所沢出身の高校生ライダーが躍進中、バイクの魅力に惹かれ練習に励む日々を送る!松島璃空 選手


2022年7月のもてぎロードレース選手権J-GP3(※1)クラスで見事優勝を果たした、所沢生まれ所沢育ちの松島璃空(まつしまりく)さん、高校一年生です。サーキットでの走行中、2度、生死をさまよう事故を経験するも、その度に「どうしてもバイクをやりたい」と奮起した過去も……。アスリートとしても人としても成長著しい高校生ライダーを取材しました。

(※1)J-GP3
レース専用に作られたマシンで争われているクラス。軽量コンパクトな車体に4ストローク250cc単気筒エンジンを搭載し、コーナリングスピードは、 大排気量クラスを上回る速さを見せ、小排気量クラスならではのテクニックが必要とされる。全日本ロードレース選手権に直結し、MotoGP™ロード選手権レース世界Moto3™クラスにも通じるカテゴリー。
引用:モビリティリゾートもてぎ公式サイト もてぎロードレースクラス・車両解説

 


▲インタビューに答える松島璃空選手(15歳)

2022年7月取材 前原麻世

 

始まりは小学生のポケバイから 父に「やりたい」と懇願

「この後、3時からトレーニング仲間と泳ぐんです。4時間くらいやります」
この日の予定を聞いたところ屈託なく答えてくれた松島璃空さん。15歳の高校一年生です。生まれも育ちも所沢。
高校生ライダーとして筑波ロードレース選手権、茂木ロードレース選手権、菅生ロードレースシリーズなど国内のレースに参戦中、今期は成績好調、参戦レースでポールトゥウィン(※2)を重ねています。
(※2)予選、決勝共に1位を獲得すること。


▲2022 もてぎロードレース選手権J‐GP3クラスにて レース中の様子(写真提供:桒嶋 敏)


▲2022 もてぎロードレース選手権J‐GP3クラス表彰台での松島璃空選手(右)

璃空さんがバイクに興味を持ったきっかけは、小学3年生の頃にテレビで見たバイクの世界選手権のレース映像でした。
コースを走り抜けるバイクの姿を目にするやいなや、「自分もこれをやってみたい!バイクに乗りたい!」という気持ちが沸き起こったのだそうです。そこで、璃空さんは父親にその気持ちをストレートに伝えたところ、夏休みにポケットバイクの体験走行に連れて行ってもらうことができました。
もともと璃空さんの父親は若い頃、バイクに乗り国内のレースに参戦していました。その後、レースからきっぱりと離れた父親は、テレビで放送されるレース番組を見る程度に留めていいましたが、璃空さんもそれを目にすることになったのです。
ポケットバイクの体験走行を終えた璃空さんは、「これがやりたい!」と父親に懇願しますが、聞き入れてもらえませんでした。父親が璃空さんの「バイクに乗りたい」という申し出に反対したのは、自身もバイクに乗っていたからこそ、その危険性やかかる費用の莫大さ、アスリートとしての”覚悟”と”努力”の重要性を理解していたからでもありました。父親に熱心にアタックしても受け入れてもらえなかった璃空さんの「バイクに乗りたい」という思い、しかしながらそれは消えることはありませんでした。その後も璃空さんは「バイクに乗りたい、やってみたい」と父親に伝え続けたのだそうです。
およそ1年が過ぎ、璃空さんが小学4年生のゴールデンウィークに、再度ポケットバイクの体験走行に連れて行ってもらいました。そこでも璃空さんは”情熱”と”覚悟”を猛烈にアピール。ついに、両親は根負けし、璃空さんを子どもでも扱えるミニチュアサイズのバイク「ポケットバイク」に乗せてあげることにしました。


▲小3でポケットバイクに始めて乗ったときの写真

小学4年生にはポケットバイクを購入、家族でサーキットに月2回ほど赴き練習するようになります。
どうせやるなら、とレースへの参戦も決めます。
そして迎えたレース、初心者ながら璃空さんは勝利を収めてしまいます。
璃空さんは、よりいっそうバイクの魅力にのめり込むことになりました。

 

大怪我で生死を彷徨うも「やっぱりバイクに乗る!」

初心者ながらも大勝し本人のやる気もじゅうぶん、順調に走り出したかのように見えた璃空さんのバイク人生。しかし、次に参加したあるレースで転倒、大怪我を負います。この時、小学4年生。ポケットバイクレース参戦からわずか2カ月のことでした。
本人曰く「タイヤが温まっていないのにスピードを出し過ぎてしまった」。初心者ながら攻めのレース展開で勝ちを収められていた璃空さん。しかしその姿勢があだとなってしまったのかも知れません。
璃空さんは2週間の入院を余儀なくされます。
この時、本人の精神状態としては「怖い、もうバイクには乗りたくない」というところまで落ちていったそうです。
そんな気持ちで過ごしていた入院生活のなか、とある”おじさん”の存在が立ち直るきっかけを与えてくれました。病院で同室だったそのおじさん。璃空さんがバイクに乗っていることを話すと「兄ちゃん、バイク乗ってるなんてすごいね!応援してるよ!」と励ましてくれたそうです。見ず知らずの他人でしたが、彼の言葉に璃空さんの心は動かされます。バイクを続けることを決意しました。


▲小6、ポケットバイクでレースに参戦していた頃

その後、数々の勝利を重ね、ポケットバイクレース、ミニバイクレース、ロードレースとクラスを上げ順調にステップアップしていった璃空さんは、2020年、中学2年生の時に、排気量250ccのバイクで練習走行中に再び大怪我を負います。
MuSHASHi HARC-PRO. スカラシップという、全日本ロードレース選手権のトップチームが主催し、世界チャンピオンや現役トップレーサーの指導をマンツーマンで受けることができるトレーニング・クラスに選抜合格。選手の後ろをトレーナーが追走し走行をチェックするという練習メニュー中、璃空さんのバイクが転倒。避け切れなかったトレーナーは璃空さんを”轢いて”しまい、更に空中に跳ね上がった自身のバイクが背中に“直撃”。瀕死の重傷を負いドクターヘリで運ばれた璃空さん、外傷だけでなく内臓の出血も確認されたため緊急手術が行われました。


▲転倒事故当時の様子を説明する松島璃空選手

小学4年生の時の大怪我は「ステージ1」でしたが、この時医師に告げられたのは「ステージ3b」という深刻なもの。事故直後は気を失ったら最後、と璃空さんは始終「寝てはだめ!」と声掛けされていたそうです。
生死も危ぶまれた数日間を経て、璃空さんはなんとか一命を取り留めました。
しかしながら、臓器の損傷も大きく、医師には「怪我が治ってもスポーツはできないかも知れない」と告げられました。

本気でやっている以上、アスリートたるもの怪我がつきもの。バイクの場合、時速200キロを越えて高速で走る車体に、生身で乗ります。ひとたび事故を起こすと大怪我につながる可能性があるのです。

 

「情熱はあるのか?」父の言葉にバイクへの本気度を確かなものに

大事故から奇跡の生還を遂げた璃空さん、しかし璃空さんは「もうバイクに乗ることはできないかも知れない」という不安につきまとわれることとなりました。
ところが、ここで腐らないのが璃空さんのすごいところ。一念発起し、バイクに明け暮れ全く手を付けていなかった「勉強」に着手することにしました。持ち前の集中力が功を奏しやり始めるとのめり込み、一時は1日10時間以上を勉強に費やすことも。特に数学に面白さを感じ、遅れていた部分を取り戻したそうです。
バイク復帰も全く諦めたわけではありませんでした。
体調に留意しながら、家族とともに調整を続け、コース走行復帰を果たしたのです。
驚くべきことに、生死を彷徨う大事故からわずか半年後のことでした。

しかし、さすがの璃空さんも、事故・怪我への代償を拭い去ることは容易ではありませんでした。
通常、大きな転倒事故の後はスピードを出すことや、バイクに乗ること自体に恐怖感を抱くようになってしまうのですが、璃空さんの場合はその恐怖心は生まれず、別の問題が発生してしまったそうです。
それは「身体の成長」でした。

レースで勝利するレベルでバイクを操作するには、アクセル、ブレーキ、クラッチ等の装置をミリ単位でコントロールする必要があるそうですが、それに加えて重心位置をどこに置くか、この”荷重操作”が非常に重要だそうです。この荷重操作は、直線で体を伏せている時、コーナー手前でブレーキをする時、バイクを倒しこむ時、コーナーをぐるりと曲がっている時、次のコーナーに向かって加速している時など、自分の体の重心をどこに、どのように持っていくかによって大きく変わるそうで、体の位置を数ミリ単位でコントロールすることもあるそうです。ダイナミックにコーナーを駆け抜けていくバイクですが、選手たちがバイクの上でそれほど繊細な作業をしているとは、すごく驚かされました。


▲レースウィーク中のピット内の様子(モビリティリゾートもてぎロードコース)
 

▲ピットから出ていく時の様子(モビリティリゾートもてぎロードコース)

レースへの復帰を果たしたものの、その精密作業が必要とされる状況で、中学2年生~3年生という成長期も伴い、璃空さんの身長は療養中の半年間で5cm以上伸びてしまいました。その結果、荷重バランスが完全に崩れ、思うようなライディングができず成績が振るわない状況が続きます。

モータースポーツというのは、マシンの用意、メカニック・エンジニアへの整備依頼、そして練習用コースのレンタル、遠征費など……非常にコストのかかるものです。
璃空さんは中学生ながら「お金も人も動いているのに自分は成績を出せていない」、その現実を認識し、一時は”引退”も頭に浮かんだそうです。
そんな中、⽗親は璃空さんに問いかけました。
「情熱はあるのか?」
今現在の結果云々ではなく、バイクをやりたい、誰よりも早く走りたい、勝ちたい、という気持ちがあるのか自問自答せよ、と。
今一度、自分の気持ちに向き合った璃空さん。出てきた答えはやはり「バイクに乗りたい」でした。
誰よりも速く走り、勝ちを収めること。その喜びは何物にも代えがたいことに自ら辿りついたのです。


▲2022筑波ロードレース選手権J-GP3クラス レース中の様子 #93松島璃空選手(写真提供:kumaphoto1)

その後は、勝つため、トレーニングにもより力を入れました。
家族と相談してコース走行の回数を増やし、車載カメラと外からのカメラで自身のライディングフォームを撮影して現状と改善点を研究。バイクに乗れない晴れた日はロードバイク(自転車)を1日100キロ~200キロ漕ぎ、雨の日はプールで4時間泳ぐ。もちろん、毎日の筋トレやストレッチも欠かせません。
同世代のライダーとともに、お互い励まし合いながらトレーニングに臨むようにもなりました。


▲ロードコースを速く走るために、ときにはオフロード(ダートコース)での練習も取り入れているのだそう

 

「コケないで速く走る」をモットーに!2022年シーズンは好調

最後に璃空さんに今後の夢を聞いてみました。
現時点での目標は「2024年、全日本ロードレース選手権チャンピオンになること。そしていずれは世界に。」
チームとしては「コケないで速く走る」をモットーに掲げているそうです。
その理由は「コケると怪我する、マシンが壊れる、お金もかかる」から。
怪我をすると、体が治るのにも時間がかかります。
リアルな話ですが、壊れたマシンの修繕には手間とコストがかかります。
そのために、璃空さん自身が気を付けていることを聞くと「自分の限界を知り、スピードを出し過ぎて曲がれないということがないようにする」「気を抜いてコケてしまいがちな試合前の練習走行も気を抜かない」と教えてくれました。

最後に璃空さんなりに感じているバイクの魅力を聞きました。
「エンジンの音がいい。スピードを上げて速く走れるのも楽しい」

若干15歳ながら、バイクの魅力を自分なりに心得、日々練習に励む璃空さん。
これからの活躍に注目です!


▲2022筑波ロードレース選手権J-GP3クラス第2戦のレースで優勝を果たし、喜びの笑顔を見せる松島璃空選手(写真提供:市川貴志)

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次戦は、2022年8月20日(土)に開催される筑波ロードレース選手権J-GP3クラス第3戦にエントリーしています!

 


▲表彰式でのシャンパンファイトの様子(写真提供:kumaphoto1)

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2022年の実績

もてきロードレース選手権J-GP3クラス
第1戦 予選1位 決勝1位
第2戦 予選1位 決勝1位
第3戦 予選1位 決勝1位

筑波ロードレース選手権J-GP3クラス
第1戦 予選1位 決勝1位
第2戦 予選1位 決勝1位

菅生ロードレース選手権J-GP3クラス
第1戦 予選1位 決勝1位

鈴鹿サンデーロードレース選手権J-GP3クラス
第5戦 予選1位 決勝2位
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記事の執筆者プロフィール

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所沢なび編集部 ライター
2010年8月に所沢プロペ商店街に立地します商業施設「所沢サンプラザ」のメンバーにて設立しました。2011年3月の東日本大震災を機に、正確な情報発信の大切さを改めて実感し、本格的に活動を開始しました。

頂いた応援メッセージ

  1. 頑張ってください応援しています。バイクもかっこいいしライダーとして表彰台にのぼれるように応援しています。いつかモトJPにでてください。ファンとして応援しています。

  2. 若いのにすごいですね!

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