目にしたエネルギーを描き、独自の象形文字を作り出す!若手アーティスト・阿部広夢さん展示会【所沢】
摩訶不思議で色鮮やかな世界は見る者を空想の旅に連れて行く!
コロナ禍のある日、彼は色鉛筆を手に描き出した
良くも悪くもコロナ禍により人生が変わった、という方は数多くいるでしょう。今回取材したアーティストの阿部広夢さんもそのひとり。大学2年生のある日、部屋にあった色鉛筆を手にした彼は、突如、描き出しました。それは、とどまることを知らず、やがて“子どもの時代の続き”として表現はあふれ出し、摩訶不思議で色鮮やかな世界を私たちは目にすることになります。6月23~25日には所沢ノードで個展を予定しています。
▲阿部広夢さん「ボクの子供探検記」より
「溢れ出して止まらない」絵の数々
カラフルな色づかいで、摩訶不思議な生き物やカタチが緻密に描かれた絵は、見る者を時にワクワクさせ、時に驚かせ、時に考え込ませる。
阿部広夢さんの絵は、見たものをそのまま描く写実的なものではありません。広夢さんが題材や対象から受けたインスピレーションをもとに独自の世界観で描かれています。
▲阿部広夢さん
絵を始めたのは2019年、大学2年生の時。美大などを経た訳ではなく、まったくの独学で絵の道を歩んできました。
2020年にはカフェの一角で初めての作品展示会を行います。2022年11月には千駄ヶ谷のギャラリーで初個展を開催しました。その他、各所の店舗で絵を展示しています。まさに「溢れ出して止まらない」といった、広夢さんが生み出す絵の数々。
絵を学んだ訳ではなく、美大出でもない彼が、なぜアーティストとして歩き出したのでしょうか?
▲初個展「みんなで踏み出すこの一歩」2022年11月3~7日 テリトリー・ギャラリー(千駄ヶ谷)
コロナ禍に見つめなおした生き方
広夢さんが絵を始めたのは大学2年生の頃でした。
たまたま、家にあった色鉛筆を目にした広夢さんは「何か書いてみようかな」という気持ちに駆られました。
始めてみると、絵に没頭し、紙が足りなくなれば付け足し、気付いた時には色鮮やかな「ライオン」の絵が出来上がっていました。
▲広夢さんが絵を始めた日に、夢中で描いたライオンの絵
当時、周囲は就職活動の真っただ中でした。会社説明会に参加し、インターンで企業に入り込む友人たちの姿を目にしながら、広夢さんも就職活動を行っていました。
2020年2月には、時代はコロナ禍に突入します。会社説明会や対面で行われていた面接はオンラインに切り替わりました。
画面越しに面接官と会話する。その内容で自分の人生が決まってしまう。その状況に広夢さんは強烈な違和感を覚えます。
「何かが違う」
コロナ禍により社会情勢が混乱する中、広夢さんは一度立ち止まり考えます。
出てきた答えは自分の本当に表現したいこと、やりたいことを突き詰めること。
「これまで”ふた”をしていた、本当にやりたいことをしよう。」
その頃、夢中で描いたライオンの絵をきっかけに、絵を始めていた広夢さんの胸には「自分の描きたいものがあり過ぎて、やり遂げるには一生かかりそうだ」という思いもありました。
心を決めた広夢さんは描き続ける日々に邁進します。
幼少期のアメリカ暮らし そこで見たカラフルな世界
広夢さんの描くカラフルな情景や摩訶不思議な生き物、そのインスピレーションの源はどこにあるのでしょう。
広夢さんは2歳から6歳までアメリカで暮らしていました。住まいはニューヨークのお隣ニュージャージー州です。マンハッタンに近いにも関わらず、リスが棲み、夏にはほたるが舞ううっそうとした森があり「アメリカの埼玉」とも言えるような場所だったそうです。
のびのびとした環境の中、芝生の上で弟とヒーローごっこに見立てた遊びを繰り広げる広夢さんのココロの中には、様々なキャラクターが登場していました。
▲「ただいま、お帰り」
地上で見守り「おかえり」と声をかけるのは広夢さんの弟「ちろくん」です。
空には毎日一生懸命に燃えている幼いころに父を亡くしたという炎の王「ファイヤー」。
空から落ちたどんくんを捕まえてくれたのは、ずっとどんくんを見守ってきた存在「二―ベルタイガー」。
「ザミアート8兄弟」はいつもお腹を空かせて人間を食べようと企んでいるキケンな存在。
「ケチャル7部族」はどんくんがザミアート達に食べられてしまうのではないかと心配しています。
大学生になった広夢さんが絵を始めてから描き上げた「ボクの子供探検記」にはこんなシーンが描かれています。
そう、これは広夢さんが子どもの頃芝生を駆け回りながら過ごした遊びの時間に繰り広げられていた”お話”なのです。
それは夢とも現実ともつかない、とても純粋なストーリーです。
▲幼き日の広夢さん自身「どんくん」
▲どんくんを見守ってくれる「二―ベルタイガー」
広夢さんは、記憶の中のストーリーを思い起こし、無我夢中で絵にしました。
広夢さんは言います。
「子どもの頃見ていたけど、あの頃は手も上手く動かせないし、思った通り描けなかった。いま、もしかしたらこれだったのか! と思いながら描いている。」
広夢さんの子供時代のストーリー「ぼくの子供探検記」を読むと、誰もが子ども時代の感覚を大事にすることが許されていいんだ、そんな幸せな気分になります。
独自の「エンペザール文字」やパワフルな「KAO series」
広夢さんの無限の世界を感じさせてくれるものが広夢さんが独自に作り出しているポップイラストのような象形文字「エンペザール文字」です。
カタチはもちろん表記ルールも広夢さんオリジナルのもの。広夢さんは「エンペザール文字」を無数に考案、それは今も日々増え続けているそうです。
▲エンペザール文字で書かれた文書
▲所沢ノードの入り口に飾られたエンペザール文字
広夢さんが被写体から受ける無限の発想をパワー全開に表現するのが「KAO series」。被写体は、人物・空間・組織・思い、なんでもOK。広夢さんがイメージを膨らませ、唯一無二のオリジナル作品に仕上げていくものです。
広夢さんはこれまでに、薬局・歯科医院・家具店などを被写体に描きました。それらは店内や院内に展示されて、見た人に元気を与えています。
▲「待ってたよ。/Welcome again」KAO series (所蔵:江黒歯科クリニック様)
メッセージは「思い出せ!」
広夢さんが制作時にテーマにしていること、作品に込めているメッセージとはいったい何なのでしょうか?
ここであまり多くを語るつもりはないのですが……少しだけ広夢さんに自身の制作におけるテーマを伺えました。それは「思い出せ!」というもの。
「ボクの子供探検記」は、きっと皆さんが予想されるように、無邪気な子供時代を。
「エンペザール文字」は2023年の現代に生きる広夢さんという存在が作る”歴史”そのものです。
「KAO Series」では普段見ている人の”顔”にはいかに様々な情報が詰まっているか、見る人に訴えかけます。
新進気鋭のアーティスト・阿部広夢さんの作品を、ぜひご自身の目で見、感じてください!
阿部広夢さんの絵が所沢で直接見られるのは6月23日(金)~25日(日)の3日間
独自の世界観とピュアな表現がまぶしい阿部広夢さんの絵。その個展「『所沢サンプラザ×阿部広夢』展示・販売会」が所沢のシェアスペース「所沢ノード」、そして所沢ノードが入居するビル「所沢サンプラザ」の内階段壁面を利用して行われます。
展示する100作品、全て完全最新作です。また、広夢さんが所沢サンプラザ内のいくつかのお店(ファミレス・古着店・美容室など)をリサーチし、そのお店を自身の「KAO Series」の一環として描き下ろした作品もお目見えします(※この作品は会期後も3カ月程度展示される予定です)
3日間ともに広夢さん本人が在廊。
ぜひ、皆さんも、作品を鑑賞し広夢さんに出会い、その人柄に触れてみてください!
■詳細
『所沢サンプラザ×阿部広夢』展示・販売会
日時:2023年6月23日(金)~25日(日) 12:00~19:00(最終日12:00~17:00)
場所:埼玉県所沢市 日吉町4-2 所沢サンプラザ3F 所沢ノード/内階段壁面
▶阿部広夢さん 公式サイト
https://hiromuabe.com/
▶阿部広夢さん Instagram
https://www.instagram.com/hiromuabe_official/