「見るトコろ!感じるトコろ!茜衣がいくトコろ!」いいトコ発信ところざわ Vol.3


連載第2弾「人形づくりの街ところざわ」
~倉片人形さんに伺わせていただきました~

所沢は人形づくりの街ってご存知でしたか。所沢市内にはかつてたくさんの人形店があったそうです。現在ではこの伝統を受け継ぐ人形店は市内に5軒とのこと。その中の1軒が今回伺わせていただきました倉片人形さんです。

もうすぐひな祭り。

毎年雛人形を飾るご家庭で育ったという宗像茜衣さん、愛称「むなぞー」さんと株式会社倉片人形 代表取締役 倉片順司様にお話を伺ってきました。

取材日:2020年2月1日 ボランティアライターじん

通称浦所バイパス、国道463号を所沢インターチェンジ方向から所沢市街地に向かってくると航空公園の手前左側に大きなトコろんが飾られているお店が目につきます。ここが倉片人形さんです。トコろんのお殿様とお姫様の存在感が抜群です。

今回、たくさんのお話を倉片社長から伺いました。倉片社長はおっしゃいました。
「人形を売ることも大事だが、日本の伝統を啓発することも同じように大事」
むなぞーも僕も知らなかったことがいっぱいでした。倉片社長の想いを所沢のみなさまにお届けできたらと思います。

まずは所沢伝統工芸のPRのために作成されたトコろんの雛人形について、製作の苦労をいろいろ聞かせてくださいました。トコろんのお姉さんであるむなぞーは真剣に耳を傾けます。伝統工芸としての雛人形づくりと、所沢のマスコットキャラクターとしてのイメージとの融合、そのバランスについて試行錯誤を繰り返したそうです。

こちらが現在のちいさなトコろんのお殿様とお姫様、もうすぐ新しいものがお目見えする予定です。



続いて、雛人形について教えていだきました。

「『予祝』という言葉があります。これはその字のとおり、予め祝うということです。雛人形を飾ることには、将来のよい結果を願って、予め祝うという意味が込められています。雛人形は『将来幸せな結婚ができますように』との願いをこめて、それをお子様のうちから毎年お祝いするためものです。」

お殿様は将来の旦那さま。


お姫様は将来のお子様がお嫁に行くときの姿を表しています。


また雛人形には厄を移すという意味もあるそうです。
お子様が触ることにより、人形に厄が移されていきます。紙の人形を川に流して厄を払う「流し雛」がその由来といわれており、その習慣が現在でも残っている地域もあります。そして更に遡るとなんと「土偶」にたどり着きます。土偶の多くは女性であってしかも妊婦を表すものが多いといわれており、厄を代わりにうけるために作られたとの説があります。遥か古代から、子どもが健やかに育つように祈るという親心は日本人のなかに受け継がれてきたものだと感じました。

ここでひとつ。童謡「うれしいひなまつり」の歌詞の中に「お内裏様とお雛様」とでてきますが、これは間違いとのことです。「内裏」は、天皇陛下、皇后陛下の私的区域のことで、御所とも言われます。よって、正しくは「お殿様・お姫様」と呼ぶそうです。また「赤いお顔の右大臣」は「左大臣」の間違いであるということも教えていただきました。


雛人形の意味について教えていただきました。全体で結婚式を表しております。金屏風があるのは象徴的ですね。

一番上の段は、未来の旦那様とお子様ご自身の姿です。
二番目の段は、三人官女です。巫女さんで結婚式の証人です。
三番目の段の五人囃子は、能楽の演奏をしています。
四番目の段は、警護を司る随身です。弓と矢を持っています。婚礼が無事に行われるように守っております。
五番目の段は、仕丁です。表情は泣き、怒り、笑いを表しています。これは20代、40代、60代を象徴する表情です。
六・七番目の段は、嫁入り道具など嫁入りの様子を表します。将来立派に道具を揃えられるようにという意味がこめられています。


「華燭の典」という言葉があります。これは結婚式を表していますが、燭台に明かりを灯す宴という意味があります。お飾りの両側にある雪洞(ぼんぼり)ですが、これは燭台にカバーをつけたものです。これは昔の婚礼は亥の刻(夜9時から11時)に行われたことに由来します。


ちょっと話は逸れますが、雛飾りの中心にある五人囃子の5という数字について面白いお話を伺いました。
3×3の魔法陣。1~9の数字を3列に並べて、縦横斜めの数字の合計が一致するように並べるというものなのですが、これは5を真ん中にもってこないと絶対に成立しません。

5人家族は幸せになると言われています。食器セットは5個セットが多いそうです。
5は幸せと中心の代名詞なのですね。


数字にまつわるお話をもう一つ、七五三の意味について教えてくださいました。
三歳:髪置き 髪を伸ばしてもいいですよ。
五歳:袴着 袴を着てもいいですよ。
七歳:帯解き 着物を着てもいいですよ。
男の子は三歳と五歳、女の子は三歳と七歳を祝うのが正しいそうです。
7歳まで生きられることが普通ではなかった時代、「7歳までは神の子」と呼ばれていました。幼児期を無事に健やかに育っていけるよう祈りを込めての行事だったそうです。

「その七歳というのは、『自分でお雛様を飾りなさいの歳』なんです。」

七歳からは一人でお雛様を飾ることにより、人形に触れ厄を移すことができるようになる。つまり厄を移すことを自分自身でできるようになるということです。飾らないと予祝ができない。行儀作法を覚える歳、お子様の成長と合わせて深い意味が込められています。
ちなみに「雛祭りが終わったらすぐにお雛様を片付けないとお嫁に行き遅れる」というのは、お子様への躾の部分が大きいそうです。きちんと片付けられる大人になれなくなるよっていう習慣づけの意味合いが強いようです。

「人は7歳までは誰かに守ってもらわないと生きられない」

そのために雛人形に守ってもらう。その先の人生を自分の力で生きていく第一歩にその飾り付けを自分自身で行う歳。7歳という年にはいろいろと意味があることがわかりました。


なお、壊すのを恐れてお子様に「お姫様をさわっちゃダメ!」って言うのは間違いとのこと。触らなければ厄は移らないから、しっかりと触った方がいいそうです。壊れやすいから丁寧に扱うことをお母さんから教えてあげてほしい。そしてしっかりと飾り付けと片づけをお子様自身が行うことが大事とのことでした。


雛人形は、「先祖代々受け継がれた家宝」という感じで、祖母から母へ、母から子どもへと受け継ぐイメージが強いのではないかと思います。しかし先程説明したように、お姫様は将来の自分の姿を表すものです。ですから伝来の雛飾りのお殿様・お姫様はすでに素敵な結婚を果たしたおじいちゃん・おばあちゃん、お父さん・お母さんを表しています。そのため、お姫様は「並べて飾る」ということが大事です。「こちらのお姫様はおばあちゃん、こちらのお姫様はおかあさん、こちらのお姫様はあなた」と並べることにより、人形に対する愛着、家族の絆が深まるとのことでした。

 ご先祖様や親に感謝する心を育てる、そんな意味もあるのですね。

ここでむなぞーが焦りだしました。
「家にあるお姫様はお母さんから受け継いだもの…。わたしお嫁に行けないかも…。」


時代は令和に変わり、昨年即位の礼が行われました。その時の天皇陛下、皇后陛下のお姿をご覧になった方も多いかと思います。

こちらの立ち雛様はそのお姿を元に制作されたものになります。


雛人形の並べ方ですが、向かって左にお殿様、右にお姫様、この形が一般的です。実は位階の視点からいうと逆が正しいそうです。また女性の着物の合わせから考えると、胸元が見えないようにするための意味では逆が正しいとのこと。今でも京都周辺では逆に飾るそうです。この並びになったのは、海外との交流がはじまり、その習慣に合わせてきたことが影響しているそうです。雛人形だけではなく日本全体がこうなったということであり、いい悪いではなく時代の流れというものだと教えていただきました。

こちらは人形職人さんがご自身で考えた雛人形を展示してあります。人形職人さんの感性によってつくられたオリジナリティあふれる雛人形が飾られております。

こちらは市松人形です。親族の子どもに雛人形を贈りたいけど贈れない。そのような場合には、気持ちをこめて市松人形を贈るという方法があります。


市松人形の髪が伸びる…なんて心霊話がありますが、その噂のきっかけになった出来事と根拠についても教えていただきました。ここでは詳しく説明しませんが、人間の欲による作り話だということです。全くそんなことはありませんのでご安心を。

上段は現代風に髪形をアレンジした愛ちゃん人形です。愛ちゃんの由来は「愛子さま」とのこと。「茜衣ちゃん」じゃなかったね。親族の結びつきを人形がつないでいく。素敵な習慣だと思いました。

雛人形以外にも、興味深いお話をたくさん伺いました。


破魔弓や羽子板は何故お正月に飾るのか。それは「鬼が大晦日から正月の間にやってくるため」です。鬼が子どもを連れて行ってしまわないように守る意味があります。鬼は弓の音を嫌うと言われています。羽子板は羽をついて厄を払うと言われており、同じようにお子様を守ってもらう意味を込めて飾ります。
鬼といえば、鬼は外~!の豆まきをする「節分」。では何故「節分」は2月3日なのか。これは2月3日が旧暦の12月31日にあたるからになります。大晦日にやってくる鬼を豆で退治する意味で行われます。節分の翌日は立春、旧暦の元旦と聞くと納得ですね。

こんな人形も飾ってありました。桃太郎が飛行機に乗ってる!さすが日本航空発祥の地ところざわ!



「ところで鬼って何だかわかる?」
怖いものっていうのはわかるけれど、何っていわれると答えに困りました。

「鬼は牛と虎の合いの子なんです。」
確かに。鬼って牛の角を持ち、虎の毛皮をまとっています。

「これは、実は『丑寅の方角』つまり方位学でいう鬼門の方向を表しているんです。」
丑寅、つまり牛と虎ですね。

「では、なんで桃太郎は犬と猿とキジをお供にしたかわかる?」
えっ。言われてみればなんで?もっと強そうな動物の方がいいかも。

「これは丑寅の逆方向が戌申酉だからなんです。」
鬼門である丑寅方向の逆側にあるのが、裏鬼門と呼ばれる戌(犬)、申(猿)、酉(鳥)になります。桃太郎は鬼と戦うために裏鬼門の動物たちを連れていったんですね。

桃太郎にそんな意味があったなんて。
「京都御所の鬼門の方向には比叡山があって京都を守っているんです。いろいろと日本の伝承や伝統には深い意味があって調べていくと奥深くて楽しいですよ。」

所沢の地における人形作りについてもお話を伺いました。
所沢で現在雛人形に関わっているのは5軒とのことです。古くは人形職人がたくさん所沢に集まっていたそうです。写真は敷地内にあります雛稲荷様です。


倉片人形さんでは敷地内に道路が建設されるといったことを乗り越え、時代の流れに柔軟に対応しつつ、現在を迎えているそうです。「人形作りは男の仕事」という先入観を先代様が取り払って女性の職人を採用し、現在では人形職人全員が女性とのことです。


倉片人形さんでは、製造だけでなく、小売りに力をいれることにより、顧客のニーズを確実につかみ、人形に活かすことを心がけているそうです。冒頭に紹介したトコろんの雛人形もその考えの延長線上にあります。
今後更なる少子化が進みます。子どもの数が減ることに対する危惧は?と聞かれたら倉片社長はこう答えるそうです。
「生まれた子どもの半数しか人形を購入していない。だったら購入率を上げればいいだけのこと。だから子どもが減ることは全く怖くない。」


「私たちはものを売ることも大事ですが、日本古来の伝統を伝えていくことも大事なんです。」
啓発活動について力を入れ、ひなまつりについての絵本を2000年に(一社)日本人形協会埼玉支部の力を借りてつくった倉片社長。協会から県内の保育園・幼稚園に無料配布が行われたそうです。この絵本「モモちゃんのひなまつり」では、ひなまつりについてお子様でもわかりやすく書かれています。


市内の小学校の社会科見学も積極的に受け入れていらっしゃいます。倉片社長が小学生だった時に社会科見学先が自分の家だったなんて笑い話も。


今回雛人形、ひなまつり、またいろいろな伝統にまつわることまで、たくさんのことを教えていただきました。


むなぞーさん。今回取材させていただいての感想をお願いします。

「たまらなく、かわいらしい空間にお邪魔させてもらえて幸せでした! 小さい頃から雛祭りって女の子のためのお祭りって教わってきました。 雛人形並べて『かわいいね!きれいだね!』っていうお祭りなんだって思っていたんですよ。でも今回倉片人形さんでお話を伺って、『全然違うじゃないかい!!』ってなりました。 人形の意味を知れば知るほど周りの人の思いが凝縮されている雛人形への愛着が! 昔ながらの事って知らずにやっていること多いけれど、知らない事はもったいないって思いました!」

その通りだね。全く同感です。

むなぞーの感想にもありましたが、今回たくさんのお話を聞かせていただき、とても勉強になりました。伝統を受けついで、またそれをわかりやすく伝えていくことの大事さを知りました。少しでもこの記事でそのお手伝いができたら嬉しく思います。店内に並ぶたくさんの人形がどうやって作られているのか、興味がたくさん湧いてきました。もしよろしければ、改めて人形作りも取材させていただきたいと思いました。

大変お忙しい時期に取材にご協力いただきました倉片社長、この度は誠に有難うございました。



取材先:株式会社倉片人形 公式ホームページはこちら
協力:一般社団法人 所沢市まちづくり観光協会
モデル:宗像茜衣 公式ホームページはこちら



記事の執筆者プロフィール

じん Jin
じん Jin
写真を撮ったり、ランニングしたり、サイクリングしたりしながら、自然の中で過ごす時間を大事にしています。 すぐそばに素敵な自然が残されてる所沢が大好きです。 少しでも所沢の魅力がお伝えできるようにがんばります。

頂いた応援メッセージ

  1. Great content! Super high-quality! Keep it up! 🙂

  2. とってもいい記事で
    たくさんのひとに読んでもらいたいですね😊✨

  3. ①san
    I’m writer of this article. Thank you for the comment.
    I will keep trying my best to write more articles.

  4. ②さん
    筆者のじんです。コメントありがとうございます。
    嬉しいです。今回たくさんの貴重なお話を伺うことができました。
    多くの方に読んでいただきたいです。

  5. 現在、春日部市に住んでいるのですが人形と言ったらお隣の岩槻の印象があったんですけど、所沢でも人形作りの伝統があったんですね!
    所沢の航空専門学校に通っていたのに知りませんでした(^_^;)
    また次回のレポートも楽しみにしています♬

                                   byスツーカ

  6. スツーカさま
    筆者のじんです。コメントありがとうございます。
    埼玉で人形というと、岩槻、鴻巣が有名ですが、所沢も実は人形の街なんです。是非雛人形を見た際には、以前通っていらした所沢へ思いを馳せていただければと思います。

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