都心から1時間、里山に響く”音色”と”焚き火”でオトナの癒し時間を…


里山に響く民族楽器の音色と旬野菜グリル、五感をおだやかに刺激する大人の時間

夜の森をバックに虫の声や木々のざわめきを感じながら民族楽器のどこか懐かしい響きに耳を澄ます。アウトドアグリルができるグリル台があり、オーガニック野菜や県産お肉を自ら焼いて楽しむ……。
所沢市の東側、三富と呼ばれる三芳町で体験できる「SATOYAMAアウトドアナイト」、2019年の夏に始まり、好評を博し今年で3年目になります。
場所は「三富今昔村」、地元の人はご存知かと思いますが、ここは石坂産業株式会社が運営するフィールド。石坂産業はいわゆる「産廃業」を営む会社です。
産廃業者である石坂産業さんがなぜこのような企画を行っているのでしょうか?
今回、ライターの前原が、子連れで「SATOYAMAアウトドアナイト」に行ってきました!
実は、この日ライブステージの演奏者である秋吉沙羅さんとは10年来の友人!
当日の様子をレポート、またこの企画にかける思いを三富今昔村のスタッフさんに伺いました。
※2023年は「SATOYAMA TAKIBI NIGHT」に名称が変更となりました。当記事では取材時の情報を表記しております。

2021年5月取材:前原麻世

 


夜の里山、「いきものたちだけの空間に少しだけおじゃまする」がコンセプト

所沢市の東に位置する三芳町にある「三富今昔村」、ここはかつて産廃業者が様々な廃棄物を不法投棄し「産廃銀座」と呼ばれるほど荒れ果てた地として名の知れた場所でした。石坂産業は今から10数年前、現在の2代目社長・石坂典子さんが就任した際、東京ドーム4個分の里山を保全し、このエリアが生物多様性の高い自然豊かな森として機能するよう活動しました。


▲三富今昔村

やがて、里山が回復するにつれ、ここを棲みかにする虫や鳥が増え、いまではレッドブックに載るような絶滅危惧種の植物が姿を見せるまでに……。
石坂産業の取り組みにより、動植物にとって居心地の良い場所がよみがえったのです。

そんな、動植物のよりどころである場所に、夕暮れから夜にかけて、人間たちが少しだけおじゃましてゆったりと音楽・お食事を楽しむ、というのが「SATOYAMAアウトドアナイト」なんです。


▲SATOYAMAアウトドアナイト

音楽を担うアーティストは、伝統楽器・民族楽器の奏者たち。
焚き火を前にし、各々の音楽スタイルで演奏を披露します。

お食事はお客様自ら素材をグリル台で焼くBBQスタイル。
オーガニック野菜や県産肉などをじっくり焼いて、いただきます。


▲テーブル近くのグリル台でBBQを。利用客自ら焼くことが可能だが、スタッフさんも対応してくれる
 

【体験レポート】SATOYAMAアウトドアナイトを子連れで体験しました!

筆者が訪れたのは5月の半ば、この日の演奏は篠笛・神楽笛奏者の秋吉沙羅さんです!
沙羅さんは昨年・一昨年も「SATOYAMAアウトドアナイト」で演奏しており、筆者は毎年演奏と食事を楽しみに来させていただているわけなんです!


▲篠笛・神楽笛奏者 秋吉沙羅さん

この日はお天気も良く、外で演奏と食事が楽しめるとのこと。
予約制なので、着くなりコース料理が運ばれてきました。
さっそくグリル台で焼きます!


▲「クローバー★プラン」の一部


▲アラカルトで注文した「県産香り豚」

お野菜は新鮮で元気、という印象。甘みが感じられ、ハリがあって心地よい”食べ応え”のあるお野菜です。


▲バーベキューのグリル台

ドリンクは、カウンターまでオーダーを。


▲ドリンクをオーダー


▲こちらはノンアルのモヒート

お食事を少しいただいていると、18時ころには演奏が始まりました!

そこには、沙羅さんの笛の音と木々のざわめきや風の音、そしてパチパチと鳴る焚き火の音しか聞こえません。
個人的に沙羅さんの演奏はライブハウスで何度も聞いているのですが、夜の森で聴くという体験はこのイベントでしか味わったことがありません。


▲秋吉沙羅さん


▲演奏を聴いている間に、辺りは夕暮れから夜に

「おぼろ月夜」や「茶摘み」といった日本の民謡や、神楽の一場面の曲、そして沙羅さんのオリジナル楽曲が篠笛と神楽笛で奏でられました。

沙羅さんは、もともと地元のお祭りで神楽笛を吹いていたことからこの道に入った人。
もしかしたら、彼女が地元広島で行う神楽では、こんな感じで夜の森に笛が鳴り響くのかなあ、と思いを馳せました。後で聞いたら、「夜通しお祭ということもある」ということでした。
 

「うんとこしょ!」子どもにうれしい収穫体験も

イベントエリアのベジタブルスクールには、お野菜の植えられた高さ1メートルほどの土の入った木枠があります。
これは「レイズドベッド」と呼ぶのだそう。まさに、お野菜のベッドですね。


▲レイズドベッド

スタッフさんがお声かけ下さり、子どもたちにこちらの野菜を収穫させてくださるとのこと!
レイズドベッドに載せてもらい、子どもたちは大根を収穫させてもらいました
※収穫できるかどうかはお野菜の生育状況によるようです。運が良ければ体験できるかも!


▲お野菜の収穫体験


▲お野菜の収穫体験

こちらのお野菜たち、「固定種」「在来種」と呼ばれるこの地域特有のオーガニック野菜です。そして、石坂産業の農業部門「石坂オーガニックファーム」では、里山の落ち葉を肥料にする「落ち葉堆肥農法」で野菜を育てています。さらには、そのお野菜を収穫し、なるべく手を加えずに県産肉とともにBBQを楽しむ「ベジタブルスクール」という企画も実施しています。
生命力豊かな「良い土」で、地の野菜を育てる。そしてそれを収穫し味わう。そんな機会を提供するのも石坂産業の役目となっているのです。

▲固定種や在来種を落ち葉堆肥農法で育てる
 

日が暮れてからの里山、ゆらぐ焚き火を目にしながら癒しの時間を……

どうして石坂産業さんはこのような企画を行っているのでしょうか?
三富今昔村の三木千鶴さんにもお話を伺いました。
 
三木さん:
「私たちが保全しているこの里山『三富今昔村』、オープンから17:00まで、様々な体験プログラムや里山の中で過ごす時間を楽しんでいただいていました。
でも私たちは、夜の里山も皆さんに体感してもらってはどうだろうか、と考えました。
日が暮れてからの時間は生き物たちだけの時間です。この時間にちょっとだけ人間がおじゃまして、焚き火を見つめながら癒され、音楽を楽しむ。そんな時間を皆さんにご提供することにしました。


▲SATOYAMAアウトドアナイト

また、以前より採れたて野菜を楽しむベジタブルスクールのプログラムを日中に行っていたのですが、ぜひ夜にもやってほしい! というお客様の声もあり、このような企画が実現することになりました。
そして、夜にやるなら音楽があるとよいね! という意見が社内から出たこともあり、ミュージシャンの方をお招きし演奏を聴くことができる形態に……。

初年度はミュージシャンの方が出演しない日もあったのですが、お客様から『演奏のある日に来たい!』との声が多く聞かれたため、全ての日程が生演奏付きになりました。」
 
里山での夜の時間を、食事・音楽・焚き火とともにしっとりと楽しむ。
五感を、“おだやかに”刺激してくれるプログラムと言えるかもしれません。
 

「三富今昔村はどんなところ?」 秋吉沙羅さんに聞きました

もともと知り合いに紹介されて遊びに来たのがきっかけで、3年前からここでの演奏を引き受けることとなったという秋吉沙羅さん。
彼女にとって、この場所はどんな場所なのか聞いてみたところこんな答えが返ってきました。
 
秋吉沙羅さん:
「普段のコンサートやライブでは屋内での演奏を行うことが多いのですが、「SATOYAMAアウトドアナイト」では木々に囲まれた場所での演奏。森に笛が響き、自然と共鳴して演奏している感じがします。日暮れ前のリハーサル中には、笛の音が聞こえると鳥たちもさえずってくれることがあります。


▲テーブルに飾られたお花。「小さいころカタバミの実を飛ばしました」と沙羅さん

演奏が始まると、お客さまが食事の手を止めて熱心に聞いてくれるものうれしく感じています。
個人的には、最近家庭菜園を始めたこともあり、そんな話題もここでは当たり前のようにできるのが素敵なところ。スタッフさんとコンポストの話題で盛り上がったんですよ! 自然というものを感じながら生きていたい、そういう人たちの拠点・よりどころになっていると思います。」
 

▲秋吉沙羅さん(左)と三富今昔村の三木千鶴さん(右)、出身地が同郷・広島県ということもありそんな話題でも盛り上がるのも楽しいのだそう

▶秋吉沙羅さんについて詳しくはこちら
http://sarahakiyoshi.com/

 

産廃業者が里山を保全する理由とは?

また、私にとってのもう一つの疑問、「なぜ産廃業者である石坂産業さんが里山を保全するのか、ということ。
こちらについても三富今昔村の三木さんに聞いてみました。
 
三木さん:
「1990年代までこの辺りは、雑木林にゴミの不法投棄があふれる荒地でした。
歴史を300年前にさかのぼると、この地域は三富新田として川越藩主・柳沢吉保が江戸の食糧難を救うために開墾した土地。その際、農民たちの家や畑を作るとともに落葉樹で「雑木林」を作りました。その木々の落ち葉は堆肥として使いました。
そんな雑木林は、年月を経て人々の生活スタイルの変化により、農業に有効活用されなくなってしまいました。
雑木林は人工的なものですから人の手が入ってこそ力を発揮します。ところが、地域の方々の高齢化により、手入れが難しい、と。そうして、雑木林は荒れていきました。やがて、不法投棄の温床に……。
私たち石坂産業は、その状況を憂い、自分たちもゴミ処理をするいち産廃業者として会社を置く地域を良くしなければと考え、周辺道路のゴミ拾いや森の手入れを始めました。
また、東京ドーム4個分の里山を地域の方とともに保全し、環境教育の場になるようにと整えてまいりました。」


▲現社長・石坂典子さんは経営者としてメディアからの注目度も高い
 
石坂産業さんも過去には、悪者のように扱われ、地域住民の方からは「出ていけ!」と言われた産廃業者のうちのひとつ。
そんな彼らは、「襟を正す」ごとく、地元の環境改善に取り組みました。
そしてそれは、単なる改善にとどまらず、里山の自然を取り戻し、人と生き物が共生する場所を創るということへと発展していきました。


▲SATOYAMAアウトドアナイト フィールド
 

何を思うかはあなたしだい……

夕暮れ時から夜にかけて、森のそばでしっとりと音楽や食事を楽しみ、心地よい時間を過ごす。
忙しい日常を離れて、何を思うかはその人しだいです。

離れた“故郷”に思いを馳せる人もいるかも知れません。
ちょっと立ち止まって、自分自身のことに考えを巡らせる人もいるかも知れません。
生き物たちの過ごす場所で、地球環境について考える人もいるかも知れません。

「SATOYAMAアウトドアナイト」を通じて、自分なりの有意義な時間を過ごしてみてはいかがでしょうか?

 

■施設詳細


住所:埼玉県入間郡三芳町上富1589-2
電話:049-259-6565

【SATOYAMA TAKIBI NIGHT】
お食事プランの詳細や営業日・出演アーティストについてはこちらをご覧ください。
https://santome-community.com/outdoornight/


この記事を書いた人

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前原 麻世 Asayo Maehara

タウン誌編集5年ののち、ライターになり7年。長野県出身→沖縄で大学時代→東京で就職→所沢で子育て中、10年目。夫は埼玉都民2世。カフェや、子連れで行ける音楽イベントが好きです。

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