観を語るうえで、僕自身が読んできた本や、影響を受けた人の紹介ができる“展示”みたいなものができたら良いなと思っていました。西埼玉をどういう風に編集したいかという参考資料を置き、世界観の提示の手段として本を利用できるような場をつくりたいな、と。
ここにはローカルメディアの作り方を学べる本も置いていますし、ゆくゆくは郷土史や自然を学べるような資料を蓄積していきたいと考えています」


「地域で活動するにあたり、何かヒントになるものを提供できたら」と大竹さん。

本を通じたコミュニケーションや、様々な資料を通じて地域に対する考え方のボトムアップをしていくのが目的なのですね。

 

これからの「サタデーブックス」と「西埼玉暮らしの学校」

「いま、自分発でコミュニティを作ることができている実感がある」と静かに語る大竹さん。

活動を続けるなかで主旨に賛同しイベントを手伝ってくれる仲間も増えてきたそうです。

今後は「サタデーブックス」という拠点での催しとして、まずは「読書会」や「持ち寄り飲み会」、サタデーブックスからの動画配信などを行っていくそうです。

すでに読書会・持ち寄り飲み会が開催され、地元の方が参加しているそうです。


読書会の参加者の方々

また、大竹さんは「今後、郊外への移住者が増えるのではないか」とも見ているそうです。「その際は文化的な受け皿はここで用意しますよ」と呼びかけます。

withコロナ時代にあり、都心の職場に出向かず在宅等でテレワークを行うことが社会的な流れになりつつあります。
もともと大竹さん自身は「今年度からは極力都内のオフィスに出向かず、平日のサタデーブックスを仕事場にして働こう」と新型コロナウイルスが流行する前に決めていました。

奇しくも新型コロナウイルスの影響で、住む場所と働く場所を自ら選ぶ大竹さんのようなあり方が、今後は一般的な選択肢として定着していくのではないでしょうか。

地域で活動したい、本が好きで語り合いたい、アカデミックな感じが好き、大竹さんに相談してみたい……など、「自分の興味関心になにか接点がありそう!」と思った方は気軽にサタデーブックスに足を運んでみてください。


遠方への旅行が敬遠されるいま、改めて「おこもり娯楽」としての本に触れるのもいいですね。

 

【イベントのお知らせ】

■読書会 Saturday Book Club #2
2020年7月25日(土)10:30~12:00
定員:6名
参加費:500円
▼詳細はこちら
https://www.facebook.com/events/368946557400196

■入間市の茶農家に教わる、美味しい緑茶の楽しみ方(入門編)
2020年8月2日(日)10:30~12:00
定員:5名
参加費:1,000円
https://www.facebook.com/events/557664921780942

とんかつ屋さんの入り口右手にある扉を開け、階段をのぼって入店してください。

 

【店舗詳細】

Saturday Books(サタデーブックス)
住所:埼玉県所沢市西所沢1丁目17−13 2階
※西武池袋線西所沢駅下車、徒歩2分
営業日時:土日祝日 13:00~19:00 ※不定休あり
▶Facebook:https://www.facebook.com/Western.Saitama
▶instagram:https://instagram.com/saturday.books?igshid=1itzuhmxcgolo

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この記事を書いた人

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前原 麻世 Asayo Maehara

タウン誌編集5年ののち、ライターになり7年。長野県出身→沖縄で大学時代→東京で就職→所沢で子育て中、10年目。夫は埼玉都民2世。カフェや、子連れで行ける音楽イベントが好きです。

頂いた応援メッセージ

①さんコメントありがとうございます。 記事中の写真を一部撮影しております平本です。とても雰囲気があっておしゃれな古本屋なので是非足をお運びくださいませ。店主も素敵な方ですよ。
2020-07-30 21:40:20
おしゃれな古本屋!ちょっと行ってみたい!
2020-07-21 08:22:49

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