「見るトコろ!感じるトコろ!茜衣がいくトコろ!」いいトコ発信ところざわ Vol.8
連載第7弾「人形づくりの街ところざわ(その2)」
~倉片人形さんの工房を見学させていただきました~
所沢は人形づくりの街、2月に公開させていただきましたいいトコ発信ところざわVol.3でそう紹介させていただきました。前回記事はこちら(https://tokorozawanavi.com/news-jin20200214/)。
今回、再びむなぞーこと宗像茜衣さんと倉片人形さんを訪問させていただき、株式会社倉片人形 代表取締役 倉片順司様にお話を伺い、その人形づくりを見学させていただきました。
一体一体手作りの雛人形、いったいどのようにつくられているのでしょうか。
取材日:2020年9月24日 ボランティアライターじん
「雛人形をつくる職人さん」と聞いてどんな姿を想像しますか?
おそらく、男性、しかもちょっとがんこな感じ、どちらかというと年配の方、そんなイメージを持たれる方が多いのではないでしょうか。僕もそうでした。実際はどうなのでしょう。早速工房に足を踏み入れてみたいと思います。
実は倉片人形の職人さん、全員が女性です。
「男性の職人っていつからいないんだっけ?」と倉片社長。具体的な年数を忘れてしまうくらいずっと女性だけで制作しているそうです。
職人さんを採用するときの基準は「趣味が手芸であること」。見学させていただき、なるほどと納得しました。では制作の様子をみていきたいと思います。
生地の裁断の様子です。ここは倉片社長自ら実践してくださいました。
切った生地の模様が人形のどの部分になるのか想像しながら裁断するそうです。3つに裁断して大きな部分は服本体、小さな部分2つは袖になります。
後程、この生地を使用した雛人形が登場しますので、この生地をよく覚えておいてくださいね。
布を貼り、枠を縫っていく感じで生地は作成されています。刺繍を重ねていくイメージとのことです。繊細で美しいです。
仕入れた生地はいろいろな種類のものが保管されていました。
生地の厚みはそのままだとボテボテした感じになるので、たたいて薄くしていきます。
人形のもととなる型を見せていただきました。
ウレタンなどを使うと、腕が勝手に戻ってしまうので使えないそうです。中の材質は果物などの包装につかうものをイメージするとそれに近いとのことです。
ここに人形の衣装などを重ねていきます。
1枚1枚丁寧に仕上げていきます。
だんだん形が見えてきました。
ミシンを使った縫い付けの作業も見せていただきました。繊細な作業です。
部屋を移動して、身体部の最終工程を見せていただきました。
生活様式や住宅事情の変化などいろいろな要因により、雛人形は変化しているそうです。特に小型化が進んでいますが、それは時代のニーズなので対処せざるを得ないとのこと。手間が減る訳ではないのに手が入りづらくなるなどの困難がありますが、職人さんもそれに対応しているとのことです。ニーズが変われば、誰かがそれに対応したものをつくる、それは常に自分たちでありたいと倉片社長は話してくださいました。
後は頭をつければ完成です。ここでなんと倉片社長より「やってみますか?」とのご提案をいただきました。むなぞーさん即答です。「やらせてください!」
まずは職人さんのお手本です。
教えていただいたところでまずはお姫様から挑戦です。
続いてお殿様に挑戦です。
実はちょっと職人さんに直していただきました。ちょっとでも曲がると印象や表情が変わってしまうとのこと。まっすぐにはめなくてはならない、単純なようで奥の深い作業です。
むなぞー作の雛人形、完成です。
完成した雛人形が並んでいるところに移動しました。職人さん一人あたり、一日に10~15体程度制作しているそうです。
即位の礼での天皇陛下、皇后陛下のお姿を元に制作された立ち雛様もありました。
むなぞーさんお気に入りのジャニーズ風お殿様です。顔つきも時代とともに変化しているそうです。また選ばれる着物の色の好みについても変わってきているとのことです。
このお殿様よくご覧になってください。何か思い出しませんか?
そうです。先程裁断した生地と同じものを使って制作されております。この仕上がりをイメージして裁断していた訳ですね。
人形の髪の毛は人毛から絹へ、そしてナイロンへと変わってきました。使用する糊が虫のえさになりやすいという事情もあり、時代の流れとともに変化してきたそうです。
住宅事情の変化により、雛人形を飾る場所が家から失われてきているそうです。収納スペースを確保するために、壁がなくなってきていることも影響しているとことです。
また以前は単体販売されていたオプション(ぼんぼりや屏風、お花など)がセット化され、一族が買い足して贈っていくという習慣がすたれ、「雛人形は代々受け継いでいくもの」との認識に変化していってしまったとのことです。本来雛人形とはお殿様は未来の結婚相手、お姫様は自分自身を表すものです。詳しくは前回記事をご参照ください。
そうした中でも倉片人形さんでは、新しいものにチャレンジを続けているとのことです。取り組みのひとつである「トコろんのおひなさま」を最後にご紹介します。
こちらは、先日第3回「所沢ブランド特産品」にも認定されております。トコろんのぬいぐるみに本日見学してきた実際に雛人形に使われている衣装を着せたものです。
トコろんとコラボーレーションすることにより、所沢での雛人形に親しんでもらいたいとの思いも込められています。
使われているトコろんのぬいぐるみは今回新たにつくられたものです。発売以来毎日のようにお求めになる方が訪れているそうです。
写真後方にございますのぼり付きのトコろんは「トコろん復興支援プロジェクト」として1体につき500円が所沢市に寄付されました。
多くの方に購入され取材当日、残りの在庫はこの写真に写っております10体でした。でもご安心ください。10月初旬には大量に再入荷するそうです(トコろん復興支援プロジェクトは終了となっております)。店頭だけでなくインターネットでの購入も可能です。
「トコろんのおひなさま」につきましては、発売までもうしばらくお待ちください。
むなぞーさん。今回取材させていただいての感想をお願いします。
「1度取材に伺ってから約半年ぶり。作業場って男っぽいイメージがすごく強くて、なんだか難しい場所を見学するんだなって… でも実際に入ってみたら、部屋全体は明るいし、綺麗な布とともに女性の方々が仕事していて、すごく落ち着くっていうのが第一印象でした!職人系の仕事だと、『サイズなんて変えなくたっていいんだ』とか言いそうなのに、ちゃんと時代に合わせて小さい雛人形作っていて、昔のものと並べてみると全くサイズ違うし…サイズ変わっても繊細さは変わらない。 この凄さを本当に多くの人に知ってもらいたいって思いました!
雛人形を置くお部屋と相談しないとなぁ。」
むなぞーさん、感想ありがとうございました。僕らの事前のイメージと全く違った工房の様子がお伝えできていたら幸いです。
前回の取材に引き続き、雛人形や日本の伝統について教えていただいた倉片社長、誠に有難うございました。
「人形づくりの街ところざわ」その伝統を受け継いでいらっしゃる職人さんの姿を目の当たりにして、これからもずっと所沢の人形作りはこの場所で続いていくのだろうと思いました。時代の流れとともに、人々に受け継がれて、これからもずっとこの街が人形づくりとともにあることを願っております。
取材先:株式会社倉片人形 公式ホームページはこちら(https://k-doll.co.jp/)
協力:一般社団法人 所沢市まちづくり観光協会
モデル:宗像茜衣(SOLUNA Music&Creative所属)