レゴ好き少年が建築を学び、街や人を「手描きスケッチ」するようになったいきさつとは?西とこ文化祭2022・イラスト展【澤田昂明さん】


西所沢駅周辺で、アート・音楽・マルシェなどを楽しめるイベント「西とこ文化祭」が行われます。期間中、シン図書館で街並みのスケッチなどを展示するイラストレーター・澤田昂明さんにお話を伺いました。

 

レゴ好きだった少年時代、自作レゴを愛好家サイトに投稿も

西所沢駅徒歩3分にある私設図書館「シン図書館」。週一回の開館日、ここは主宰の高橋真理奈さんが集めた蔵書を訪れた誰もが読むことができる、地域に開かれた場所として運営されています。


▲澤田昂明さん(左)と「シン図書館」主宰・高橋真里奈さん(右)

9月17.18.19日に行われる「西とこ文化祭」ではイラストレーター・澤田昂明さんの絵が展示されます。
澤田さんは風景・街並みのスケッチや、カフェ・ライブハウスなどの空間とそこにいる人物を描くイラストレーターです。
ペンで描く風景や人物はモノクロながらも、被写体の表情や質感を捉えています。


▲澤田さんのInstagramより「#今週のスケッチ」。テーマは造語でイラスト「Park Ation」


▲所沢の長者久保公園で行われていたマーケット「マイパークマーケット」ではロゴ制作も担当

そんな澤田さんに絵を描くようになった経緯を伺いました。
幼少期の遊びは工作やレゴブロックだった、という澤田さん。お父さんがおりがみや工作を教えてくれたそうです。絵を描くのも好きで「ケムンパス(『もーれつア太郎』にでてくる毛虫のようなキャラクター)とかドラクエのモンスターを描いたり」していたそうです。
レゴブロックは大好きで、毎年発刊されるカタログを見ては自前のブロックで何とか実現できないかと試行錯誤しました。つまり、澤田さんがはじめに強く興味をもったのは立体物だったということです。
高校生の頃には、当時発売されていた仮面ライダーフィギュアを模し、レゴで作成しました。当時、アマチュアモデラ―達の間で自身が作ったレゴ作品をBlickShelf(世界的なレゴの愛好家サイト)にアップするのが流行っており澤田さんも自作のレゴ作品をアップしました。その際、レゴ作品を写真に撮り背景から対象物のみを切り抜くため写真編集ソフトを使うようになります。


▲BlickShelf上にある澤田さんのページ https://brickshelf.com/cgi-bin/gallery.cgi?f=214913

レゴ作品画像の切り抜きを行ううち、写真編集ソフトを使うことそれ自体が楽しくなっていきました。もともとパソコンを触るのが好きで、インターネットにも興味がありました。
そこで、澤田さんは進路選択の折「大学は情報系に進もう」と決め、情報通信学科のある大学に入学します。

さて、写真編集ソフトやパソコンに興味を持ち情報通信学科に進んだものの、澤田さんは徐々に「自分のやりたいことでもなさそうだ」と感じるに至ります。当時、所属するビッグバンド部の先輩が転科する姿に澤田さんは後押しされ、自身の転科を決めます。
進んだ先は建築学科。もともと少年時代から立体にハマっていた澤田さんが、自分のやりたいことに近づくことができたタイミングでした。

 

建築を学び始め夢中になるも物足りなさを感じるように……転機は教授からの意外なアドバイス

建築を学ぶようになってからは、授業で出される課題について考える日々が続きました。
転科前と比べると、澤田さんは水を得た魚のように楽しみながら取り組みました。考えたアイデアを実際に手を動かして建築模型として作るのが楽しかったのです。
建築を志す者として評価されるよう”面白い”ものを作りました。
しかし、やがて澤田さんは物足りなさを感じるようになります。その建築に現実的な世界観やストーリーはあるのか?という疑問が頭を持ち上げてきたのでした。
本来、建築とは、敷地があってそこにどういう人が住むのか、住宅の中でどんな暮らしを送るのかというストーリーを考えてから作るものですが、課題としてなら、そうではない作り方もできてしまいます。曰く、建築学生が陥りがちな「まず形を作りたがる」という現象に澤田さんも当てはまっていたのです。「案の面白みはあるけど果たしてそこに実利はあるのか」という疑問が沸いたのです。
転科もして、自分なりに夢中になって建築に取り組んできましたが、「リアリティのあるものはいかにして生まれるのか?」と澤田さんは考え込みます。

とある教授にその悩みを伝えました。意匠デザインの先生です。澤田さんはその教授にこんな言葉をもらいました。
「目で見たものをスケッチをするといいよ」
その教授は、良いなと思ったものがあったら雑誌でも実物でも描いてみたらいい、と伝えてくれたのです。
その言葉を受け、澤田さんは絵を描くようになります。
描き続ける中、自然な流れとして、澤田さんは建築物が持つストーリーに着目できるようになりました。また、建築史に関する本を読み漁り、タイミングのよいことに所属する研究室では古い建物の実測調査に携わる機会にも恵まれました。

 

米軍住宅が時を経て若手アーティストの住まいになる面白さ

建築史の見識を深めるうち、澤田さんは「どんな建築物でもそれぞれのカルチャーがあり、その時代や地域の人によって幅広い使われ方や意味を持つ」ということに着目するようになります。
そんな中知ったのは地元・狭山市にある「米軍ハウス」のことでした。
狭山市にあった米軍ジョンソン基地、その周囲にはの隊員やその家族が住んでいた住宅がありましたが、返還され1960~70年代には賃貸物件として格安で貸し出されるようになります。当時、お金のないミュージシャンやアーティストが全国からやって来てそのエリアにすむようになり、狭山アメリカ村と呼ばれました。
※所沢なびではこの記事でも米軍ハウスについて触れています。「狭山アメリカ村に住んでいたこともある!細野晴臣さんの人となりを音楽と多量の資料でひも解く『細野観光1969-2021』」
https://tokorozawanavi.com/event-kmchosono20220614/

そのことを知り、そもそもの目的とは別の目的でほかの人が使うという現象に面白みを感じ、卒論のテーマにもしました。


▲卒論のプレボ

自らの手を動かし建築物のスケッチを続けることで細部に視点を向けるようになり、そして建築物にはカルチャーや歴史的背景やといったストーリーがあると考えるようになった澤田さん。
やがて、建築物だけではなく、その場所に身を置く人の“動き”に思い至るようになります。それが次のステージでした。

 

絵を描くことはミュージシャン同士のセッションのようなもの

2017年頃、澤田さんは所沢にできたコワーキングスペース「所沢ノード」に出入りしていました。2016年に所沢のプロぺ通りにオープンしたその場所は当時、新しいことを始めたい人たちのちょっとした“たまり場”になっていました。


▲居合わせたメンバーのiPadに夢中の澤田さん。所沢ノードにて

澤田さんは当時を振り返り「“場所”を動かす人の力って凄い」と話します。
以前は全く違った用途で使われていたビルのワンフロアに、それまで全く関係のなかった人々が集まり、交流し、新しいものを生み出していく。澤田さんもその中の一人として、あるメンバーの移動式屋台のPOPにイラストを添えたことがありました。


▲メンバーによるぽっとらっく屋台とPOP


▲採用されたイラストの原画がこちら

教授に建築物を描くように言われ、実直にそれを遂行していた澤田さんでしたが、この場所での経験がさらなる変化をもたらします。人の動きやアクティビティに注目するようになったのです。
澤田さんの絵には建築物だけではなく「その場にいる人」も描かれるようになりました。

そうして描くようになったものの一つが、カフェで目にするシーンです。ドリンクを片手に過ごす人やライブ中のミュージシャンを描きました。

学生時代から通っていた所沢駅前のスターバックスコーヒー(所沢ステーションビル店)、そこでもたびたびスケッチを行いました。店内でライブが行われることもあり、ミュージシャンを描いては、演奏後本人に手渡すこともありました。

澤田さんがスケッチをしているのを知ったスターバックスの店員さんは、駅改装に伴う閉店前の2週間、スケッチ帳を店内に展示してくれました。


▲スターバックスの店内に置かれた澤田さんのスケッチ帳

スケッチを通じてその場にいる人のエネルギーを捉え、自分もそれに絵で呼応する。澤田さんにとって、それはセッションのようなかたちをとっていったのです。

 

西とこ文化祭では所沢の街並みを描いた作品も展示

紆余曲折ありながら、独自の世界観で絵に向き合ってきた澤田さん。
西とこ文化祭では彼のこれまでの作品と、今回のイベントのために「所沢の風景」を描いた新作など、多数の作品が並ぶ『Re view-風景採集』を展示します。会場となるシン図書館の本と一体となった展示空間にも注目を!
所沢エリアの若手イラストレーターの作品、ぜひご覧ください。

 

■イベント詳細


日時:9/17(土)~9/19(月)11:00~19:00
会場:シン図書館
所沢市西所沢1丁目17−13
西武池袋線 西所沢駅 徒歩3分
 
▶西とこ文化祭 公式サイト
https://www.nishitokobunkasai.com/event/

▶澤田昂明さん instagram
https://www.instagram.com/3wadarch/



記事の執筆者プロフィール

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前原 麻世 Asayo Maehara
タウン誌編集5年ののち、ライターへ。長野県出身→沖縄で大学時代→東京で就職→所沢で子育て中、6年になります。夫は埼玉都民2世。カフェや、子連れで行ける音楽イベントが好きです。

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