現代アートをくぐる「ネオ風鈴」で涼む【風の回廊】9月1日(予定)まで開催!|ところざわサクラタウン
所沢市内のクリエーターによる納涼スポットがところざわサクラタウンに出現中
2020年に開業、今年4度目の夏を迎えたところざわサクラタウン。
ただいま、地域の方々や観光で来られた方など、ところざわサクラタウンを訪れる方に「涼」を感じてほしいと、納涼スポット「風の回廊」が出現中です。
プロデューサーの角田テルノさん、モニュメントや風鈴を企画制作したアーティスト井口雄介さん、植物ディスプレイを行った宮田賢史さんにお話を伺いました。
▲風の回廊にて、左から角田テルノさん、井口雄介さん、宮田賢史さん
風そよぐとき 耳を澄ませば聞こえる「ネオ風鈴」の音
2024年7月、ところざわサクラタウン内の神社・武蔵野坐令和神社近くに木製のモニュメント「風の回廊」が出現しました。それはトンネルのようで、目にしたら思わず通り抜けたくなる様相を呈しています。くぐり抜けるうちに風が吹くと「リン、リーン」という心地よい音が耳に入り、無数の風鈴が取り付けられていることに気付きます。よくよく見ると風鈴は棒状の金属が互いに当たることで音を発しており、さながら「ネオ風鈴」といったところです。ところどころグリーンも据えられ、涼感を視覚的にさり気なく演出しています。
「風の回廊」があることで、初めてサクラタウンに訪れた方にも、何度か来ている方にも、サクラタウンで過ごした夏の一日が印象に残るものになりそうです。
▲訪れた人は回廊をくぐりぬけ、思い思いに過ごしている。
▲ところざわサクラタウンで行われたイベントに来場したコスプレイヤーさん達が撮影スポットとして利用していた。影が市松模様になっているところにも注目!
プロデュースしたのは所沢の神社で行われる夏のお祭り「所澤神明宵の市」や、所沢駅近くの飲食店「世界食堂」などを手がける角田テルノさん率いる株式会社RPGworks。テルノさんは昨冬「Look back I’llrumination」をプロデュースし、ここところざわサクラタウンではさほど間を置かずしての登場となります。
▲「風の回廊」にぶら下がるメタリックな「ネオ風鈴」
KADOKAWAの想いに応え「地域とアートが交わる納涼スポット」を
「照り返しの強い、ところざわサクラタウンで、五感で涼を感じることができる、例えば風鈴を使った空間演出をできないか」というのがKADOKAWAからテルノさんへのオーダー。依頼を咀嚼しながらテルノさんは「昨今巷で風鈴をぶら下げた納涼スポットはよく見かける。唯一無二の場所であるところざわサクラタウンで同じようなものを展開するのはつまらない」と感じました。
「地域と文化が交差する世にも珍しい半公共空間でできることは何だろう。散歩ついでに来る方、アニメやアートを目的にところざわサクラタウンへ足を運んでくれた方々が面白みを感じてくれて、かつふっと気持ちが涼しげになる時間を過ごせるようなものってなんなのだろう」
そう、ここは所沢市民にとって賑わいが生まれる場所であり、また角川武蔵野ミュージアムでアートを鑑賞する方やKADOKAWAが発信するアニメやあらゆる創作コンテンツのファンも数多く訪れます。
そんな場所で納涼スポットを展開するなら「ここにしかないもの、ここでしか体験できないことを提供したい」とテルノさんは考えたのです。
「さて、誰と組もうか……。」
プロジェクトを進めるにあたり、真っ先にテルノさんが思い浮かべたのが現代アート分野で活躍する所沢在住のアーティスト・井口雄介さんでした。
▲アーティスト・井口雄介さん
井口さんは建築学科を出たのち院では彫刻の研鑽を積んだ異色の経歴の持ち主。国内各所で著名なアートエキシビジョンに出品する実力派です。かねてより、RPGworksが主宰するシェアスペースSAVE AREAの工作室を利用し、「世界食堂」では什器の制作を担当、テルノさんにとって信頼の置けるアーティストの一人でした。
もちろん井口さんは快諾、ところざわサクラタウンに納涼スポットを生み出すプロジェクトが走り出したのです。
また清涼感を演出する植物を扱う担当として、外構や植物ディスプレイのプランニング・施工で活躍するFUKU+SOU・宮田賢史さんが抜擢されました。
▲植物ディスプレイ担当・宮田賢史さん
「回廊」は長ければ長いほどワクワクする!
井口さんがプロジェクトに参加し、テルノさんとともに納涼スポットをどんなものにするかアイデアを出し合いました。
二人が辿り着いたのは、神事「夏越しの大祓」で使われる「茅の輪」から着想を得た円性を表現するかたちでした。
「茅の輪」にはくぐることで穢れを落とすといういわれがあります。
所沢で活動するテルノさんに依頼があった理由の一つ「地域住民にところざわサクラタウンやアートにいかにして親しんでもらうか」という観点からも、回廊状になっているアート作品であれば、躊躇なく人々が通過し、体感できるという利点があります。
▲アイデアを出し合う中でテルノさんが描いたラフ画
▲井口さんが作成した図面のひとつ
企画立案する中で、井口さんがこだわったのはモニュメント自体の「長さ」です。「回廊を通る人に奥行きを感じさせるだけの充分な長さがほしい。できるだけ長くしたい。長ければ長いほどいい」というのが井口さんの考えでした。
▲施工中のようす。株式会社RPGworksのメンバーも参加。
実は施工が進むうち、なんと井口さんから「当初の計画より2メートルほど長くしたい」という要望が上がったそうです。
写真を撮るにしても、ここをくぐり抜けるにしても、奥行きがあった方がわくわくする。それは素人の筆者にも感覚的に理解できる気がします。
▲横から見た「風の回廊」
井口さんから回廊延伸の提案が上がった時、制作費は「正直ショートしかけている段階」(テルノさん談)だったそうです。井口さんが本気でいいものを作ろうとしている、その心意気に胸を打たれ、GO、となりました。
「ネオ風鈴」ひらめきはアトリエに転がっていたアルミ素材 制作WSに子ども達参加
今回初の試みとなったアルミ素材の風鈴作成にも井口さんの「ミラクル」が詰まっています。もとより、ガラスは割れる恐れがあり使用NG、既成の南部風鈴を使用する案が出ていました。しかし、面白みに欠けますし、コスト面からも敬遠したいとメンバーは考えていました。
そんな中、井口さんはある日アトリエに転がるアルミパイプの切れ端を目にします。思わず手に取り、切れ端どうしで叩いてみると、なかなかいい音が出ます。井口さんは「これだ!」とひらめきました。「このパイプの穴に糸を通し幾つかつなげて吊るせば、風に吹かれて音が出るのではないだろうか。」
かくしてメタリックな「ネオ風鈴」が誕生しました!
さらに、このアルミパイプは、着色することで独特の表情を呈し、オリジナリティある作品になります。
風の回廊のコンセプトである「地域と文化が交差する空間」での催しに相応しく、ワークショップ形式で地域の子ども達と風鈴を制作する展開を生み出すことにもつながりました。
▲マルシェイベントや世界食堂等にて風鈴制作ワークショップが行われ子ども達の手により約150個の風鈴が作られた
ちなみに、このアルミパイプ、なぜアトリエに転がっていたかというと……井口さんと共にアトリエを使用するゴウさんのものでした。(ゴウさんは所沢内外のイベントに出現する恐竜でお馴染みのクリエイター)このアルミパイプは恐竜の骨組みの素材として使っているものだそうです。
★実は施工後、風鈴がなかなか鳴らないという「エラー」も発生したのだとか……。さらなるエピソードはwebラジオ「あぐぬく所沢」の「テルとパニエルのザザツ団 vol.1」でも公開中です。
ローズマリーのいい香りも! 五感で涼を楽しんで
もう一つ、この風の回廊を特徴付けているもの、それはグリーンが据えられていることです。
選出はFUKU+SOUの宮田賢史さん。宮田さんは、所沢生まれ、所沢育ち。外構のガーデンプランニング・施工に携わる傍ら「地元をもっとカッコよくしたら、もっと好きになれるかも」という思いを胸に、2022年より市内のイベントに出店。
また、テルノさんとは昨年より「所澤神明宵の市」にて植物装飾を任されている間柄です。
「風の回廊」では6種類の植物を用い、「涼」を演出しました。特に注目してほしいのはハーブの一種「ローズマリー」、また一風変わった花火型の植物「リプサリス」です。
▲宮田さんが指す植物は花火型の「リプサリス」
-風が吹いた瞬間にふわっと香る清涼感のある香りが訪れた人に届きますように。
-夏の風物詩・花火を思わせる植物で目にも楽しく。
「植物を使った装飾ができる人ってそんなにいない。風の回廊で宮田さんの装飾は、オムライスで言えばケチャップをかけた後のパセリ。植物がアクセントになっている」とはテルノさんの談。
「風の回廊」ではところどころに植物を配し、耳、目、嗅覚で楽しめる納涼スポットになりました。
▲企画・制作・施工で苦楽を共にした3人
納涼スポット「風の回廊」が体感できるのは9月1日(予定)まで!
アートを体感できるところざわサクラタウンならではの納涼スポット「風の回廊」の展示は9月1日までを予定しています。
見て、通り抜けて、音を聞いて、香りを楽しむ……。 是非足を運んで、皆さん思い思いに「涼」に触れてください!
■イベント概要
ところざわサクラタウン 夏の納涼ガーデン
ところざわサクラタウンに、目や耳や香りで涼を感じることができるスポット「夏の納涼ガーデン」が期間限定で登場。
夏の納涼ガーデンは今回ご紹介した「wind’s corridor~風の回廊~」のほか、「大鳥居ミストシャワー」「納涼花手水」の3つから構成。地元所沢や埼玉県を中心に活躍するアーティストや団体と創った、五感で涼を感じながら癒しのひとときを過ごすことができるスペースです。地域の憩いの場として、思い出や記念に残るフォトスポットとして、夏のところざわサクラタウンをお楽しみください。
開催期間:2024年7月19日〜2024年9月1日(予定)
場所:埼玉県所沢市東所沢和田三丁目31番地3
アクセス:JR武蔵野線 東所沢駅徒歩10分
https://tokorozawa-sakuratown.com/event/summergarden2024.html
プロフィール
角田テルノ 株式会社RPGworks
1984年埼玉県所沢市生まれ。所沢市街地での玩具屋店主を経て、2020年、株式会社RPGworks設立。2023年より株式会社KADOKAWAのプロジェクトに参画し「奇天烈縁日」・「Look back I’llrumination」を開催。
https://tellno.wixsite.com/tellnomad
井口 雄介
現代美術作家
2008年に武蔵野美術大学造形学部建築学科を卒業後、2010年に武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻彫刻コースを修了。2013年に武蔵野美術大学大学院博士後期課程作品制作研究領域を修了、博士号(造形)を取得。
2022年 六本木アートナイト2022参加
2023年 アートドキュメント2023井口雄介展 Site-Sight-Scape(金津創作の森美術館)
ANEMOI 井口雄介展(入善町下山芸術の森発電所美術館)
https://yusukeiguchi.com/
宮田賢史 FUKU+SOU
造園家
2022年よりFUKU+SOUとして植栽/作庭/ランドスケープの領域で活動。
四季やストーリー性を大事にした植栽設計をコンセプトに個人住宅、店舗施設、パブリック空間の設計施工を手掛け、庭から街づくりまで活動は多岐に渡る。
2022年 所沢市内にて民間運営する公共トイレ「インフラスタンド」の植栽を担当。
2023年~2024年 「所澤神明宵の市」会場内植物装飾