「NEXT商店街プロジェクト」第1回フォーラムリポート。
「第1回所沢エリア・リノベーション推進フォーラム」が6月29日、所沢市役所本庁舎の大会議室で開催されました。
このフォーラムは、埼玉県「NEXT商店街プロジェクト」の指定地域の1つとなっている所沢市で、どのように商店街の衰退を食い止め、商店街の新しい形を見出し、町おこしを行うか、関係者の意見交換を行うために開かれたものです。
近年、人口減少や高齢化、ネット通販などにより、地域の商店街を取り巻く環境は、厳しい状況です。多くの商店街で消費者や商店街会員の減少、空き店舗問題、後継者不足などの問題が生じています。しかし、商店街は、地域の買い物の場だけでなく、まちの治安や防犯、自治会活動などの機能も担う場所であることから、時代に合った商店街の在り方を考え、存続・機能させることが求められています。
そこで、埼玉県が、市町村、商工団体、商店街が三位一体となって、大胆な発想や手法を取り入れ、空き店舗問題や商業人材の育成に向き合い、にぎわい溢れる、自走可能な商店街を目指していく8地域(熊谷市、所沢市、本庄市、深谷市、越谷市、蕨市、ふじみ野市、寄居町)を対象として、集中的に支援を行っていくプロジェクトです。
今回のフォーラムには、まちづくりの関係者約40人が参加。埼玉県商業・サービス産業支援課、所沢市産業経済部商業観光課、地域協働推進機構が、「NEXT商店街プロジェクト」についての趣旨説明を行ったほか、各専門家や事業者がリノベーション事業の事例を紹介し、意見交換を行いました。
取材:2018年6月29日 成田知栄子
◆NEXT商店街プロジェクト趣旨説明
所沢市商業観光課の柳田晃芳さんは、冒頭にあいさつに立ち、埼玉県の商店街振興の在り方検討会の3つの視点を紹介しました。
1.共感を生む仕組みづくり
2.スモールサクセスの積み重ね
3.新たな消費者動向をキャッチする
中でも、柳田さんは、2つめの「スモールサクセスの積み重ね」が大事であると強調。大きな変革をするには小さな取り組みを積み重ねて変えていくというチャレンジが必要。所沢市では、1つ1つのチャレンジを応援していきたいと話しました。
埼玉県商業・サービス支援課の新保恵子さんは、これからの取り組みの概略について説明を行いました。
今回は、特に意欲的な地域を県が指定して、そこに集中して支援を行っていく事業です。埼玉県からは所沢市に藤倉さんを専門家として派遣し支援。1つの地域で最大2年間の支援を行うので、その後は、自走して継続できる形にしてほしい。つまり、いかに地域の担い手や後継者を増やしていけるかがポイント。藤倉さんを中心にビジョンの策定、リーダー・協力者の人材育成、イベントの開催や空き店舗の活用事業を企画・実施を行って欲しい。また、計画された事業の進捗や効果などをはかるための指標としてKPI(重要業績評価指標)を設定すること。全8地域が共通の指標を設定し、さらにそれぞれの地域の実情に合わせた指標を1つ以上設定してください。所沢市は、ビジョン策定を9月までに。10月以降はビジョンに基づいて実際に取り組めるように。10月には中間報告会を行い全地域の情報交換を実施。9月から12月にリノベコンペを行い、1月に審査をして最優秀賞を選定します。最優秀賞は300万円、優秀賞は100万円がとなっています。
所沢市商業観光課の吉川 康俊さんは、所沢市で支援を行うエリア選定と現状進んでいる計画の方向性について説明しました。
所沢市ではエリアを選定する際に、「住宅地も密集していてポテンシャルのあるエリア」を基準に「新所沢駅東口」と「和ケ原商店街」の2つのエリアを決定。それに加えて「所沢中心市街地」も現在行われている大規模開発地域とは別に、路地裏も回遊性のある魅力あるまちづくりの支援を行っていきます。
このプロジェクトの目的として、「新たな担い手を育成する」ということもあり、和ケ原商店街については大坂さんが所沢商業高校と連携しながら事業を進めています。
新所沢については、「ソラバル」という食べ歩きイベントが、これまで所沢駅周辺だけだったのを新所沢エリアまでに拡大して実施します。所沢ローカルファースト事業団の渋谷さんが中心になり、商店街のみなさんで連携して進めています。
地域協働推進機構 藤倉潤一郎さんは、「所沢駅から新所沢駅周辺エリアについては、所沢ローカルファースト事業団が主体となり、和ケ原商店街エリアについては、和ケ原商店街組合が主体となって、連携してプロジェクトを進めていきます」と説明しました。
▲和ケ原商店街組合理事の大坂和則さんと所沢ローカルファースト事業団の渋谷正則さん
◆ショートプレゼンテーション
(1)芝浦工業大学 教授、都市プラニング研究所 桑田仁さん
商店街の魅力増幅と、空き店舗の活用に関して、大学として地域のくらしづくりに関わってきた事例を紹介
芝浦東大宮キャンパス近くに古いURの団地があり、その中で大学の「サテライトラボ」を開催した。
※サテライトラボ とは大学の敷地外に設ける研究スペースのことで、地域住民と企業、自治体、大学生が交流する学びの場で、世代を超えた新たな交流を生み出すことが実証されています。
サテライトラボを開催したのは、2010年からの5年間。高齢化が進んでいる地域だったこともあり、学生の若い世代との交流が生まれた。カフェ、イベント、相談室、健康指導などを開催。こうした取り組みは、世代を超えた交流の場となり、カフェは、高齢者が行きたくなる「サードプレイス」の役割を果たした。「ファーストプレイス」が家、「セカンドプレイス」が職場、「サードプレイス」は、インフォーマルな公共の集いの場所。高齢者の場合、セカンドプレイスがない場合が多いが、「サードプレイス」は、商店街でも気軽に集まれるカフェやパブなどがその役割を果たすことができる。
これからの商店街のとりくみの中で、サードプレイスのような「地域コミュニティをつなげる場」が、これからの商店街に絶対に必要になってくるのではと思う。商店街活性化の後ろ盾として、くらしづくりや地域づくりを視野に入れながら展開していくことが必要ではないか。
(2)武藤プラニング・マネジャー 武藤純一さん
リノベーション実例と今後の展開についての紹介
東町にある古い複数の物件を補強するなどしてリノベーションを行い、美容室、鍼灸院、飲食店、珍品玩具店など、独立開業した店主の個性を生かした店舗に生まれ変わり活用している。
昭和の匂いがするような、歩いていてちょっと楽しい通りにしたい。まもなくリノベーションを行う物件もあり、テナント募集を行い、個性的な個店に入ってもらい、この通りを商店街にして、プロペ通り、線路沿いの西友の駐車場の道を回れるような回遊性のあるエリアにできたらと考えている。現在進行している駅前の大規模な再開発のエリアとは違うタイプのエリアにしていく予定。
▲所沢駅からプロペ通り、裏路地、線路沿いの西友の駐車場の通りと回遊性のある個性的な街づくりを目指す
(3)合同会社RPG 戸巻由高さん 角田テルノ 悠さん
新設会社の取り組みを紹介
戸巻さんは5月16日に会社登録を済ませ、最初の事業として7月28日に小さなショッピングモールをオープンする予定。NEXT商店街プロジェクトのエリアには、入っていない、西所沢と下山口のエリアで展開するが、「商業活性化」という方向性では共通している部分がある。
広い物流倉庫を改装して、コストが安く開業できるレンタルショップやシェアキッチン、レンタルスペースがある小さなショッピングモールを作る予定。また、地域貢献事業として、コミュニティスペースを作り、地域の住民に提供していきたい。
レンタルショップは、副業としても活用できるように利用代金を安く提供し、店を構える前に、トライアルとして利用できるようにしたい。
「もはや、一人一店舗の時代ではない」と力説するのは、同じくRPGの角田さん。
RPGはゲームの用語から付けた。まるでゲームを体験しているかのような町づくりをして、やりたいことにチャレンジするプレイヤーを増やしたい。それには、チャレンジしてみたいことを「easy」に始められる環境づくりを大切に事業を進めていきたい。当社の事業でイベントも開催するが、イベントでの出店は、モールよりもっと「easy」にチャレンジできる方法。
モールやイベントは、互いの店主にとって、相乗効果がでる。例えば1店舗50人のお客さんを動員できるとすれば、10店舗集まれば、500人のお客さんを動員できるのではないか。
(4)UR都市機構/埼玉エリア経営部・管理役 高橋伸久さん
所沢市内のURの現状と課題について紹介
所沢市内にはUR物件は10団地、2300戸ある。2025年には団塊の世代がすべて後期高齢者世代になる。このため医療や福祉の施設をつくる、地域包括や社会福祉、自治会とつながってネットワークをつくる、バリアフリー化を進めるなど、団地の拠点化施設を作ることが課題であると考えている。
現在も集会所を活用して、住民のサロンとして提供しているが、今後の団地には、「多世代交流の場をつくる」ことが大切である。
◆4つのエリアの特徴・活性化に向けて
4つのエリアの人口データなどの基礎的な情報を確認し、エリアの活性化に向けて、関係者それぞれの考えやできることなどについて意見交換を行いました。所沢中心市街地、航空公園、新所沢、和ケ原エリアの特徴が説明されました。
今後は個別会合を行い、エリアビジョンの検討・作成を行う予定です。
第2回所沢エリア・リノベーション推進フォーラムの開催は、7月25日(水)を予定。
個別会合で検討・作成した内容の共有や意見交換などを行います。