海なし県じゃなかった!サトイモっぽい土偶がある?新たな発見が必ずある『武蔵野3万年のレシピ展』【所沢】


おいしい&面白い武蔵野が「ジモト観」を変える?!角川武蔵野ミュージアム『武蔵野3万年のレシピ展』

木の実のソースがかかった鹿肉、新鮮な三富野菜のワイルドな石蒸し焼き、栄養豊富なシジミ汁……武蔵野の3万年の歴史をひも解く中で食文化にスポットをあてた企画展・レストランメニューが始まりました!

2021年11月取材 前原麻世


▲角川武蔵野ミュージアム『武蔵野3万年のレシピ展』・サクラダイナーにて撮影


 

旧石器時代から現代まで、おいしい武蔵野をレストランで味わおう!

旧石器時代から現代に至るまで、武蔵野に住む人々はその時代それぞれの風土、地理的・気象的環境に影響された食文化を作り上げていました。その「食文化」にスポットをあて発信していくのが今回の企画です。

さて、皆さんは、大きな岩のような建造物が印象的な角川武蔵野ミュージアムの5階にレストランがあるのをご存知でしょうか? 今回、企画の一環として、そのレストラン「SACULA DINER(サクラダイナー)」でも”おいしい武蔵野”なるメニューが味わえます。

定食風のメニューは、「ワイルド石蒸し焼き定食」です。
埼玉産の”香り豚”、そして所沢三富野菜などを蒸し焼きにし、オニグルミのソースをかけていただきます。
シジミ汁が付いています。


▲サクラダイナー ワイルド石蒸し焼き定食(2,200円税込)

鹿肉の塊にビックリなこちらのメニューは、「ジビエ・本州鹿と所沢三富野菜のワイルド石蒸し焼き」
栃の実を使用した少し苦みのあるソースが鹿の赤身肉の味を引き立てます。ワインとの相性もばっちりです。


▲サクラダイナー ジビエ・本州鹿と所沢三富野菜のワイルド石蒸し焼き(4,500円税込)

石蒸し焼きとは、溶岩焼きのようなもの。
旧石器時代の調理法です。
同レストランでは、焼き石の上に朴葉やぶどうの葉で巻いた食材を置き水を入れ10分ほど密閉。すると、油分や水分を逃がすことなく食材に火が通り、素材そのものの旨みを保つ蒸し料理が可能となるのです。

このメニューは、今回の企画展に合わせサクラダイナーのスタッフが、昔の人々が何を食べていたか勉強しながら作ったのだそうです。

また、サクラダイナーで使用する野菜は車で20分圏内程度で作られているものです。つまり「新鮮」ということ。支配人の宮島さんによると、近所のスーパーで買う野菜は埼玉のものもいったん東京に出てから埼玉に送られる流通経路をとるものもあり「収穫後数日の間においしさが抜けて」しまっています。サクラダイナーでは周辺農家さんから直接仕入れ、野菜のおいしさが抜けないうちに提供するよう心がけています。
また、江戸時代より続く循環型農法「三富農法」で作られている野菜もあり、宮島さんは「野菜のパワーが違う」と話します。
サクラダイナーでは、プロの手で素材の旨みを引き出された武蔵野野菜やお肉が堪能できそうですね。


▲サクラダイナー 支配人・宮島さん

さらに、埼玉県民の心をくすぐる一品として注目したいのが、先ほどご紹介した定食についている「海なし県埼玉も昔は海だったすまし汁」と命名されたシジミ汁。

▲メディア内覧会時に筆者が頂いたもの。奥がシジミ汁

実は、埼玉県は海に面していたことがあったんです。富士見市に水子貝塚という貝塚があり、そこから出土された土器の展示もあります。


▲赤丸部分が水子貝塚。角川武蔵野ミュージアムから10kmほど北東に位置する。『武蔵野ギャラリー』にて

これを読んでいる武蔵野在住の親御さん、太古の昔に思いを馳せ、埼玉県は海なし県じゃなかったんだなあ、なんて言いながら子どもとシジミ汁を飲む。
それも、立派な食育&歴史教育、かも知れませんよ!
 

「土偶は女性」の先入観を捨てよ!サトイモやクリかも知れない新説が面白い

さて、武蔵野3万年レシピ展、5階の300冊の本が並ぶ『武蔵野回廊』、そしてさらに奥にある『武蔵野ギャラリー』でも展開されています。
 

「食」関連の本に注目!これはわかりやすい!”主婦向けレシピ風”解説も

『武蔵野回廊』、ここでは武蔵野に関する本が並んでいますが、今回はその中から「食」に関する44冊をピックアップし「食」POPをつけています。(選書は今後増える可能性あり) 
『武蔵野回廊』は現在、入館料不要で閲覧できますので、気軽に何度でも足を運んで本に触れてほしいですね!


▲『武蔵野回廊』

『武蔵野ギャラリー』では、学芸員の方の創意工夫で、武蔵野3万年の食文化を歴史資料や自然風土から考察し”主婦向けのレシピ”のような様式で展示・紹介しています。
さあ皆さん、シカを狩りに行きましょう!


▲『武蔵野ギャラリー』武蔵野3万年のクッキング
 

武蔵野土偶の謎を追え! 盛りすぎなサトイモ土偶の衝撃

学芸員の方イチオシのパートがこちら、「土偶」に関するものです。
今回、土偶のレプリカを用意、実際に触ることができます。
これは見るだけではなく、触れることで感じられることを大事にしてほしいというもの。


▲『武蔵野ギャラリー』土偶のレプリカに触れるコーナー

また、”新説”として興味深いものが披露されています。
多くの方は、土偶というとふくよかな女性を思いうかべ「土偶=女性」だと記憶しているのではないでしょうか?
しかし、今回の展示でクローズアップしているのは、「土偶は必ずしも女性をかたどったものではなく、なかには木の実や農作物などの植物や、食用にしていた貝などをかたどっていたものがあったのではないか?」というものです。


▲「このトチノミ、茶色い部分は髪の毛みたいですし、こうなってたら思わずここに顔を描きたくなりますよね!」と愉快に話してくださった学芸員の熊谷さん

埼玉県が国内トップ出荷量(2020年)を誇り、所沢の特産品でもある「サトイモ」の土偶には市民としても興味津々です!

▲人類学者・竹倉史人氏による「サトイモゴーレム」?! 研究を踏まえたファンタジックなイラストは「こういうのがあってもいいなあ」と思わせてくれます

「土偶は植物をかたどったものである」という説、実は近年、人類学者の竹倉史人氏が提唱、『土偶を読む(著・竹倉史人、晶文社)』という本に書かれた新説です。
角川武蔵野ミュージアムとしては、この説を「まだ定説にはなっていないが考古学に一石を投じるものとして採用したい」と考えているそうです。

竹倉氏が養老孟子氏と対談した動画も放送しています。


▲館内にて養老孟子氏と竹倉史人氏の対談動画を再生
 

見て・知って・食べて面白い、ワクワクする『武蔵野3万年のレシピ展』は2021年2月13日まで!

今回ご紹介した『武蔵野3万年のレシピ展』は私たちの誰もが日々直面する「食」をテーマにしているからこそ、気軽に興味が持てる展示となっているのではないでしょうか。
この地をおもしろいなと感じて、地元に対して新たな視点を得ることができればよいですね!
2月13日まで開催、冬休み中の訪問もおすすめです!

 

■展覧会詳細


タイトル:武蔵野3万年のレシピ
会場:埼玉県所沢市東所沢和田3-31-3 角川武蔵野ミュージアム 5F
会期:2021年11月3日(水・祝)~2022年2月13日(日) ※会期等の変更があります。
休館日:第1・3・5火曜日
◎休館日が祝日の場合は開館・翌日閉館。
◎祝日開館時の営業時間は該当する曜日に準ずる。
◎開館日・時間は変更される場合もございます。
最新情報を公式ウェブサイトでご確認の上、ご来館ください。
https://kadcul.com/event/49
開館時間:10:00-18:00(金・土 10:00-21:00)入館締切:閉館30分前
入場料:有料スペースは「スタンダードチケット」でご入場いただけます。
 

■店舗詳細


SACULA DINER(サクラダイナー)
住所:埼玉県所沢市東所沢和田3-31-3 角川武蔵野ミュージアム 5F
営業時間:11:00~22:00(L.O.21:00)
定休日:第1,3,5,火曜日 (ミュージアム休館日に準ずる)
※サクラダイナー来店の際、角川武蔵野ミュージアムの入館利用料は必要ありません。
https://tabelog.com/saitama/A1106/A110601/11053534/dtlmenu/lunch/


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