「郷土愛の醸成でまちの活性化を」三上博史さん


所沢の仕掛人。第12弾

昨年(2018年)は「スーパーボランティア」と呼ばれる大分県のボランティア活動家に全国の注目が集まりましたが、埼玉県所沢市にも「歴史の伝承人」と呼ばれる‶まちの活性化〟に尽力しているスーパーボランティアがいます。三上博史さん82歳。
所沢の古きを知って今のまちの魅力を感じさせる〝温故知新〟的な不思議なパワーで、子どもから大人まで〝郷土愛〟を芽生えさせ、広げる地道な活動をおこなっています。今回の「所沢の仕掛人。」では、三上さんのたくさんの活動の中から、今年開催の「フランス航空教育団来日100周年事業」への想いや今後のまちづくりへの願いについて伺いました。

所沢の仕掛人。第12弾 三上博史さん
所沢のスーパーボランティア 歴史の伝承人の想い

所沢の情報を発信する「所沢なび」では、「所沢の仕掛人。」をシリーズでお届けします。
このシリーズでは、「所沢を元気にする活動をしている人」にクローズアップしてご紹介していきます。

取材:2019年3月22日 成田知栄子


▲三上博史さん まちぞうの企画展「フランス航空教育団来日100周年記念 所沢飛行場物語展」にて

 

 

1.三上博史さんのご紹介

【三上博史さんのプロフィール】


▲企画展の展示準備をする三上さん

◆昭和12年(1937年)5月1日生まれ

◆所沢市内旧町の商家の五代目、両親ともに旧町生まれの生粋の「所沢っ子」

◆現在の所沢市立所沢小学校の卒業生で、高校は東京都立大泉高等学校に進学。明治大学商学部商学科卒業。

◆メンズファッション関連会社勤務 主に販促商品企画。

◆定年退職後、郷土史に興味を持ち自分で研究し、収集しはじめる。学んだ資料をもとに自分の思い出話を絡めた町の歴史を紹介する「博史の昭和青春グラフィティー」「故郷・所沢散歩」所沢飛行場物語」などのホームページを立ち上げる。

◆20年ほど前から、所沢のまちの活性化のための取り組みを始め、現在、中心市街地活性化拠点「野老澤町造商店=まちぞう」でボランティスタッフとして活動。企画展示を担当。

◆「所沢の歴史の伝承人」と呼ばれ、町歩きのガイド、市民大学の講師、市内小中学校・PTA・町内会・団体などから依頼を受け、歴史勉強会の講師を行っている。

◆所沢観光コンシェルジュ(所沢ガイド)の養成にも携わり、これまで100名以上のガイドの養成指導をしている。


▲三上さんの高校卒業時の写真

▲クイーンエリザベス2号の商品企画も担当されていました

メンズファッションの企画会社では、高級ブランド品や百貨店ブランドの企画を行っていました。現役時代に培った、多くの人にわかりやすく、魅せるようなディスプレイセンスは、現在のまちぞう(野老澤町造商店)の歴史の企画展示で発揮されています。

 
▲小中学校やPTA、町内会、所沢市などから依頼を受け、歴史講座の講師を担当する三上さん

 


2.インタビュー
(1)フランス航空教育団来日100周年記念イベントについて

-今年の「フランス航空教育団来日100周年」事業にもいろいろ関わっていらっしゃいますね?

三上さん:
所沢の歴史については、定年退職後からずっと調べて資料を収集しています。所沢は「航空発祥の地」ですから、所沢の歴史は日本の航空史と密接に関わっているんですね。

今年は、フォール大佐が率いたフランス航空教育団の一行が来日して100周年に当たる年で、所沢市の方で何か記念事業をやろうと実行委員会を立ち上げたんです。私もその実行委員会のメンバーなんですよ。

また、国の方でもフランス航空教育団の功績を残すための記念事業を行うということで、 国の実行委員会も立ち上がり、所沢市と国の実行委員会とが協力していろいろな事業を企画しています。


▲2018年11月3日の入間航空祭のパネル展示
 
▲昨年(2018年)入間航空祭の取材中、パネル展示の解説員をしている三上さんに遭遇

 

-昨年の「入間航空祭」のパネル展でも三上さんがフランス航空教育団の解説委員をされていましたね。

三上さん:
実行委員会でフォール大佐の偉業を広く伝えるために、集まった資料を元に19枚の展示パネルを作成したんです。パネル展示は、航空自衛隊の基地祭や航空博物館などで飛行機に関わるイベントがあるたびに、「フランス航空教育団 来日100周年のパネル展」と題して出展して、実行委員会のメンバーが解説役を担当するんですよ。私は昨年から「入間航空祭」や「エア・フェスタ浜松」など何か所かに出向き務めさせていただきました。みんな興味を持って観てくださいますね。



▲所沢航空記念公園内に設置されている「フォール大佐像」(2019年3月撮影)

▲昭和3年に建立したフォール大佐胸像(三上博史さんの資料より まちぞう所蔵)
航空教育団の氏名が刻まれています

-4月7日の所沢の記念事業でフォール大佐の除幕式について教えてください。

三上さん:
所沢航空公園にあるフォール大佐の胸像の正面プレートを、建立した当初のような航空教育団62名の名前が刻まれたものに変えます(上の2枚の写真を参照)。それが今回の式典のメインです。

もともとフォール大佐の胸像は、陸軍航空本部長の井上幾太郎大将によって、昭和3年(1928年)に所沢陸軍飛行学校敷地内に建立したといわれているんですが、そこには62名の名前が刻んであったそうです。

ご存知の通り、太平洋戦争中に金属供出があり、フォール大佐の銅像も例外なく台座部分を残して壊してしまったそうです。その後、昭和57年(1982年)に現在の航空公園の場所に再建されて、今のようなプレートが付けられました。

今回100周年ということで、フランス側が全員の名前が分かれば当初のような教育団の氏名を刻んだプレートを作ってくれることになり、航空教育団の氏名を調査して確認するのに奔走しました。


▲フォール大佐の胸像について解説する三上さん

私が集めた膨大な資料を探してみると、当初の銅像の写真があったんです。それは私の同級生に御幸町で写真館をやっていた喜多川方暢くんという人がいるんですけれど、喜多川くんのお父さんが撮った写真だったんんですね。喜多川くんのお父さん喜多川秀男さんは特別に陸軍から撮影を許可されたカメラマンだったのです。

でも、その写真はぼんやりとしていてはっきりとわからない部分もあったので、もっと調べる必要があり探していると、横浜国立大学の西堀昭教授が出している写真集の中に鮮明に氏名まで写っている当初のフォール大佐像がありました。

そこで、以前から航空資料集めでお付き合いのあった日本航空史の第一人者でもある村岡正明先生に相談すると、村岡先生がフランスまでに行って調べた資料と合わせて調べて62名の名前が全て判明しました。


▲三上さんと村岡先生(右)

そして、それを所沢市の方に持っていくと、所沢市の方にも以前、フランス大使館からもらっていた名前があったんですね。市の資料との照合する作業を行い、間違いないということで、フランス側に当時来日した航空教育団のメンバーの名前が刻まれたプレートを作ってもらえることになったのです。


▲航空教育団が来日した時の記念撮影(三上博史さんの資料より まちぞう所蔵)

▲航空教育団の氏名リスト

-大変な作業でしたね。4月7日の式典では、そのプレートがお披露目されるんですね。

三上さん:
はい。式典では、そんな確認作業を踏んだ新プレートの除幕式を行います。その式典には、その航空教育団の子孫の方も何人か来日して参列することになっています。日本側からの参列者として、漫画家の松本零士さんも参列します。

また、航空自衛隊の音楽隊や航空自衛隊のT-4による祝賀飛行もあり、盛大に行われます。

※式典のスケジュールについては、「航空自衛隊の祝賀飛行も!航空公園でイベント盛りだくさん!」のページでご確認を

 

-松本零士さんは、どのような関係があるのですか?

三上さん:
松本零士さんのお父さんが、陸軍航空部隊のパイロットでフランス航空教育団から指導を受けたそうなんですよ。松本さんのお父さんは、所沢飛行場にいたこともあって、その時の写真もあります。

 

-フォール大佐が所沢の町に来た当時は、町の対応はどうだったのでしょうか?

 三上さん:
それはもう、町あげての大歓迎ムードだったよね。当時の新聞記事が資料として残っているけれど、フランス航空教育団を迎えるために、子どもたちは学校でフランス国歌を習って、飛行機新道に並んで、歌を合唱して出迎えたんですよ。

この記述(下の新聞コピー写真)から歓迎ぶりの大きさはわかるよね。私は、今回の100周年イベントで当時の歓迎の再現みたいなこともして欲しかったなと思いますよ。所沢は「航空発祥の地」というPR活動にもなったはずです。


▲まちぞうの企画展「所沢飛行場物語展」展示より。2019年4月24日まで開催

(2)アンリ・ファルマン機を広く一般公開に

-これまでの資料収集や所沢史の研究から、今回の記念事業でやりたかったこともあるのではないですか?

三上さん:
「アンリ・ファルマン機」って知っていますよね?所沢飛行場で最初に飛んだ飛行機なんだけれど、今は入間基地の修武台記念館に保管されているので、それを所沢航空発祥記念館で今回展示できたら良かったよね。

今回は展示の手配ができませんでしたが、近い将来、より多くの人に見てもらえるような展示の仕方にして欲しいというのが、かねてからの私の願いです。

結局は、国の自衛隊所有物だから「借りる」ということになるので、それなりの予算などの確保が必要だけれど、もし、それが実現できたら所沢のシンボルが増えるので、是非、実現させてほしいと考えています。

アンリ・ファルマン機は、フランスがヨーロッパのいろいろな国に輸出していましたが、残っているのはなんと日本だけ。しかもエンジンも操縦席もそのまま残っています。そんな貴重なものは、もっと多くの人に見てもらえるようにすべきだと思うんですよ。所沢は‶航空発祥の地〟なんだから、アンリ・ファルマン機が所沢航空発祥記念館で展示できるようになれば、きっと全国や世界に所沢のPRにもつながりますよ。


▲アンリ・ファルマン機 三上博史さん資料より(まちぞう所蔵)
「明治44年4月5日は日本初の所沢飛行場(現航空記念公園)で徳川好敏大尉が操縦するアンリファルマン機で初飛行をした日です」三上さん解説より

(3)今年83歳。インターネットやSNSも自由自在

-三上さんは、所沢の歴史をまとめたホームページも作り、講演会の資料づくりパワーポイントもご自身でパソコンを使って作られているんですね?!80を過ぎてもホームページ作成やパソコンでの資料作り、SNSを使いこなされているのは素敵ですね。

三上さん:
私、今度、元号が「平成」から「令和」に代わる日(2019年5月1日)に、83歳になりますよ(笑)。

ホームページもパワーポイントもすべて我流ですよ。私が仕事を定年退職してから、郷土史を調べたり資料を集めたりしているうちに、ホームページで作ってまとめてみようと思ってWindows98を買って作業をはじめました。

その頃は、所沢の歴史をまとめているようなホームページが見当たらなかったので、その必要性も感じてはじめたということがありますね。それもまだホームページビルダーがなかったころですよ。1つ1つタグを打ち込んで作りました。ホームページビルダーができてからは、制作も少し楽になりましたね。でも最近は、facebookで情報発信していますが、ホームページのほうは全く更新していないんです。

※ホームページはこちら⇒目次のページ

(4)郷土愛を育てたい。~旧町市街地を文化のまちに~

-三上さんが歴史の資料をデータ化してくれたおかげで、多くの人が所沢の歴史に関心をもってくれるきっかけになっていると思います。

三上さん:
所沢のまち歩きガイドや歴史の講師を頼まれますが、所沢に住んでいる人は、土地っ子が少ないので、みんなリタイアした後に、自分のまちのことに興味を持たれる人が多いです。

若いママさんたちも所沢の歴史を知りたがっている人は多いですね。子どもはもちろん、大人でも所沢の歴史を知ることで郷土愛が芽生えるんですよ。郷土愛があると、暮らしにも誇りが持て所沢の生活も楽しくなると思います。

子どもたちからも、たくさんのお礼のメッセージが届いています


▲所沢市内の小学校で歴史についてお話をしたところ、子どもたちからたくさんのお礼と感想のメッセージが届きました
所沢の歴史の話は子どもたちの心に響いています

▲三上さんには所沢市内各小学校から歴史のお話をする教室開催依頼があり、身近な場所の知らない歴史に子どもたちの目が輝きます

 

こんなところにも、三上さんの集めた資料が活用されています!


▲まちぞうの向かいの「所沢図書館分館」の入り口に三上さん自作のパネル資料が掲示されています
野老澤町造商店(まちぞう)のボランティアスタッフとして活動する三上さんは、至る所で、郷土愛を育む種をまいています

▲現在はファルマン交差点(通称:ねぎし交差点)が都市開発で工事中ですが
防音パネルに一工夫。工事の殺風景だった防音壁に三上さんが集めた資料が「ファルマン交差点」の年表として展示されています。
「景観が良くないのはしばらくの我慢」と思っていた住民たちから、「歴史で彩られることにより文化的な風景になった!」と喜びの声も聞かれます。

-これから、まちづくりで望んでいることはどんなことですか?

三上さん:
この旧町市街地を〝文化施設のあるまち〟にしたいですね。この旧町市街地に美術館や博物館、生涯学習センターのような施設がある「学びのまち」になったらいいなと思っているんです。子どもたちも大人も自分のまちの歴史や文化・芸術に興味が持てる環境づくりも必要なんじゃないかな。

西所沢駅、所沢駅、航空公園駅のどの駅からもこの旧市役所があった場所までは徒歩10‐15分程度ですから、この町に文化施設があると、みんな「まち歩き」を楽しむようになり、健康づくりや、まちの活性化にもつながると思いますよ。


(5)健康の秘けつとは?

-三上さんの健康の秘けつはなんだと思われますか?

 

三上さん:
何でしょうね。週に3回はジムのプールで運動していますし、まちぞうまでは、自転車で通っています。食べ物の好き嫌いはないし、アルコールも付き合い程度しか飲まないってことかな。

何よりも、まちぞうでのボランティア活動は楽しいですね。ここにいるといろいろな人が来てくれて、いろいろな年齢の人との会話が楽しめます。町のことを考え、町の人と話ができる。もしかするとそれが健康維持に一番役立っているのかもしれませんね。

土曜日と日曜日は、基本的に私がまちぞうにいる日ですので、是非、お越しください。展示のご案内しますよ。


▲小学生が「雛まつり」の調べ学習でまちぞうを訪ね三上さんの話をきいていました

▲三上さんの活動に賛同、応援する市民も多く、骨とう品でいい値段がつくような値打ち物も、所沢の文化資料にとまちぞうに持ち込む人もいます。写真は、寿町の元老舗の榎本酒店さんのご主人の寄付。自宅の半纏と町内の消防団の半纏と刺し子の消防服。

 

まちぞうでは、三上博史さんが企画・展示した「フランス航空教育団来日100周年記念 所沢飛行場物語展」が4月24日(水)まで開催されています。三上さんがまちぞうに在館の時は、解説付きで展示が楽しめます。

↓クリックするとPDF画像になります

取材:2019年3月22日 成田知栄子


※三上博史さんへのお問い合わせは、野老澤町造商店(まちぞう)まで

所在地 :  埼玉県所沢市元町21番18号
電話番号 :  (04)2928-1453
営業時間 :  午前10時~午後6時
定休日 :  毎週木曜日



記事の執筆者プロフィール

成田 知栄子 Chieko Narita
成田 知栄子 Chieko Narita
ラジオ、テレビでの取材活動を経てフリーになり、ライター活動12年目を迎えました。情報は「人と人とを繋げ、生活をより豊かにする」をポリシーに、所沢の情報を近隣の地域に、そして全国へとお届けして、地域活性化につながればと思っています。ちなみに、所沢住民になって24年、趣味はバイオリン演奏、好きなタレントは「トコろん」です。よろしくお願いします(2019年1月)。

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