航空記念公園の樹林にやってくる野鳥(番外冬編)


航空記念公園に生える樹木には過去に植栽された歴史の変遷が垣間見られます。江戸時代に開発された新田を起点に、明治44年に始まった帝国陸軍所沢飛行場整備、昭和21年には戦後の米軍摂取による米軍所沢通信基地整備、昭和47年には米軍からの所沢通信基地返還後に新たに公園の準備が始まり、昭和53年からの航空記念公園事業までの過程で、明治から昭和にかけて植栽されてきた国内外産の樹木があり、多様な緑地環境ができています。今回は、豊富な樹林のある航空記念公園で見られる野鳥5種をご紹介します。

永石文明

 

▲航空記念公園の池と樹林

樹林間を動き回る混群(こんぐん)

冬になると、シジュウカラやエナガなどの俗にカラ類と呼ばれる鳥たちが日中、数羽の群れをつくり、枝から枝へ飛び回る姿が見られます。異なる種で構成された群れは混群と呼ばれています。群れの中で、ひときわ賑やかな声はジュリジュリジュリと鳴くエナガ。白と黒に色分けされた小さな体で、梢の冬芽につくカイガラムシやアブラムシなどを採餌しています。ツーピーツーピーとかジュクジュクジュクと鳴くのはシジュウカラ。枝につく昆虫の蛹やクモの卵のうなどを採餌しています。幹にしがみつくように止まってギギッギギッと濁った声で鳴くのはコゲラ。嘴(くちばし)で樹肌をつついて主にアリを採餌します。ツゥーツゥーと鳴くのはメジロ。目の周りの白いアイリングがよく目立ちます。樹液やヤブツバキなどの花蜜を吸いながら移動しています。混群を構成する種は食べる餌が微妙に違うことでけんかし合うこともなく、活動範囲も多様なので上空や地上からの天敵に気づきやすい効果をもっています。混群の中でもエナガの群れは、地縁関係の群れになっている他の種と異なり、親子兄弟など血縁関係で構成していることもあり、結束力が固く、混群の移動の引っ張り役になっている傾向が見られます。
 

▲梢の枝をめまぐるしく動き回るエナガ(エナガ科)
 

▲幹や枝を突いてアリなどを採餌するコゲラ(キツツキ科)
 

▲蛹やクモの卵のうなどを採餌するシジュウカラ(シジュウカラ科)
 

▲樹液や花蜜を好むメジロ(メジロ科)

ロシアからの渡り鳥、オオカワラヒワ

カワラヒワは翼に鮮やかな黄色い模様をもった身近な小鳥として知られていますが、日本の冬では2つの亜種が見られます。亜種とは地域個体群みたいなものです。普段よく見られるカワラヒワは日本で繁殖し、一年中すむ亜種カワラヒワです。もう一つの亜種はロシアのカムチャツカ半島やクリル列島(千島列島)で繁殖し、日本に冬に大群で渡ってくる亜種オオカワラヒワです。日本の留鳥、亜種カワラヒワは全長が平均13.5㎝、体重が平均20gであることに比べ、ロシアからの渡り鳥、亜種オオカワラヒワは全長が平均15.5㎝、体重が平均26gあり、嘴やの大きさを含め、亜種カワラヒワより大きめです。鳥の図鑑の多くは亜種までの記述はされていませんが、留鳥・冬鳥・夏鳥・旅鳥を区分する渡り区分からみると大きな違いのある鳥といえます。両亜種の見た目の違いはわずかですが、オオカワラヒワはカワラヒワに比べ、三列風切の白斑がやや太めです。役に立たない識別方法ですが、私の調査研究の経験からでは翼長などの測定の際、カワラヒワは噛まれたままでも平気ですが、オオカワラヒワに噛まれると悲鳴をあげるほど、かなり痛いです。
 

▲オオカワラヒワの群れ(アトリ科)
 
所沢航空記念公園
埼玉県所沢市並木1-13
(公共交通機関利用の場合)
アクセス:西武新宿線 航空公園駅から徒歩5分


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nagaishi

所沢市に引っ越してからすぐに『所沢市の自然』(所沢市発行)の企画に参加させてもらったのが最初の所沢との関わりです。市内をくまなく回って撮影したり原稿を書いたりするうちに所沢の自然の魅力にはまりました。自然が好きで、狭山丘陵自然史研究会では雑木林や湿地、川の生物の調査研究のほか、大学(東京農工大学・立教大学)では自然環境の保全や自然保護文化論を担当しています。趣味の自然への旅が高じて毎日新聞旅行ではネイチャーガイドをしています。

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