狭山丘陵の生きものたち(6月下旬) -梅雨時に似合う個性派ぞろいの生きものたち


梅雨時の晴れ間をねらって花や虫たちを探してみましょう。所沢市内では狭山丘陵や平地林に出かけなくても、近くの神社やお寺、公園などの生垣で見られるかもしれません。今回は、初夏に見られる花や虫たちをご紹介します。

永石文明

不思議な花の形と、たくましさをもつ花

露草。花びらは2枚のように見えて、実は3弁花。左右に広がる2枚の青い花びらと、舌のように垂れ下がった1枚の白い花びら。中央にある白い花びらはまるでバランスをとっているかのよう。それに、形の異なる雄しべを3組も持っているのです。一番上に目立つ(X型と呼ばれる)雄しべが3本、その下にはピースをしているかのような(Y型と呼ばれる)雄しべが3本、そして下にぐっと長く伸びている(O型と呼ばれる)雄しべが2本。その中央にあるのは1本の雌しべ。最後に、たくましさ。ツユクサは他の株と受粉(他家受粉)もしますが、自身の株同士でも受粉(自家受粉)もできます。さらに地面に付いた茎からも根を出して、新たな花茎を作って増えていきます。ツユクサの生きる力はすごいですね。


▲正面から見たツユクサの花


▲斜め横から見たツユクサの花

雪のように舞う花、雪の下

生垣に見られる花は「雪の下」。名の由来は、たくさん咲いた白い花を雪に見立てて、その下に葉があることから「雪の下」とか、常緑の葉を持ち、冬でも「雪の下に葉がある」からとするなど、諸説ありますが、葉に注目しているところが共通です。中国では「虎耳草(コジソウ)」と呼び、毛の生えた肉厚の葉が虎の耳に似ていることからだそうですが、中国でも葉が名前の基になっているのが興味深いところです。
日本でも、葉は食草にも薬草にもなるので、昔から庭に植えるようになったようです。ユキノシタは6弁花で、上側の花弁3枚は小さいのですが、白地に紅の斑があり美しく、下側の花弁2枚は左右に長く伸びているので、風に揺れると、舞い落ちる雪のようです。


▲白い雪が舞うようなユキノシタ

毒や痛みを抑えてくれる十薬、ドクダミ

ドクダミの名の由来は毒や痛みを抑える意味の「毒痛み(どくだみ)」というところから来ているようです。日本では、十の効能がある十薬(じゅうやく)とも呼ばれていますが、中国では食材として使われているほど、人気の高い植物です。
さて、ドクダミの花の色は? 実は、花は3本の雄しべと3本の雌しべからできていて、この一つひとつの花がたくさん集まったのが長さ3㎝ほどの花序(かじょ)。十字に広がった4枚の白いものは花びらではなく、苞葉(ほうよう)と呼ばれる葉です。花序の基部にある苞葉は、特別に総苞(そうほう)と呼ばれます。緑の中では黄色の花序より、大きく開いた白い苞葉はよく目立ち、受粉してくれる虫たちを呼ぶのに効果があるようです。


▲ドクダミの黄色い花と、花にやってきたヒゲナガハナノミ

クズの葉で見つかる小さなタマムシ

虫好きな人は見つけたら思わず見てしまう、とても小さなタマムシです。大きさが3mmしかない虫ですが、なにしろ、金属光沢のある、まるで宝石のような体なのです。頭と胸が金色で、翅(はね)は黒くて銀色の模様があって、翅を開くとお腹はブルー。このタマムシの名前はクズノチビタマムシといい、食べ物がクズの葉であるため、クズのあるところでは普通に見られます。昼間じっとしたままクズの葉を食べていることが多く、観察しやすい昆虫です。


▲宝石のようなクズノチビタマムシ


▲翅を開いて飛び立とうとするクズノチビタマムシ

赤地に黒のハート紋? トホシテントウ

漢字で書くと、十星天道。赤地に10個の黒紋があるテントウムシです。テントウムシというと、一般的にアブラムシを食べる肉食のイメージですが、トホシテントウは、カラスウリやスズメウリなどの葉を食べる草食動物です。見つけるとしたら、林縁でツル植物を探してみましょう。やや大きめのテントウムシで、警戒心が強くないせいか、じっくり撮ることができました。じっとレンズを見られているようで、背中の黒い斑紋がハート型が何ともかわいく思えました。


▲葉の上のトホシテントウ

 


観察情報

ツユクサやユキノシタ、ドクダミは、神社やお寺に行くと見つけやすい植物です。
クズノチビタマムシやトホシテントウは、雑木林の林縁でみつやすい昆虫です。

昆虫がよく見られるお勧めの場所は、比良の丘(堀之内)や菩提樹池周辺(山口)になります。


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nagaishi

所沢市に引っ越してからすぐに『所沢市の自然』(所沢市発行)の企画に参加させてもらったのが最初の所沢との関わりです。市内をくまなく回って撮影したり原稿を書いたりするうちに所沢の自然の魅力にはまりました。自然が好きで、狭山丘陵自然史研究会では雑木林や湿地、川の生物の調査研究のほか、大学(東京農工大学・立教大学)では自然環境の保全や自然保護文化論を担当しています。趣味の自然への旅が高じて毎日新聞旅行ではネイチャーガイドをしています。

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