NYのパンデミックを目の当たりにした画家・大岩オスカールさんが描く、光を目指す妖怪たち【角川武蔵野ミュージアム】

NYのパンデミックを目の当たりにした画家・大岩オスカールさんが描く、光を目指す妖怪たち【角川武蔵野ミュージアム】

パンデミックのニューヨークを生き抜いた画家の言葉に耳を傾ける

2020年3月、ニューヨークで初めの新型コロナウイルス感染者が確認されました。それから、それは10人になり、100人になり、1,000人、10,000人……日を追うごとに増えていきました。
その様子を、現地で目の当たりにし、恐怖を感じながらも自身のアパートメントで制作を続けた日系ブラジル人画家・大岩オスカールさん。
現在角川武蔵野ミュージアムにて大岩さんの作品が展示されています。いままさに新型コロナウイルスの脅威を感じている我々はどうすべきなのでしょうか? 来日中の大岩さんにお話を伺いました。

2021年9月取材:前原麻世


 

混濁した状況の中で光を目指す「妖怪」たち

大岩オスカールさんは、1965年生まれの日系ブラジル移民2世。大学生だった20歳の頃初来日し(実はその頃、清瀬にも住んだことがあり西武池袋線を使っていたとか!)、その後1991年から日本に11年、2002年から現在までアメリカで暮らし、制作活動を行っている現代美術家です。
大岩オスカール
▲Gardening (Manhattan), 2002, oil on canvas, 227 x 555 cm . The National Museum of Modern Art, Tokyo collection

大岩オスカール
▲Day meets Night, 2020, oil on canvas, 222 x 227 cm

近年では2019年に金沢21世紀美術館での個展《大岩オスカール 光をめざす旅》が好評を博し、15万人の来場者を数えました。

2020年3~6月、新型コロナウイルスによる感染症がニューヨークで蔓延するさなか、自ら「隔離生活」を敢行していた大岩さん。その際に「プロユースのタブレットを使って」描いた1作品をベースに「コロナ時代のアマビエ」として制作したドローイング作品が現在角川武蔵野ミュージアムにて展示されています。


▲大岩オスカール《The Sun and 10 Ghosts(太陽と10匹の妖怪)》

海なのか、宇宙なのか、判然としない混濁のなかにいるのは10匹の妖怪。彼らは、絵の中心に描かれた「光」を目指して泳いでます。

よく見ると妖怪は、新型コロナウイルスの感染が広がった国々の形になっています。


▲左の舌を出している魚のような妖怪はブラジル、右の鳥のような妖怪は中国を表している。


▲日本も魚のような妖怪として描かれている。ちょっとしたかわいさも感じられる。インドは深海魚のようにも……。

「光はみんなが求めているワクチンとも言えるでしょう」と大岩さん。

さて、大岩さんが目の当たりにしたニューヨークの惨状から1年以上経った2021年の夏、日本の所沢で子育てをしている筆者の周りでは、ここ1~2か月で知り合いが”かかった”という話があったり、子どもの通う園では陽性者が出たために「学級閉鎖」というかたちが取られることなどが起こりました。
そんな訳で、筆者はいままさに新型コロナウイルスの脅威を感じています。
果たして、そのような状況で、私たちはどうあるべきなのか。
一足先に新型コロナウイルスの恐怖と向き合わざるを得なかった大岩さんとお話することで、何かヒントがもらえるのではないかと思い、インタビューを進めました。

 

「家族を守るため、できることは全部やって」

パンデミック下の当時を振り返り、「ニューヨークは恐ろしかった。ピークの時は一週間で死者が1万人を数えた」と話す大岩さん。
はじめ10人だった感染者、掛け算でどんどん増えていき、10万人、100万人という数字が見えてくると大岩さんも「今度は自分の番ではないか」という不安に襲われました。

その頃、時の為政者はこの新型コロナウイルス感染症を「ただの風邪」と言い、政策を怠りました。
国単位で行うべき出入国の制限も遅れました。


▲骨の奥に内臓が見える摩訶不思議な妖怪は、アメリカ。

大岩さんも、大岩さんの家族もスーパー以外どこにも行かず、出かけるときはマスク・手袋をして、買ったものには消毒して、という生活を送ります。
自分の家族を守るため、できることは全部やるしかない。1年くらいなるべく人と会わない日を送った」のだそうです。

そして現在、あれから1年以上経ち、ここ1か月ほど日本に滞在している大岩さん。
「ニューヨークの一番ひどい状態を見ているから、あの頃に比べたら日本はマシ。比べれば、の話だけど。ただし、決して良くはないから気を付けることが必要」

 

「子育て中のお父さん、お母さん、守りに入り過ぎないで」

家族との過ごし方について、大岩さんは「(コロナ禍という)不安の中でも、お父さんお母さんは守りに入り過ぎないでほしい」とも話します。
大岩さんも3人(一番上のお子さんは23歳、下のお子さんは15歳)の子育てを経験、しかも、9.11の半年後、米国が戦争を始めた不安定な時期にお子さんを連れて渡米した経験をお持ちです。

▲大岩オスカールさん

米国が不安な時期に子育てをしたことを振り返り、大岩さんは話を続けてくれました。

「ちゃんとした学校に入れたい、ちゃんとした医療を受けさせたい、というのは誰しも思うことだろうけど、安心安全を第一にしていたら何もできなくなる。自分も不安な時期に米国に来たけど、結果的に良かったのではないかと思っている。
日本では子育ては女性、という風潮があるけど、お母さんも何か仕事なりライフワークなりできることをしてほしい。子どもが大きくなったら子育てという仕事はなくなってしまうから。そして、お父さんへのメッセージは『お母さんを手伝って』ください」

父としての大岩さんは、「子どもと過ごした時間は長かった」のだそう。
お子さんが10代になってからは自身の出張にお子さんを1人ずつ連れて行き、大岩さんが色々な国の人と、様々な言語で仕事をする風景を見せました。また現場を撮影する役目を与えることもありました。

不安の中でも、家族や自分の身を守るためにできることはやる。また、子育てに翻弄され過ぎず自分の軸を持って歩みを進めること。
筆者も大岩さんから、子育て世代の一人としてメッセージを頂きました。
 

角川武蔵野ミュージアムは世界でも見ることがない「変わった建物」

アーティストとして世界を渡り歩いて来た大岩さんの目に、「角川武蔵野ミュージアム」はどのように映るのでしょうか?
「自然の石を使ってあれだけ大きいものを作るというのは、素材の迫力がある。世界的に見ても変わった建物、コストかかってますよね。パネルみたいなものを使った方がずっと安いと思う」


▲素材の迫力がスゴイ!でもコストが気になる……。 ©角川武蔵野ミュージアム

アーティストであり、大学では建築を学んでいたという経歴のある大岩さんならではの言葉ですね。
コストが気になるというのは、素人の筆者も同感です!

しかしながら、「世界的に見ても変わった建物」と評して頂いた角川武蔵野ミュージアム、ぜひ所沢市内・埼玉県内から、そして全国・世界から、多くの人に見に来てもらえたらなと、改めて筆者も思いました。

 
大岩オスカールさんの作品《The Sun and 10 Ghosts(太陽と10匹の妖怪)》は角川武蔵野ミュージアム2Fエントランスホールにて展示中
チケット不要です。詳細は、角川武蔵野ミュージアム公式サイトでご確認を。
いまなら、大岩さんの作品と共に、荒神明香さん作品《reflectwo》、川島秀明さん作品《SHI》も鑑賞できます。
 

■施設詳細


【角川武蔵野ミュージアム】
〒359-0023
住所埼玉県所沢市東所沢和田3-31-3
【アクセス】JR武蔵野線「東所沢駅」から徒歩10分
▶角川武蔵野ミュージアム・公式サイト https://kadcul.com/
▶《コロナ時代のアマビエ》プロジェクト https://kadcul.com/event/29 
 
 

■大岩オスカールさん情報


2021年10月17日まで、東京都江東区にある「東京都現代美術館」でも大岩さんの作品が観覧できます。
「MOTコレクション Journals 日々、記す」にて、大岩さんが隔離生活中に空想の旅を描いたドローイングによる新作版画20点と、オリンピックに関わる3都市(リオ・デ・ジャネイロ、東京、パリ)をテーマにした計20mを超える大作《オリンピアの神:ゼウス》(いずれも特別出品)を展示中。
《The Sun and 10 Ghosts(太陽と10匹の妖怪)》のベースになった作品も展示されています。
▶詳しくは下記URLをご覧下さい
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/mot-collection-210717/



記事の執筆者プロフィール

所沢なび編集部 ライター
2010年8月に所沢プロペ商店街に立地します商業施設「所沢サンプラザ」のメンバーにて設立しました。2011年3月の東日本大震災を機に、正確な情報発信の大切さを改めて実感し、本格的に活動を開始しました。

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