「NEXT 商店街プロジェクト」第3回フォーラムリポート〜茅ヶ崎と尾道、仕掛け人が語るまちづくりのストーリー〜


「地域おこしの仕掛け人」と聞くと、あなたは誰の顔を思い浮かべますか?「う〜ん、あまり思い浮かばないなぁ」という方にこそ、この記事を読んでいただきたいです。

商店会など商工団体はもとより、埼玉県、所沢市、地域の企業や住民など、様々な立場の人たちが一体となって商店街の活性化に取り組む「NEXT 商店街プロジェクト」。埼玉県の事業として、県内8カ所で実施されています。所沢では今年6月から「所沢エリア・リノベーション推進フォーラム」と題したセミナー兼意見交換会を開催し、所沢・航空公園・新所沢の各駅周辺エリア、和ケ原商店街エリアの活性化ビジョンを検討しています。

9月21日(金)、所沢市役所にて第3回となるフォーラムが開催されました。この日、ゲストとして招かれたのは神奈川県茅ヶ崎市で「茅ヶ崎ローカルファースト研究会」を主宰する杉本洋文さんと、広島県尾道市で移動式屋台「リヤカーゴ」を中心にまちづくり活動を展開する村上博郁さん。現場も世代も違うおふたりですが、それぞれ地元の暮らしをより豊かにすべく、先進的な実践を重ねています。

茅ヶ崎と尾道から所沢が学べることとは?お二人のセミナーの内容をダイジェストでお届けします。

「ローカルファーストは地域への誇り」(一般財団法人ローカルファースト財団副理事長 杉本洋文さん)

まず初めにプレゼンに立ったのは一般財団法人ローカルファースト財団副理事長の杉本洋文さん。東海大学工学部建築学科教授として、学生たちに都市デザインや市民参加型のまちづくりを教える教員としての顔もお持ちです。

「成熟社会を迎えた現代では“物語”が消費行動を左右します。商店街に来て何かを経験して感動につながる。まさにライフスタイルの観点から商店街も変化が求められています」との言葉で語り始めた杉本さん。「ローカルファースト」の概念について、実践事例を交えながら解説しました。

JR東海道線が東西に走る茅ヶ崎では、駅の南側は細い道に個人商店が並ぶ商店街だそう。賑わった商店街も今は昔。近年では全く人が歩いていない商店街になっていたそうです。

杉本さんは地域の店舗を博物館に見立てて地域内回遊を図る「なりわい博物館」を実施。シティプレゼンテーションのために、ロゴやテーマカラーを作り、包丁研ぎや判子作りなど体験にフォーカスした取り組みを始めました。ローカルファースト財団は、こういった体験価値を具現化しようと作られた団体とのことです。

「ローカルファーストとは、人が元気であること。街に誇りを持つ市民が、素敵なライフスタイルを教えてくれること」と語る杉本さん。なりわい博物館に続いて、地域の人たちと毎年テーマを設けて地域の誇りについて研究する「ローカルファースト研究会」を立ち上げます。

立ち上げ時には、地元出身のプロテニスプレーヤー・杉山愛さんや、地域づくりの著書を多数執筆されている日本総研主席研究員の藻谷浩介さんなどをゲストにセミナーを開催したそうです。

研究の中で明らかになった茅ヶ崎市民にとっての誇りの一つは、「茅ヶ崎野菜」。ちょっと値段の張る野菜でも、茅ヶ崎の人たちは地場産を優先的に購入しているそう。レストランでも地域の生産者が作った野菜を仕入れるなど連携が進んでいるとのことです。

食のブラッシュアップをしようと考えた杉本さんたちが範をとったのが、ローカルファーストな価値観が定着している米国北西部の都市、ポートランド。当地では農家とレストランとスーパーマーケットが年に1回ミーティングをして、地域の中で豊かな食を作っているそうです。「食」に関わる当事者がつながる場所を作りたいと考えた杉本さんたちは、ポートランドで自然食レストランを営む日本人シェフ・田村なを子さんをゲストに呼び、茅ヶ崎でもシェフミーティングを実現しました。

「地域の中の市場にいいものを見つけて磨いて発展させていくということ。磨くことが大事」と杉本さんは語りました。

杉本洋文さん

 

「ひとりひとりが可能性を発揮できる社会へ」(NPO法人 まちづくりiD尾道 代表理事 村上博郁さん)

二人目のゲストは、広島市尾道市を舞台に小型屋台「リヤカーゴ」を使ったまちづくり活動を行う村上博郁さん。有志で始めたまちづくり活動をNPO法人化し、空き家や空き店舗をコミュニティスペースとして発展させています。多方面にわたるまちづくりの努力が評価され、2017年度にはグッドデザイン賞を受賞しています。

瀬戸内海を自転車で駆け抜ける「しまなみ街道」の入り口としてとして知られる尾道。観光客にとっては人気の街ですが、地元の人たちには古臭い、稼げない街として倦厭され、人口流出が進んでいるそう。特に、かつて街の商店主たちが別荘を構えた坂沿いの家々が空き家化して問題化しているとのこと。

大学卒業後、ドイツとブラジルを放浪して27歳の頃に地元に帰ってきた村上さん。お金のない若者が住み着いたのが、家賃の安い坂の家でした。そして、ベルリン時代に経験したいろんな人が交流できるハウスパーティーを、空き家を舞台に実施。アトリエやカフェサロンとして発展していきました。

女性でも一人で運べるおしゃれな小型屋台「リヤカーゴ」は尾道に古くからある魚の行商をヒントに制作。「ひとりで商売を始めるのが怖くても、何台も集まって一緒にやったらハードルが下がるのではないか?」という発想で生まれました。出店場所さがしで苦労したので信頼を得るためにNPO法人化し、海岸沿い、公園、商工会議所の前などで屋台村を実現。世界の料理が食べられる「ワールドビュッフェ」など企画にも力を注ぎました。

さらに発展形として、空き家をリノベーションしてゲストハウスを作ったり、高台の元植物園の建物を利用してチョコレート工場をつくったり、商店街の空き店舗に交流兼販売スペースを作ったりと、活動の幅を広げて現在に至ります。

身の回りの小さな活動からはじめて、現在ではUIターン者など多くの仲間を巻き込んで事業を展開している村上さん。

「私たちは、単にものを売る場所を作っているのではない」と語ります。

「NPO法人iD尾道。なんでiDか。ひとにフューチャーして、一人一人の夢をバックアップできたらいいね、という趣旨があるからです。Identity(アイデンティティ)のIDでもありindependent(独立)のIDでもあり、idea(アイデア)のIDでもある」とのこと。

ひとりひとりの人間を大切にする生き方を自分自身が体現する。身の丈にあった幸せな生活を、楽しむ。そんなライフスタイルの延長に生まれた活動がiD尾道と言えるでしょう。

村上博郁さん

 

世代間の価値観の違い。茅ヶ崎と尾道を比べて思うこと。

茅ヶ崎と尾道の活動を比べて観ると、似ているところもあれば、相違点もあります。

似ていることは、外からの視点を取り入れて街に新しい風を吹き込んでいること。茅ヶ崎の杉本さんは都市・建築系の専門家として国内外の様々な実践を研究してきた経験を生かして、茅ヶ崎らしい「ローカル」を発展させています。尾道の村上さんもコミュニティづくりの原点は、さまざまな国籍の人と分け隔てなく交流したベルリンでの暮らし。「おもしろいね!」で始まる、個人対個人の付き合いの中から仕事が生まれる経験をしてきたそうです。

商店街活性化というと、商工業者や対応する行政など、地元のごく限られた範囲に人脈も視点も絞られがちです。その点、ふたりは外の世界のトレンドや先進的な考えを地域に持ち帰る役割を果たしています。地域の外の人も、このふたりを窓にして地域に入っていくことができます。「地域活性化に必要なのは“よそのもの・わかもの・ばかもの”」という標語をよく耳にしますが、それを体現した事例がこの2地域と言えるでしょう。商店街関係者でない地元住民や、地域に関心のあるクリエイターや学生など、地域の外で経験を積んできた人が活躍する余白が所沢でも必要ではないでしょうか。

一方で相違点は、仕掛け人としての性格の違いです。それはプロジェクトの進め方を比べるとわかります。茅ヶ崎の杉本さんは、「ローカルファースト研究会」という枠組みを作って、商店街や青年会議所などを巻き込んでオール茅ヶ崎の運動を進めています。いわば計画的調整役タイプの仕掛け人。

対する尾道の村上さんは、「面白さ」を価値軸に発展していくクリエイター型の仕掛け人。最初に設計図を引くのではなく、出会った人と飲み会をして、ワイワイ話すなかでまちの課題も個人の夢も共有して、「じゃ、これやってみればいいんじゃない?」と軽く事が起こっていくタイプ。地域社会と関係は取りながらも、しがらみのない若者を主役にどんどんプロジェクトを進めて行きます。

この差は人柄や年齢によって生じる面もあるのでしょうが、世代による価値観の違いではないか、と29歳ライターの私は思います。高度成長もバブルも知らない20代・30代は、肩書きや組織よりも個人の意思を大切にしています。ゲストハウスを一人旅する旅行スタイルや、シェアハウスやコワーキングなどが普及していることからもわかるように、大企業のネームバリューや額面上の給料よりも、他者と交流しながら自分の人生を生きることを大切にしています。

所沢の未来を考える上では、いま地域を中心になって動かしている世代だけでなく、より若く自由な世代が活動できるようアシストしていく事が必要かもしれません。NEXT商店街プロジェクトでは、所沢の「エリアビジョン」を策定し、所沢市街地〜航空公園〜新所沢エリアと、和ヶ原商店街エリアで、空き店舗活用による新規事業創出と賑わいづくりをはじめています。重要なのは計画ではなく自らが事業の主人公となるプレーヤーの存在。若いプレーヤーを掘り起こし、よび集めるために必要なことは何か。一人一人が自分ができることを考えてみましょう。

茅ヶ崎と尾道の実践から学ぶフォーラム、いかがでしたか?「私はこう思う」「もっと話を聞いてみたくなった」という方は、ぜひお気軽にご連絡ください。

所沢の未来を、一緒に作って行きましょう。

NEXT商店街プロジェクトとは
近年、人口減少や高齢化、ネット通販などにより、地域の商店街を取り巻く環境は、厳しい状況です。多くの商店街で消費者や商店街会員の減少、空き店舗問題、後継者不足などの問題が生じています。しかし、商店街は、地域の買い物の場だけでなく、まちの治安や防犯、自治会活動などの機能も担う場所であることから、時代に合った商店街の在り方を考え、存続・機能させることが求められています。
そこで、埼玉県が、市町村、商工団体、商店街が三位一体となって、大胆な発想や手法を取り入れ、空き店舗問題や商業人材の育成に向き合い、にぎわい溢れる、自走可能な商店街を目指していく8地域(熊谷市、所沢市、本庄市、深谷市、越谷市、蕨市、ふじみ野市、寄居町)を対象として、集中的に支援を行っていくプロジェクトです。

NEXT商店街プロジェクトでは、チーム寄添者(よそもの)という名称で、 様々な分野の有識者などを専門家として派遣する事業を行なっています。今後、このような仕組みを利用しながら、創業希望者やその支援者を対象とした「共創ゼミ」を進めていきます。

「第1回所沢エリア・リノベーション推進フォーラム」のレポート記事はこちら
http://tokorozawanavi.com/news-narita20180702/
「第2回所沢エリア・リノベーション推進フォーラム」のレポート記事はこちら
http://tokorozawanavi.com/news-otake20180807/

問い合わせ先:
非営利型まちづくり株式会社 地域協働推進機構
NEXT商店街請負人
藤倉潤一郎
j.fujikura@seedx.jp



記事の執筆者プロフィール

オオタケユウスケ
オオタケユウスケ
インタビュアー/ライター 1989年所沢市生まれ。埼玉県立川越高校、早稲田大学文化構想学部卒業。都内の広告代理店に勤務ののち、国際短編映画祭運営事務局にてWEB業務を担当。現在は映画を切り口にしたライフスタイルメディアの編集長を兼務し、社外でも「複業家」としてパラレルワークを実践中。 埼玉都民のためのライフタウンメディア「西埼玉暮らしの学校」を運営。

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