段ボール2個で札幌から所沢へ「とにかくお客さんに話しかけて共通点を探す」繁盛店メーカーは元人見知り・中村勇希さん【世界食堂】


令和の所沢に出現した「世界食堂」

令和の所沢に出現した大衆「世界食堂」、美味しいごはんが食べられる「食堂」としてはもちろん、自らを「人間交差点」を担う場所として位置付ける。
フロアを引き受けるのは西所沢の「DRAFT STAND」や裏トコ通りの「DRAFT LABO」でカウンターに立った中村勇希さんだ。

2022年1月取材 前原麻世

 

西所沢の立ち飲み屋がクラフトビールの敷地面積あたりの消費量全国1位に

西所沢にかつて、多くのリピーターに愛され、テレビ番組にも取り上げられた人気のお店があった。
たった8席、クラフトビールを出す立ち飲み屋「DRAFT STAND」である。


▲西所沢駅近の横丁にしとこキッチンにあった「DRAFT STAND」


▲DRAFT STANDのFacebook投稿画像より。2019年9月に放送された「じゅん散歩」放映画像

人気のほどは数字でもうかがい知ることができた。メーカーによる敷地面積当たりの消費量ランキングでは全国1位を獲得。
駅近で、質の高い玄人好みのクラフトビールを飲める立ち飲み屋として、電車に乗って数駅、通ってくれるお客さんもいた。

その店の店長を勤めていたのが今回お話を伺う中村勇希さんだ。
消費量全国1位はともかく、中村さんにあの頃のことを伺うと「いま思えば、すごいよかった。いいお客さん来てくれていましたね」と懐かしそうに話してくれた。
2019年1月にオープン、着実にファンを増やしていく。
ビールの味・品質もさることながら、たった8席の立ち飲み屋、店員とお客さんの距離が近いことは必至で、中村さんの店づくりもリピーターを増やす一因であったろうことは間違いない。

 

「所沢へ来ないか?」の一言で段ボール2箱と関東に

中村さんが所沢にやって来たのは2018年の秋、27歳の時だ。当時、段ボール2箱で所沢に引っ越してきたという。
それまで、中村さんは北海道・札幌の立ち飲み屋で店長として働いていた。社員は10名程度、その一人一人が一つの店舗で店長を任される形態だった。つまり、店長の力量がその店の全てを左右する。
そのシステムは功を奏していたのか、当時全店が繁盛店だったという。
「とにかくお客さんに楽しんでもらう」のが店のモットー、だからこそ中村さんも「こんなに店員に話しかけられる店はないんじゃないか」というくらいお客さんに話しかける日々を送った。
「もともと人見知りだったんですよ。でも途中で開花した。自分に会いに来てくれるお客さんがいるって、すっごい自己肯定感が上がる」
中村さんがこの仕事に就く前は、大卒後に就職した食品メーカーの研究室で商品開発や品質管理に携わっていた。研究職から立ち飲み屋の店長に……、180度の方向転換ともいえるだろう。
立ち飲み屋にはご両親が来ることもあったそうで、中村さんが家で見せる姿とは違う“店長ぶり”に目を丸くしたという。
「カウンターを挟むと全然違うんですよね。」

そんな中村さんに次なる分岐点がやってくる。それが、学生時代の友人の「所沢へ来ないか?」という誘いだった。
所沢でビールの旨さにこだわった店を経営する学生時代の友人がいた。彼が札幌へ遊びに来た時、「これから店舗を増やしていくにあたり新店を任せられないか」と持ち掛けたのだ。
「関東に出るタイミングは今しかないな」、そう思った中村さんは所沢に来ることを決意する。

 

毎日が合コンの幹事

北海道・札幌で自ら店長として立ち飲み屋を繁盛店にした中村さん、所沢の店でもゼロから始めてリピーターを増やしメーカーからも消費量を表彰される店になるまでに至った。

筆者は素朴な疑問として、立ち飲み屋の店長としてやっていくコツを聞いてみた。
「とにかくお客さん同士の共通点を探しますね」
はじめは、中村さんがお客さんと1対1で話し、お客さんから色々な話を聞く。それを、全てのお客さんと繰り返せば、中村さんがハブになり、どの人とどの人に共通点があるかで、お客さん同士をつなげていくことができる。結果、中村さんがお客さんの会話の中に入りっぱなしでなくとも、お客さん同士で盛り上がるような場を作ることができる。

また、お客さんとコミュニケーションを取り、一人一人のお客さんを理解しているからこそ、新規のお客さんと常連のお客さんをつなげて新規のお客さんの緊張をほぐすなど、お客さんを”うまく使って”場を取り仕切る。
「僕が何もしなくても、お客さん同士が盛り上がってくれればそれでいいんです。そしたらドリンクの減りも見える」と屈託なく話す。
誤解を恐れずに言えば”毎日が合コンの幹事”に近いのかもしれない。


▲DRAFT STANDのFacebook投稿画像より

お客さんを大事にしたいからこそ、泥酔したお客さんには「帰るか、お会計するか選んで」と時に厳しい対応も。後日、「あの時止めてくれてありがとう」と言われたこともあるという。
結果的に「安心して飲みに来てくれる」ことにつながる。

 

「『世界食堂』は食事中心のお店。ナイトタイムとしてのお客さんはゆっくりついて来る」

中村さんが接客業に携わる者としての持論は、「楽しい場所に人は足を運ぶ」。

―「美味しい」店はたくさんあるけど、「楽しい」場所は特別で、自然と足が向くのではないか。 
―「美味しかった」より「楽しかった」感覚の方が、お客さんの心に残るのではないか

それは、素人同然の料理レベルでも社員全員が店長として立ち飲み屋で料理を提供、繁盛店を作り上げていた札幌での経験がベースにある。


▲世界食堂でスタッフとミーティングする中村さん

転じて「『世界食堂』は食事中心の店作り、自分がこれまでやってきた”会話とお酒特化型”ではない」と話す。
だからこそ、まずは料理を楽しんでもらえる店であることを発信していくという。

その過程で、飲み屋としてのお客さん、ナイトタイムとしてのお客さんというのは、ゆっくりついて来るのではないか、と。

実は中村さん自身は、これから新天地に足を踏み出すという。
研究職から立ち飲み屋さんに。札幌から関東に。いくつかの分岐点を経て、次は異業種への転職を志す。
しかしこれまで縁のあった、所沢での人との関わりは絶やすつもりはない。
きっと、新たな立ち位置で「世界食堂」ともつながり続けるのであろう。

 

■店舗詳細


住所:〒359-1124 埼玉県所沢市東住吉7−9 ティーイングビル 201
営業時間:
ランチタイム11:30〜15:00
ディナータイム17:30〜21:00
定休日:火曜
▶世界食堂・公式Instagram
https://www.instagram.com/sekaishokudo/?hl=ja



記事の執筆者プロフィール

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所沢なび編集部 ライター
2010年8月に所沢プロペ商店街に立地します商業施設「所沢サンプラザ」のメンバーにて設立しました。2011年3月の東日本大震災を機に、正確な情報発信の大切さを改めて実感し、本格的に活動を開始しました。

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