新所沢パルコが40年の歴史に幕「ありがとう!さようなら!大好き!」雨の中涙のフィナーレ
新所沢パルコが40年の歴史に幕
2月29日の夜、閉店セレモニー開催
1983年6月に開業し、新所沢駅前の商業施設として40年に亘り営業を続けてきた新所沢パルコが2月29日を以て閉店しました。同日20時からは1階ガレリアにて閉店セレモニーが行われました。
2024年2月29日 取材・文 前原麻世
「今日もたくさんの人が買いに来てくれた」店長による閉店のあいさつ
司会者のあいさつで始まった閉店セレモニー。
この日も館内でおもちゃやレトログッズの展示を行っていた森永卓郎さんのトークイベントで過去に司会を務めたことや、プライベートでご自身も買い物をした経験を踏まえ「楽しい場所がなくなることに寂しい思いをしています」と話しました。
▲閉店セレモニーが始まりました
▲閉店まで約1カ月行われた、森永卓郎さんミニミュージアム展示
次いで、パルコのキャラクター「パルコアラ」と共に山本仁也店長ら新所沢PARCO運営スタッフが登壇しました。
▲パルコアラと共に登壇する山本仁也店長らスタッフ
山本仁也店長は「昭和・平成・令和と時代を越えて営業した新所沢パルコ。今日もたくさんの方が買い物に来てくれました。館内のメッセージボードには寂しい、悲しい、でも楽しかった・ありがとう、忘れない、大好き、とびっくりするくらい多くの方がコメントを残してくださりました。テナントの皆さんも我々も同じ気持ちです」と話しました。
また、新所沢パルコ閉店に伴い市民からWEBで寄せられたエピソードの中の一つを披露しました。
『40年前、私は女子高生。初デートはパルコの映画館でした。同級生や友達とばったり会わないかハラハラドキドキの一日でした。今では孫もおり、三世代で利用しています。ありがとう、お世話になりました。』
▲多くの方がコメントを残したメッセージボード
閉店までの1年間は、別れを惜しみつつこの場所をめいっぱい楽しもうと様々な企画が仕掛けられたにぎやかな1年でもありました。
地元のイベントオーガナイザーやゆかりのあるアーティストと新所沢パルコがコラボレーションする。読者の皆さんのなかにも参加したものや、記憶に残っているものがあるかも知れません。
そのようなオーガナイザーやアーティストといった協力者に対しても山本店長は「チャーミングな方々」と評し、その心意気に感謝していると伝えました。
▲幼少期から新所沢パルコに親しんでいたイラストレーターのニッパシさんによる40周年キービジュアル(右)と、新所沢出身の写真家・山本佳代子さん撮影写真による閉店キービジュアル(左)。
さいごに、山本さんはこのように述べ新所沢パルコはその幕を下ろしました。
「我々はこの街からいなくなります。しかし、この街には素敵な方々がたくさんいらっしゃいます。この先の10年・20年・30年後、そうした人たちが中心になってこの街がどんどん元気に発展していく。そんな未来を祈念しています。また、信じております。
そろそろ、お別れです。さよならです」
「何をするでもなく来られる場所」「チケットぴあに野宿で行列」皆さんの思い出は
閉店セレモニーを見届けた市民の皆さんはにはどんな思い出があり、どのような想いを抱いているのでしょうか?
お話を伺いました。
セレモニーを最前列で観覧していたお二人は、閉店間際のガレリア2階で名残惜しそうに、というよりももはや憔悴しきった様子で佇んでいました。
「パルコは、日常の延長線上にあって何も用がなくても来られる場所でした。仕事で辛いことがあっても、何かないかな、と本屋さんに立ち寄る。するといつの間にか力がもらえて明日も頑張ろう、って思える。パルコは、黙っていても支えてくれる、そんな存在でした。
四角いビルではないのも良かった。キラキラもギラギラもしていない、ベッドタウンにちょうどいい優しい建物。使い込まれた感じも良かった。」
▲悲痛な表情でセレモニーを見守っていたお二人が名残惜しそうにガレリアに佇んでいた
こちらの女性(写真右)は、新所沢パルコとともに子ども時代~青春時代を過ごしたそうです。
「電車で一駅、自転車なら30分ほど来られるので、パルコは子どもの頃から身近な存在でした。レッツシネパークではドラえもんやタイタニックを鑑賞。島村楽器ではドラムを習ったこともありました。
昔はチケットぴあがあったので、ミスチルのチケットを取るために徹夜で並んだこともありました」
▲子どもから大人になるまで、様々なシーンを新所沢パルコで過ごしたという女性(右)
所沢市民にはおなじみ、タワシおじさんも最後の瞬間を見届けに登場しました。
「大きな声では言えないですが、所沢中学時代は学校帰りに寄り道して、パルコのゲームセンターで遊びました。
当時人気だったガンダムのプラモデルを購入することも。高校時代~大人になってからはデートスポットとしても……。」
▲タワシおじさんの青春も新所沢パルコと共にあったとか……
日中行われた「しんとこパルコさよならフェス」に出演したとこPANのメンバーさんや、新所沢パルコにゆかりのある方々がパルコとの別れを惜しむ姿にも出会いました。
徒歩圏内に住む森下知佳子さんは「演奏中に泣いてしまった。パルコがなくなったら明日からどうすればいいの……?」と寂しさを訴えました。
近隣にてビル・TAKENAKAHILLS(タケナカヒルズ)を経営する松岡伸江さんはこの1年「とこロコマルシェ」というかたちでパルコからさよならイベントの主催も任されており「こういう商業施設でまちの人にイベントをやらせてくれるっていうのはなかなかないと思う」と話しました。
現在名古屋在住、アパレル業を経営するえつこさんは数年前まで所沢に住んでおり、パルコ内でポップアップイベントを行ったのだそう。その恩を感じ、日帰りでも閉店を見届けようとやって来たとのこと。「パルコの皆さんの心が広く、ポップアップではやりたいようにやらせてもらいました!」
▲とこPANメンバーさんや新所沢パルコにゆかりのある方々。森下知佳子さん(右から1番目)、松岡伸江さん(右から2番目)、えつこさん(右から3番目)
▲「しんとこパルコさよならフェス」のステージで最後の記念撮影を行うとこPAN
いち商業施設の枠にとどまらなかった新所沢パルコの魅力
今回閉店に伴い、色々な方にお話を伺い、新所沢パルコの存在感を改めて認識しました。単なる商業施設としての枠にとどまらず、市民の心のよりどころとなっていたのですね。
山本店長の残した言葉にあった「この街にいる素敵な方々」とともに、新所沢が元気に発展していけるよう……私たちも見守り、ともに楽しめたらと思います!
▲「新所沢パルコ内のスタバがお気にいりの場所だった」という狭山市出身イラストレーター澤田昂明さんによる最後のスケッチ