「トトロの森はみんなのもの!」~トトロの森に車椅子で行ってみました~


  ボランティアライターじんです。今回の記事はちょっとしたチャレンジの記録です。きっかけはたくさんの方にトトロの森を見て、知って、感じてほしいと思ったことです。
 

 

取材日:2025年4月19日 ボランティアライターじん

 


【もくじ】
取材のきっかけ
雑魚入樹林地へ
トトロの森1号地へ
森を抜けて狭山湖へ
山口観音から西武球場前駅へ

 

取材のきっかけ

  私ごとになりますが、過去に狭山丘陵のハイキング企画を立てた際に参加要件を「自力歩行が可能な方」としたことがありました。これは丘陵散策には階段や急坂などが存在し、車椅子の方などにとっては参加が難しいと思ったからです。
 
  しかしながら、自分の中に葛藤が残りました。
  車椅子の方は自然の中を散策することが許されないのか?
  自然は健常者のためだけのものか?
  と思い、いつか「バリアフリーハイキングルート」を作成したいと考えていました。
 
  そんなときに所沢市議会で活躍する斎藤由紀(さいとうゆき)議員(以下親しみを込めて「斎藤さん」と表記させていただきます)とお会いした際に、「この方なら協力してくださるかも」と思いお声をかけさせていただきました。ありがたいことに今回の企画に賛同いただき、お時間を頂戴することができました。
 

▲斎藤由紀さん
 
  充分に下見をしてから取材に臨みましたが、万が一車椅子での通行ができなかったりした場合に備え、現在所沢市を題材に地域活動などを勉強している大学生の平本陽菜(ひらもとはるな)さん(以下「陽菜さん」と表記)にアシスタントとして協力してもらいました。
 

▲アシスタントの平本陽菜さん(恥ずかしがり屋でカメラを向けると逃げるのでこっそり撮りました)
 
  なお取材は自動車や通行人などの邪魔にならないように細心の注意を払って実施しました。3人で春のさわやかな(気温はちょっと高めでしたが…)狭山丘陵を散策してきました。
 

雑魚入樹林地へ

  今回のメインの目的地はトトロのふるさと基金さんが管理する「トトロの森1号地」としました。所沢の自然を象徴するような「トトロの森」、その発祥の地が狭山丘陵のハイキングコースとして最もふさわしいのではと考えました。そのためスタートとゴールは西武球場前駅にして可能な限り狭山丘陵のハイキングを楽しめるようなルートにしました。取材したルートは記事の最後に概要の地図を添付しますので参考にしてみてください。
 
  まずは自動車に気をつけながら進みます。車椅子で移動するにあたって「歩道」のありがたみを感じます。また最初は緩い下り坂を進んだのですが、気を付けないとどんどんスピードが上がっていってしまうことも学びました。僕も陽菜さんも車椅子の方と出かけるのは初めての経験でしたので、たくさんの気づきがありました。
 
  風情あふれる上山口地区の風景を楽しみながら、柳瀬川を見下ろせる場所にきました。
 

▲①柳瀬川を望む
 
  ここは自動車が通らない舗装道路なので、ゆったりと自然の河岸が残る清流を眺めることができました。
 
  そのまま細い舗装道路を進んで、水は張っていませんでしたが田んぼに着きました。所沢市内には田んぼが少ないのですが、この場所はその数少ない場所の一つになり、「所沢の米で日本酒を作る会」さんがお米を育てています。収穫した米をもとにおいしい日本酒「ところまん」を作っています。斎藤さんも興味津々でした。
 

▲②田んぼ
 
  田んぼを後にし、柳瀬川にかかる橋を渡ってトトロの森1号地が含まれる雑魚入の森に向かいます。
 
  森の入口にはトトロの森3号地があります。ここはトトロのふるさと基金さんが3番目に取得した森になります。
 

▲③トトロの森3号地
 
  ここは舗装道路から見えますので、車椅子の方でも苦労することなく訪れることができます。隣接するトトロの森15号地、48号地とともに「チカタの森」と呼ばれています。
 
  チカタの森と道を挟んで反対側には小さな池があります。池のほとりにはデッキがあるのですが、手前に階段があるので行けませんでした。舗装道路から小さな丘を登ると池が見えるので、陽菜さんに車椅子を押してもらい丘の上に登って池を眺めました。
 

▲④池を上から眺めました。
 

トトロの森1号地へ

  舗装道路から未舗装路に入った先に「トトロの森1号地」はあります。途中には階段もあります。ここを通過して初めてトトロの森1号地に到着できます。今回の散策最大の難関が始まりました。
 

▲⑤トトロの森1号地への入口
 
  まずは、平坦な未舗装路を進んでいきます。坂のないところは問題なく進むことができます。
 
  数段の下り階段がありました。車椅子は安全に階段の上り下りはできません。そのため階段の脇のスペースを進もうと思います。急な下り坂で危険なので、陽菜さんが補助につきました。
 

▲⑥階段とその脇の下り坂 道の右側には湿地
 
  階段をクリアしたところの右側には湿地が広がっており、その風景を眺めることができました。上りの階段も同様の方法で進んでいきます。道は森の奥に続いています。慎重に斎藤さんの自力で進んでいきましたが、だんだん上り坂がきつくなってきましたので陽菜さんに車椅子を押してもらうことにしました。トトロの森1号地が近づいてきて、車椅子を押す手にも力が入ります。
 

▲トトロの森1号地はもうすぐです。
 
  そしてついにトトロの森1号地に到着しました!
 

▲⑦トトロの森1号地
 
  トトロの森の始まりの地、無事にたどりつくことができました。所沢に「トトロの森がある」という知識があることも大事ですが、その場所を実際に見て感じていただくことができました。3人とも達成感で充ち溢れました。
 

森を抜けて狭山湖へ

  トトロの森1号地から先は本格的な階段と急な上り坂になりますので、今来た道を戻ります。未舗装路を来た時と同様の方法で通過し、雑魚入樹林地を一旦抜けて森の外側の舗装道路を進みます。広い道を避けて進んでいきます。そして森の中へ続く舗装された上り坂をお茶畑を見ながら登っていくと「堀口天満天神社」に到着しました。
 

▲上:堀口天満天神社前の茶畑 下:⑧堀口天満天神社境内
 
  階段があるので鳥居をくぐって境内に入ることはできませんでしたが、スロープがあって道路から直接境内に入ることができました。急なスロープになりますので、補助者が押したりブレーキをかけたりしながら慎重に上り下りしました。となりのトトロにでてくるような雰囲気のある神社に無事参拝することができました。
 
  堀口天満天神社を後にして、再び舗装道路を進んでいきます。道は森の中を進み、目の前が開けた場所にメガソーラー所沢(とことこソーラー北野)があります。メガソーラーの先にはトトロの森39号地があり、ここは道路からそのまま見ることができます。
 

▲⑨トトロの森39号地
 
  狭山湖の手前にきました。車通りの多い道の上に「狭山湖ふれあい橋」がかかっています。この橋の手前には、歩行者、自転車、車椅子歩行者のための入口があって無事に通過することができました。
 

▲⑩ループをぐるっと回るような形で橋に入ることができました。
 
  狭山湖ふれあい橋を渡り、狭山湖まできました。斎藤さんもこんな間近で狭山湖を見るのは初めてとのことでした。傾き始めた太陽が美しく湖面を彩っていました。
 

▲⑪狭山湖
 

山口観音から西武球場前駅へ

  狭山湖の堤防を渡っていきます。堤防の先にもループがあって自動車などは入れないようになっておりますので安心して散策できます。
 
  道路に出た後も狭山湖建設時のトロッコの線路があった場所が現在は舗装された歩道となっており、快適に車椅子で進むことができます。車道を自動車に注意しながら横断し、狭山不動尊(不動寺)と山口観音(金乗院)の間の下り坂を進んでいきます。ここは急な下りになっていますので、補助者がついて慎重に進みました。
 
  山口観音に到着しました。階段を避けて境内に入ります。
 

▲⑫山口観音
 
  本堂の裏手の五重塔は下からその立派な姿を眺めました。まるで今日の小さな冒険を見守ってくれていたように感じました。
 
  ぐるっと狭山丘陵を周り約半日かけて西武球場前駅に戻ってきました。
 

▲⑬西武ドームをバックに
 
じん:斎藤さん今日散策してみての感想を伺ってもよろしいですか?
 
斎藤さん:トトロの森1号地にたどり着けた時は、感無量でした!車椅子でも、安全に森を散策する事ができました!
 
最初に、トトロの森を散策してみませんか?と聞かれた際は、「車椅子で、森の中を散策?」…考えた事もなかった私には、驚きの提案でした。
 
当日は、まだ4月にもかかわらず、25度を超える暑さ…!!舗装されていない山道、丘陵特有の坂道、未知の体験の連続でした。
じんさん、陽菜さんのご協力の元、トトロの森1号地にたどり着けた時は、感無量でした。到底、一人では登れない山道や、急な坂も随所にありましたが、介助して頂いたお陰で、無事に狭山丘陵を散策することができました。
 
ふと思い出しました。私が車椅子生活になったのは、小学校5年生の時です。
病気になる前は歩く事ができました。まだ歩けていた時期に、林間学校で、秩父辺りの森(曖昧でごめんなさい)に入った事を思い出しました。車椅子生活になり、もう2度と森に入る事はできないと思っていました。
汗だくになりながら、坂道を登りました。そして実際に森の中にいると、暑さが和らぎ、虫の鳴き声や、小鳥の鳴き声が聞こえて、トトロの世界に入ったような気分でした。
狭山湖も、橋の上から間近で見る事ができ、夕日の美しさも相まって感動しました。
 
物理的なバリアを解消するのは、森という性質上難しい点はもちろんあります。でも、心のバリアフリーが進むことで、車椅子や、足の不自由な方も出掛ける事ができる、「誰でもトトロの森に遊びに行ける」という成功体験が増えたら嬉しいなと感じました。
 
改めまして、じんさん、陽菜さん、車椅子の介助を快く引き受けて下さり、ありがとうございました。
 

 
じん:斎藤さんありがとうございました。トトロの森1号地にたどり着けたとき、3人でバンザイしたのが思い出されます。
陽菜さんアシスタントお疲れ様でした。同じく感想伺ってもよろしいですか?
 
陽菜さん:車椅子の方と行動することが初めてだったのでバリアフリーの観点から沢山勉強させていただきました。特に、私は普段坂と感じないような坂でも車椅子の方には辛く感じるのだと知った時には感覚の違いを感じました。
また、森に入ると一気に気温が下がったように感じられ、新緑がとても美しく気持ちよかったです。この森林の良さが多くの人に知られ、楽しんで欲しいなと思います。
 
じん:お二人とも本日は本当にありがとうございました。
 
  記事中で巡っただいたいの場所を以下に示します。
 

 
  私たち3人によるチャレンジの記録、いかがだったでしょうか。この試みが「トトロの森にいくことなんて無理」ってあきらめていた方に「ちょっと行ってみようかな」って思っていただけたら幸いです。
  トトロの森はみんなのもの
  心と身体のバリアフリーにつながりますように
 
  協力:斎藤由紀さん(所沢市議会議員)
  平本陽菜さん(大正大学地域創生学部地域創生学科在学中)


この記事を書いた人

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じん Jin

写真を撮ったり、ランニングしたり、サイクリングしたりしながら、自然の中で過ごす時間を大事にしています。 すぐそばに素敵な自然が残されてる所沢が大好きです。 少しでも所沢の魅力がお伝えできるようにがんばります。

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