「小手指方言かるた」の制作者にきく インタビュー 小暮勝彦さん
「小手指方言かるた」の制作者にきく
インタビュー 小暮勝彦さん
かつて所沢の小手指地区で使われていた方言をまとめた「小手指方言かるた」が昨年(2017年)小手指まちづくり協議会から発行されました。これは、ふるさと「小手指」への意識への醸成を図るために作成されたもので、地域の小中学校や高等学校、高齢者施設に配布され活用されています。また、地域紙などメディアでも取り上げられ、所沢市民だけでなく、他の市町村の人からも問い合わせがあるなど、反響を呼んでいます。
そんな中、2018年1月13日~30日の期間中、野老澤町造商店(通称:まちぞう)で
所沢市制60周年の記念事業として制作された所沢の名所や特徴をかるたにした「所沢郷土かるた」と「小手指方言かるた」のコラボ展が初めて開催。
「所沢郷土かるたと小手指方言かるた展」の詳細はここをクリック
展示開始の前日、「小手指方言かるた」の発案・制作者の小暮勝彦さんに、小手指かるたの誕生についてお話を伺いました。
▲「小手指方言かるた」の制作者 小暮勝彦さん
■絶滅種のような存在を残したい
成田:「小手指方言かるた」が好評ですね。作ろうと思われたきっかけは何ですか?
小暮:私も時々小手指弁を使うのですが、孫に「おじいちゃん、理解できないよ」と言われたとき、方言もだんだんとしゃべる人がいなくなってしまって、絶滅種のような存在になっていると感じました。それ以来、方言を残しておきたいという思いで、60代だった10年ほど前から、80代、90代の高齢者が話す方言を日々拾いながら小手指弁を書きためてきました。もう1000語以上集まったでしょうか。
「かるたを作って、子どもたちに伝えてみては?」と兄(養蚕家で随筆家の小暮晴彦さん)のアドバイスで、印刷会社に協力を仰いで自費で制作しようと準備を進めていました。このことを「こてかつ」(※1)で報告したところ、毎年秋に開催している「小手指公民館文化祭」でお披露目することになりました。このとき多くの人に好評をいただきまして、おととし(2016年)9月に小手指まちづくり協議会(※2)で作るということになり、昨年(2017年)1000部が発行となりました。
■かるたに込めた思いとは?
成田:小手指のみなさんの思いがこのかるたに入っているのですね。発行されるまでに検討されたことは、どんなところでしょうか?
小暮:まずは、かるたのサイズを検討しました。いろいろ意見をきいてみると、高齢者は小さな文字は読みづらい、大きすぎる絵札だと今度は札を取るときに手が届かなくなるということで、高齢者でも読める文字の大きさの「読み札」、手の届く大きさの「絵札」にこだわり、試行錯誤した結果、今の札の大きさ(76×109mm)になりました。
成田:かるたの絵も文字札の川柳も小暮さんの作品だとうかがいました。絵札からも文字札からも、やさしさを感じ取ることができます。
小暮:ありがとうございます。絵札は、どの札にもどこかに「動物をいれる」「高齢者や子供をいれる」ということにこだわりました。「家族」というものは何かというものを見直していただきたいという意味を込めて、おじいちゃん、おばあちゃんを入れて描いた札が多くなっています。
また、お子さんでもわかりやすい絵になるようにこだわり、まんがチックなタッチで描きました。
文字札は、リズムよく五七五にこだわり、川柳のような形で、格言や道徳感を盛り込んで考えました。例えば、「おじいちゃん、おばあちゃんを大切にするんだよ」とか、「ありがとうのたった一言で幸せになれるんだよ」というような私なりのメッセージを盛り込ませていただいています。でも、それが押し付けにならないように遊びながら感じてもらえるように工夫しました。私は、小手指のみんなでこのかるた制作をしたかったので、1札につき3句ずつ候補の川柳をつくり、「こてかつ」のメンバーみんなで吟味して選んでもらうという形で文字札を決めていきました。
▲小暮さんが一番のお気に入りの札。「大好き」の一言に孫の優しさと生きがいを感じた高齢者の気持ちが読み取れますね。
■趣があり温かみのある方言 次世代に残したい
成田:なるほど、小手指地域の人たちの気持ちも入った文字札なんですね。小暮さんにとって、小手指弁はどのような言葉ですか?
小暮:聞き方によっては意外に乱暴にオーバーな表現に聞こえるかもしれないですが、趣があり温かみを感じる言葉で、次世代に残していきたい方言です。
例えば、「押す」は「おっぺす」、「たたく」は「ひっぱたく」、「寄っていきなさい」は「よってらっしいよ」、「びっくりした」は「おったまげた」、「雨戸を閉めてください」は「雨戸しったてろ」など。面白いでしょ?
成田:気さくな感じで親近感がでますね。小手指の方言は、所沢の方言とも違うのですか?
小暮:小手指の方言は、所沢から飯能方面まで、ほとんど同じようです。少しずつ違うこともありますが、小手指の方言は味があって泥臭い感じがしますが、所沢の方言でも商業が発達した所沢市街地と農業が盛んだった小手指地域では多少の違いがあるようで、市街地のほうが江戸っぽい感じがします。
成田:方言はその土地の歴史まで表しているのですね。今後の展開はどのようにお考えですか?
小暮:今後は、「小手指方言かるた」を使ったかるた大会を開きたいと思います。今年中に第1回を開催する方向で、「こてかつ」の中でも話し合っています。
実は、このかるたに使われている小手指方言はほんの一部。これの20倍くらい、つまり1000語くらい集めていますので、いずれ冊子にまとめようと思っています。その冊子には、方言の意味とその使い方も吹き出し風に書いて作ってみたいと思っています。
■子どもたちが誇れる小手指に
成田:ところで、小暮さんが活動されている「こてかつ」にはどのような思いで参加されていますか?
小暮:私は、大工の修業のため東京に住んでいましたが、東京から小手指を見た時に「素晴らしい」と思っていました。そして、故郷である小手指に帰ってきたときに「小手指を大事にしたい、今後も子どもたちが誇れるふるさとにしていきたい」と活動をはじめました。
学校の先生には、小手指をよく知っていただき、子どもたちにそれを伝えて欲しいと思います。学校の先生が小手指を好きになると、子どもたちは小手指を誇りに思い成長します。昔からある言葉や小手指の歴史などもきちんと伝えてもらうことで小手指を誇れる大人になれると思います。すると、またその次の世代に伝えつながっていくと思います。そのためには、まずは、自分たちがこの役目をしてゆきたいなと思っています。