レコード店「芽瑠璃堂」が50周年・店主長野和夫氏とピーターバラカン氏がMOJOでトーク


吉祥寺で開業、現在は川越で営業する「芽瑠璃堂」の50周年記念イベント

川越で営業するレコード店「芽瑠璃堂」は開業から50周年を迎えました! 開業当初の常連だったというピーターバラカン氏と店主のカズさんによるトークショーやDJイベントが2024年3月9日、所沢市のライブハウスMOJOで行われました。

取材・文 前原麻世

 

 

ピーターバラカンさんとカズさんの交流の始まり「芽瑠璃堂」

芽瑠璃堂は1974年、吉祥寺でうぶ声を上げました。
開業当初数年間は、店主長野和夫さん・通称カズさんが、アメリカに行き買い付けてきたレコードを販売していましたが、やがて現地レーベルに掛け合いブルース楽曲等の版権を取得し日本盤としてリリースするなど、レコードレーベル「VIVID SOUND」としても事業を展開していきました。
その際、レコードに楽曲の歌詞カードを付けるため翻訳を担当したのが、当時芽瑠璃堂に週一で通っていたという若かりし頃のピーターバラカンさんです。ピーターさんは、日本の音楽出版社への入社を機に来日したばかりでした。
芽瑠璃堂が50年を迎えるというこの節目にピーターさんは駆けつけ、店主カズさんとともにトークショーとDJタイムを繰り広げてくれました。
ちなみに「芽瑠璃堂」は幾多の歴史を重ね、現在川越に居を構えています。移転したのは昨年5月。靴を脱いでゆったりとレコードを選べるお店になっています。


▲現在川越で営業するレコード店「芽瑠璃堂」。

 

ピーター氏「ブルース詞のヒアリングには自信がない、さいしょは断った」」

カズさんとピーターさんのトークショーは、まずはカズさんから会場の皆さんへの「ありがとうね!」との呼びかけから始りました。50年を振り返りカズさんは冒頭から涙ぐみつつ「いまがあるのは音楽ファンのおかげ、本当に感謝している」と話しました。続けて、現在営業している川越の店舗について言及しました。

「もっとよくしていきたい、ぜひ皆さん来てください。コミュニケーションありきの店です」
カズさんが現在芽瑠璃堂で目指すのはまさに「原点回帰」。若き日に吉祥寺で始めた店がそうだったように来るお客さん一人一人とコミュニケーションを取りながら「このミュージシャンがいいよ。このレコードがいいよ。」と伝えていく。ストリーミングでは得られない音楽体験を、レコード屋として提供していくことです。
そんな吉祥寺の芽瑠璃堂に、お客さんの一人として来店していたピーターさん。当時の芽瑠璃堂の印象を「店の雰囲気が好みだった」と話します。

さらに、2人は50年に亘る交流のはじまりのエピソードを伝えてくれました。
前述したように、ピーターさんはカズさんの依頼により、ブルースのレコードの日本盤の歌詞カードを制作する役を担います。
しかしながら、当初ピーターさんはその依頼を断ったそうです。なぜなら「ブルースは難しい」から。「10代の頃からブルースは聞いていたけど、ブルースの歌詞を正確にヒアリングして英詞に書きおこすことは難しい。いい加減なことはしたくないから『僕には自信がない』と断った」
カズさんはピーターさんの仕事や音楽に対する姿勢を「金儲けとかビジネス云々じゃない、ピーターは筋が通っているのがいいんだよね。今もそれは変わっていない」と話しました。
カズさんの熱心な依頼を受け、最終的にピーターさんは英詞ヒアリングの依頼を受けたわけですが、ピーターさんの音楽に対する姿勢が垣間見えるエピソードですね。

 

「頼まれるからやっている。過去の素晴らしい音楽を絶やしたくない」

トークショー後、ピーターバラカンさんのDJタイムが始まりました。

今回、ピーターさんが選んでくれたのは、レコード店芽瑠璃堂のファンなら気に入るだろう、という楽曲の数々。
「アメリカでは知名度が低いんだけど、日本ではなぜか人気が出た。」と紹介してくれたのは、ハース・マルティネスの「Comin’ Round the Moon」。グルーヴィーな渋めの楽曲に、特徴的なダミ声、一度聴いたら忘れられない音源です。

個人的にはジェームス・カーの「To Love Somebody」がソウルフルでとても素敵なバラードだと感じました。ビー・ジーズのカバーだそうです。ビー・ジーズの楽曲も聞いてみましたが、私はジェームス・カーの方が、抑揚がありドラマチックで好きですね! 
70になる母に「この曲良かった」と伝えると「ああ、名曲ね」と言われ、YouTubeで調べると、複数のアーティストがカバーしていることが分かりました。
1つの楽曲を通じて、時間を越えて様々なアーティストに触れることができる。そんな面白みもありますね。

音楽を聞くなかで、新しい発見や広がりを持たせてくれる機会を与えてくれるのがピーターバラカンさんの出前DJなのです。
ピーターバラカンさんはこれらの楽曲を含め10曲程度を披露。「素晴らしい楽曲が沢山あって、もっと聞いてほしいけど今日はここまで。またの機会に」という言葉でDJタイムを締めくくりました。

ピーターバラカンさんは現在、月に数回出前DJを行っています。なぜ、出前DJを続けているのでしょうか? 
返ってきた答えはこちら。
「頼まれるからやっています。素晴らしい音楽はたくさんあり、もっと皆さんに聞いてほしい。絶やしたくない」
歴史の中で生まれた音楽へのリスペクトを感じました。

 

レコードを通じて音楽の楽しみ、コミュニケーションする楽しみを提供する「芽瑠璃堂」はこの夏リニューアル!

店主カズさんが水先案内人としてレコードの楽しみを教えてくれる芽瑠璃はこの夏リニューアル! 8月3日(土)からは、現在営業中の建物2階部分に加え、1階部分も店舗として営業することが決定しました。音楽が好きな方、レコードを聞いてみたい方、多くの方に足を運んでみてほしいです。

 

■店舗詳細


【芽瑠璃堂 川越店】
埼玉県川越市連雀町22-7
定休日 (月曜、火曜)
12:00〜18:00


 
▼公式Instagram
https://www.instagram.com/merurido_kawagoe/
 
▼公式サイト
https://merurido.jp/
 


この記事を書いた人

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前原 麻世 Asayo Maehara

タウン誌編集5年ののち、ライターになり7年。長野県出身→沖縄で大学時代→東京で就職→所沢で子育て中、10年目。夫は埼玉都民2世。カフェや、子連れで行ける音楽イベントが好きです。

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