課題解決、みんなの集いの場づくり……ニュータウン椿峰のみどりを活かしてできること


所沢が誇る緑豊かで閑静なニュータウン、椿峰。
2020年2月8日、まちづくりに関する住民懇談会が山口まちづくりセンターで行われるということで行って参りました。
筆者自身は椿峰ニュータウンに住んでいるわけではないのですが、自宅からそう遠くなく日常的に訪れることが多いエリアです。
登壇者は椿峰出身の建築家・藤村龍至さんと、椿峰在住で地域住民の生活を良くする団体「つばきのわ」を運営する福島夕香さん。
今回の記事では、このお二人にクローズアップしつつ、椿峰ニュータウンが抱える課題と、ここ数年で椿峰に起こっているムーブメントを振り返り、未来に向けた動きについてお伝えします。


▲懇談会に登壇した藤村龍至さん(右)、福島夕香さん(左)

高齢化・コミュニティの空洞化・空き家問題……ニュータウンの抱える課題

狭山丘陵の端、所沢市内の山口地区と小手指地区の境界部に位置する椿峰ニュータウン。
懇談会では、まず藤村龍至さんによって椿峰ニュータウンの成り立ちについて説明がありました。
ニュータウンと言うと平地に似たような一軒家が並ぶ光景が目に浮かぶ方も多いのではないでしょうか?
しかし、椿峰ニュータウンは違います。緑にあふれ、その緑をじゃますることのないように抑制された建築物が配置されています。


▲マンションは5階建て程度。高い建物はあまり見当たらない。

実は、開発が計画された当時、自然保護団体から反対運動の訴訟が起こっています。「同じ丘陵内でも財政に余裕のあった都内ではニュータウン開発推進中に反対運動が起こると、官が土地を買い取って公園や緑地にすることが多かった。しかし、ここ椿峰においては反対運動や訴訟が起こるも、埼玉県は財政難であったため官が買い取ることができなかった。代わりに、豊かな環境をまもるための協定を結ぶことと引き換えに開発を許可した」のだそうです。
結果として、緑地と住居が共存する緑豊かなニュータウンとして成熟しました。


▲斜面は管理費で植栽の手入れがなされており、このように建物と駐車所の土台の間という狭い隙間にも木が生えている。

しかし、全国のニュータウンの共通の課題としても近年注目されていますが、高齢化、コミュニティの空洞化、空き家増加といった問題がここ椿峰にも押し寄せています。
具体的な問題としては、「坂道が多いため高齢者は移動が困難」、「自治会の担い手が減り夏祭りが開催できない」、「住宅地のため商業施設がなく買い物に不便」といったことが挙げられます。
そして、このような椿峰ニュータウンの課題を解決したい、と手を挙げているのが藤村さんなのです。

2017年、官民に椿峰の課題を訴えるシンポジウムを開催

藤村さんは1976年生まれ、ご実家は椿峰ニュータウン内にあり、お母様がお住まいになられています。椿峰小学校、上山口中学を卒業後、建築家を志し、現在は様々な自治体で建築設計を通じて住民参加型のコミュニティ形成につながるプロジェクトを手がけています。所沢市においては景観審議会副会長を務めていらっしゃいます。
そんな藤村さんがニュータウンの問題を解決したいと2017年に仕掛けたのがシンポジウム「椿峰ニュータウンの将来像を考える」です。(主催は「彩の国さいたま人づくり広域連合 政策課題共同研究」『サステイナブルタウンを目指して』~超高齢社会の包括的タウンマネジメント~」研究会)
そこで、椿峰ニュータウンの問題を浮き彫りにするとともに、市長や議員、行政職員、そしてもちろん地元住民に「ともにこの問題を考えていきましょう」と呼びかけました。
翌年開かれた2回目のシンポジウムではニュータウンにある「椿峰中央公園」についてアンケートが行われ「公園で1日限定のカフェが行われたらどうしますか?」といった問いかけには「行ってみたい」という声も多く聞かれました。

子育てママが主体となった「つばきの森のマーケット」の成功

2回目のシンポジウムの結果を踏まえ、研究会のメンバーから「ニュータウン内の『椿峰中央公園』を活用して社会実験をやってみたい」という提案がなされ、キッチンカーと椅子やテーブルを持ち込んでの1日限定の青空カフェが実現しました。
この公園ではこれまで自治会の夏祭りなどは行われていましたが、任意の団体が収益事業を伴うような貸し出し方はほとんどなされていませんでした。そこで研究会のメンバーが市の担当者と粘り強く交渉した結果、1日限定の社会実験として青空カフェが実現したのです。
この流れを受けて「私たちも公園でイベントをやってみたい」と手を挙げたのが今回の懇談会のもう一人の登壇者である福島夕香さんをはじめとした地元で子育てをするお母さんです。
イベントをゼロから企画し運営しようというのは大変手間のかかることではありますが、地域コミュニティをもっと盛り上げたいという思いもあり、子育て中のママさんが主体となりクラフトのイベントを行うことになりました。
これが「つばきの森のマーケット」です。
(所沢なびの記事はコチラ
初開催の様子→ https://tokorozawanavi.com/event-jin20181106/
2回目開催の様子→ https://tokorozawanavi.com/event-sawada20190716/)
子供が楽しめる縁日のようなものがあり、お母さん方も自身が作ったハンドメイド雑貨が販売できる、小さなステージでは地元のアマチュアミュージシャンが演奏し図書館司書さんによる絵本のよみきかせが行われる……そんなイベントが実現したのです。

 


▲つばきの森のマーケット2018年10月

1回目は2018年10月、2回目は2019年6月に開催。1回目は運営・スタッフや来場者も30~40代がメインだったのが、2回目はシニア世代も増え、世代間の交流の場として機能していたのではないでしょうか。
福島さんはこのマーケット運営に携わる中で多世代のニーズを汲み取り、昨年には「つばきのわ」という団体を椿峰で立ち上げ、老いも若きも椿峰での生活を楽しめるような企画を推進中です。

公園を整備し日替わりで「青空カフェ」はできないだろうか?

「高齢化や空き家問題は全国的なものだが、これから大都市の郊外に集中的に発生するので、マクロ視点で解決していく必要があり、ニュータウンは特にそれらの課題が集中する」と藤村さんは訴えます。
ニュータウンが活性化しにくい理由の一つに「第一種低層住居専用地域」という規制の存在が挙げられます。端的に言えば、該当地域を住居専用にすることで閑静な住宅街を保とう、というものです。その規制じたいは決して悪いものではありません。
ところが、例えば「空き家を転用しにぎわいが創出できるようなオフィス兼カフェをオープンしたい」と希望しても、このエリアでは条件が厳しく、なかなかそれを実現するのは難しいそうです。
また、届け出の際、保健行政と建築行政の求めるものをどちらもクリアするには、キッチンだけでなくトイレと玄関を自宅用とカフェ用で別々に設けることを求められる、など多額の出費が必要となるため、ニュータウン内での空き家を使った自宅カフェの開業というのは「夢のまた夢」になってしまうことも……。
行政側にも一定の規制緩和を求めることが必要かもしれません。
しかし、そこまでしなくとも今できること、として藤村さんは公園を活かした日替わりでの「青空カフェ」を提案します。公園に、屋根とイス・テーブル、電源とトイレなど最低限の設備を設置し、日替わりでキッチンカーに来てもらいカフェ運営をするというものです。
これなら、多額な費用をかけずとも、にぎわいの場を創出できるかもしれません。

アクティブな椿峰ニュータウンを目指す

所沢市内にもニュータウンは数箇所あり、いずれも同様の課題を抱えています。
行政側も、その課題は把握しており、ニュータウンをどう支えていくかを模索しています。
だからこそ、今、実際に住んでいる皆さんが声を上げる必要があるのではないでしょうか。
そんな意見交換の場として2月16日(日)には所沢市主催のシンポジウム「椿峰のみどりから考える」が開催される予定です。藤村さんもモデレーター(司会)として登壇されます。
これからの椿峰のまちづくりに興味がある、リアルな声を伝えたい、自分も何かしたい、そんな方はぜひ参加してみてください!
▼詳細は下記URLからご確認下さい
https://www.onvisiting.com/2020/01/30/saitama-20200216/
https://www.city.tokorozawa.saitama.jp/kurashi/jutaku/toshikeikaku/tsubakimine/tsubakimine2020.html



記事の執筆者プロフィール

前原 麻世 Asayo Maehara
前原 麻世 Asayo Maehara
所沢在住5年ほどのライターです。住まいは長野出身→沖縄→東京→所沢。 カフェや、子連れで行ける音楽イベントが好きです。

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