シン図書館がついにオープンしました!~「いる」だけでいい場所を。小さな文化複合施設のスタートです~


 5月5日、西所沢に私設図書館「シン図書館」がついにオープンしました。
 

 
 リノベーションの頃から取材させていただいておりました私ボランティアライターじんが、そのオープンの様子を主宰の高橋真理奈さんのインタビューを交えてリポートします。
 

取材日:2021年5月5,8日 ボランティアライターじん

 

① 「吉祥荘」から「きちじょう荘」へ

 築53年の吉祥荘の2階。古書店である「サタデーブックス」の隣の部屋。ここをリノベーションして、建築設計事務所「シン設計室」と私設図書館「シン図書館」をつくる計画について、前回『私設図書館準備中!~西所沢に新たな文化発信拠点がもうすぐ誕生します~』(https://tokorozawanavi.com/news-jin20200326/)にて紹介させていただきました。
 

 
 壁の左官やペンキ塗りなどできるところは自分で行いつつ、職人さんの力も借りながら整備を進めてきました。そしてついに完成しました。
 

 

 

 
 壁一面の本、机と椅子のある四畳半の「シン図書館」がオープンしました。「シン図書館」が入居する建物は吉祥荘の2階になります。古書店「サタデーブックス」、建築設計事務所「シン設計室」、そして私設図書館「シン図書館」という3つの施設が入居する吉祥荘の2階を「きちじょう荘」と改めて呼ぶことで、文化を育む複合施設として今後は運営していくとのことです。所沢の小さな文化複合施設「きちじょう荘」が新たなスタートを切りました。
 
 今後の開館時間について説明します。
 定期開館日:毎週水曜日 13:00~19:00
 入館は無料です。きちじょう荘2階への階段を登って奥の部屋にお進みいただき、入口で靴を脱いでおあがりください。
 

② 主宰の建築家「高橋真理奈さん」にシン図書館とともに開設されました建築設計事務所「シン設計室」でお話を伺いました。

 

 
ーーーオープンおめでとうございます。
 高橋さん:
 ありがとうございます。面と向かって話をするのはなんだか恥ずかしいですね。
ーーーそうですね。いつもはリノベーションの作業をしながら話していましたしね。
 高橋さん:
 何からお話しましょうか。
ーーークラウドファンディング募集の文章の中に高橋さんの想いがすべてこもっていますよね。この文章すばらしいと思うんです。改めて伺うよりもまずはこれを読者のみなさまにも読んでもらいましょう。
 (https://camp-fire.jp/projects/view/400644
 
ーーーこの中に想いがこもってますよね。
 高橋さん:
 ありがとうございます。自分が思っていた以上に沢山の方から反応やご支援をいただき、やって良かったなと思っています。じんさんの前回記事にもリンク貼付いただけたおかげでより反応やご支援をいただけたと思うので、改めてお礼を言いたいです。ありがとうございます。
 
ーーー取材させていただきこちらこそありがとうございました。読ませていただいての僕の中での反省なんですが、前回記事において高橋さんのことを「設計士」と表現させていただいたんですが、「建築家」と表現すべきだったと思っています。高橋さんの中で「建築家」ってどのようなものですか。いきなり図書館から離れた質問しちゃってすいません。
 高橋さん:
 難しい質問ですね。パキッっと明快に答えられないので、ひとまず用語の説明を先にしますね。建築を設計する人は「建築士」「設計士」「建築家」と呼ばれることがありますが、それぞれ微妙にニュアンスが違います。
 「建築士」とは資格の意味合いが強く、「一級建築士」「二級建築士」「木造建築士」のいずれかの資格を保有するものを指します。「建築士」の資格をとると、その種類によってできる仕事の範囲が決まります。テクニカルなニュアンスが強いですね。
 「設計士」は「建築士」の俗称ですね。「設計士」という資格は特にないのですが、「(建築を)設計する人」ということが分かりやすいので、3つの呼称の中ではもしかしたら一番ポピュラーに使われているかもしれません。
 「建築家」も「設計士」同様に、「建築家」という資格はありません。どちらかというと「哲学家」や「芸術家」「音楽家」「作家」に近いニュアンスのように感じます。「芸術家」と名乗ることは誰にでもできますが、だからといって名乗った全員が「芸術家」かと言うと、違いますよね。でも、世間から「芸術家」と承認されることがイコール「芸術家」というわけでもありません。生前評価されなかった「芸術家」「音楽家」「作家」はたくさんいますからね。
ーーー「建築士」「設計士」「建築家」の呼び方一つでも、微妙に意味が違うんですね。
 高橋さん:
 紛らわしいですよね。建築の設計を生業にしている人でも、意識している人もいれば、意識しない人もいると思うので、建築の設計とあまり関わりがない人であれば、この3つの呼び方をごっちゃに使ってしまう方がむしろ普通だと思います。
 「建築家」も誰でも名乗れるけれど、名乗れば全員が「建築家」というわけではないということです。「芸術家」などは資格が一切必要ないので、己の腕のみで「芸術家」たることを証明しなければならず、かえって分かりやすいですが、建築の場合は一応「建築士」という資格もあることで余計に「建築士」「設計士」「建築家」の違いが分かりにくいのだと思います。
 建築家の磯崎新さんは『一級建築士の大部分は、建築家としての仕事をしていない。いっぽう、この資格なしで建築家として仕事をしている何人ものひとを私はしっている(中略)(建築士の資格は)たんに人に迷惑をかけない最低基準を理解しているという証明にすぎない。運転免許証のようなものだ』とおっしゃっています。私もそう思います。
 今ちょうど読んでいる松村淳さんの「建築家として生きる」にそうしたことが詳しく書かれているので、私が説明するよりも興味のある方は是非こちらの本を読んでください。シン図書館に置いておきます(笑)。その本の中に先ほどの磯崎さんの文章も紹介されています。松村さんはこの本の中で『建築家は説明根拠となる最終審級が不在であるという状況が、建築家という職能の明確な定義や一義的な理解を阻んでいると考えられる』と説明しています。まさにその通りだと思います。
 

 
ーーーありがとうございます。それぞれの違いがよくわかりました。高橋さんご自身は「建築家」と名乗ることにこだわりがありますか?
 高橋さん:
 そうですね。「建築家」と名乗ることにこだわりはあります。先ほどの説明のように自分自身が「建築家」と名乗れば「建築家」というわけでもありません。世間から承認されれば「建築家」というわけでもありません。だから、第三者から「建築士」「設計士」「建築家」のどれで呼ばれても、あまり気にしません。「建築家」として生きていこうと覚悟をするかしないか、それは自分自身の問題なので。
 建築家で西沢大良さんという方がいますが、西沢さんが母校の高校生に宛てた「天職との出会い方」という文章があります。その中で、「建築家とは」と簡単に説明しているので、一部紹介したいと思います。
 『日本には建築家という免許がなく、建築士しかないため、 建築家と聞くと不審に思う人もいるようです。(中略)欧米圏における建築家とは、国家でなく市民のために働く者のことで、むしろ国家が 滅びた後も市民生活を続けるように施設を設計する者、というニュアンスです。』
 素晴らしい文章ですよね。私にとっての「建築家」とは、こういうことだと思っています。私自身、大学で建築という学問を学んだ際に、こんなに面白いものが、自分の知らない世界があるのかと思い、「建築家」に憧れました。
 クラウドファンディングの文章にも少し書きましたが、前職をやめてから去年1年間休養していました。前職では建築設計事務所のスタッフとしてがむしゃらに働いて少し疲れたので、ちょっと休みたいなと思って休養しました。あとは、前職を辞めてからすぐに独立できるほど、自分が「建築家」として本当にやっていけるのか不安だったから、1年の休養期間の間で、今後も建築を続けるかどうか決めようと考えていました。
 その休養の1年で「建築家」としてやっていけるかどうかなんて、正直確信を得ることなんてできませんでしたが、当初憧れた「建築家」というものに対し、やってみないと後悔するなと感じました。やってみてだめなら仕方ありませんが、やらずに後悔するということはやめようと思いました。
 先ほどの西沢大良さんの文章の中に『おそらく天職というものは、その人にとって、多かれ少なかれ「たまたま」現れるようなものではないかと思います。』とあります。私も建築の面白さに出会ったのは「たまたま」なので、その「たまたま」を信じ、昔憧れた初心を忘れずに、自分に対しての覚悟も込めて「建築家」という言葉を使用しています。
 

 
ーーーそんな決意がこの「シン設計室」にこもっているんですね。「シン図書館」の方はどうでしょうか。
 高橋さん:
 図書館は属人的なものになってほしくないと思っています。運営している私という「人」ではなく、図書館そのものに興味をもってもらえると嬉しいですね。
 面白い建物や美しい建物があったら、建てた人物が誰だという以前に、体感として感動したり、ワクワクしたりする方が先にくると思います。私は建築を生業としているので、つい「誰々設計」みたいに気にしてしまいますが、本当に素晴らしい建物だったら、誰が建てたかなんて、最終的にはあまり重要ではないですよね。
 だから、「建築家」と名乗るからには自分自身よりも、自分がつくったものを面白がってもらえるようになりたいです。とはいえ、最初は多分「私設図書館を始める人ってどんな人なんだろう?」と気になる方も多いと思うので、私自身に興味を持っていただいて、ご来館いただけるのも嬉しいです。
 

 
ーーーそんな「シン設計室」「シン図書館」ですが、「シン」にはどんな意味が込められているのですか。
 高橋さん:
 やっぱりそれは聞かれると思っていました(笑)。わざわざ説明するのは気恥ずかしいので、聞かれない限りは答えないようにしていたのですが…。私の名前は「真理奈」なのですが、実は子どもの頃はそれほど好きな名前ではありませんでした。「理」が教科の「理科」みたいで、可愛くないなって(笑)。なんで「里」じゃないんだろう、「里」の方が女の子っぽくて可愛いのにって。でもあるとき、「真理奈」の「真理(まり)」って「真理(しんり)」とも読めることに気づきました。なんだ結構カッコいいじゃんって。それからは自分の名前が好きになりました。いきなり自分の名前の話から入りましたが、「真理」「真実」の『真』から「シン」をとって名付けました。
 それ以外にも
 ・「バットの芯のように物事に芯がある」の『芯』
 ・「深みがある」の『深』
 ・「新しいものをつくる」の『新』
 といった意味も含んでいます。『シン』があるものをつくりたいと思っています。
ーーー様々な想いが込められた名前なんですね。冒頭の質問での「建築家」に込められた想いとも通じるものを感じます。
 

 
ーーークラウドファンディングの文章の中に、「文化拠点をつくりたいと考えました」とあるのですが、高橋さんの考える「文化」って何ですか。
 高橋さん:
 これも難しい質問ですね(笑)。「新しいもの」「創造的なもの」「先進的なもの」そういったものをつくりだすって感じですかね。クラウドファンディングの文章の中にも書きましたが、私は正直に言うと所沢が好きなわけではないんです。でも、好きではないからこそ、自分が所沢を好きになれるように、地元の力になりたいとは思っています。好きではありませんが、情はあるので(笑)。
 私みたいにある程度距離を保って地元を視る、ドライな視点を持つ人の方が地域には必要なのではないかと思います。愛着がない分、より強みや弱みがわかるので、そういった人が所沢で活動した方がよいのではないかと思っています。
 所沢だから「そこそこのものでいい」ということはなく、所沢で「最先端のこと」をしたい。そういったものが自然にその場にある、常に触れられる、そんな環境を作っていきたいと思います。
 

 
ーーー図書館の利用方法を教えてください。
 高橋さん:
 このシン図書館の利用法につきましては案内書きを用意しており、シン図書館で読むことができますし、「きちじょう荘」のホームページでも閲覧可能です。少し長い案内書きとなっているので、ちょっとした読み物として楽しんでいただけると嬉しいです。
https://drive.google.com/file/d/11cw6I04cxXoVmHFZl3jUzuLdGqbHeR7z/view
 

 
 シン図書館は毎週水曜日 13 時から 19 時の間は開館しています。隣のシン設計室で「建築家」としての仕事をしています。とはいっても平日の昼間に来館することが難しい方は多いと思います。その際には、同じく「きちじょう荘」ホームページのコンタクト頁よりご連絡ください。適宜開館時間を調整します。普段はシン設計室で仕事をしていることが多いのでお気軽に連絡ください。
https://kichijoso.com/contact/
 

 
ーーーシン図書館を作ろうとしたきっかけを改めて教えてもらえますか。
 高橋さん:
 自分のための場所を作ろうと思ったことがきっかけです。先ほど説明した通り、前職を辞めてからしばらくの間休養期間をおいたのですが、それって世間的にみると無職なんですよね。
 自分的には休養でも、第三者から見れば、「今何やってるの」と感じると思います。人間って何かをしていないと駄目なのかな?何もしてない時があってもいいと思うけどな、と。 だから自分のために図書館をつくったんです。
 図書館にしたのは、図書館って「何やってるの?」って聞かれない場所なのがいいなと思いました。 もちろん本を読みに来ている人もいますが、仕事をしていてもいいし、別に本を読んでいなくて、ぼーっとしていてもいい空間ですよね。 何をしていても誰からも何をしているのかとの質問を受けない場所、それをまずは自分自身のために作りました。そしてその場所を、他の人も自由に使えたら面白いなと思いました。自分の家のリビング゙みたいなホーム感をもっていただきながらも大切に使ってもらえる、そんな場所にしていきたいです。
 例えるならヨーロッパの広場みたいになればいいなと。三々五々に集まって過ごす、そこに会話があってもなくても構わない、そんな感じで過ごせる場所になってくれたら嬉しいです。
 この場所を、大切にしてくれる人であれば、誰でも、自由に使ってほしいです。
 
ーーー最後に所沢なび読者のみなさまにメッセージをお願いします。
 高橋さん:
 どうぞお気軽にシン図書館におこしください!
ーーー高橋さん。貴重なお話ありがとうございました。
 

 

③ シン図書館オープンによせて

 このきちじょう荘は、今回ご紹介しております「シン図書館」「シン設計室」と古書店である「サタデーブックス」からなります。
 

 
 一足早く昨年6月にオープンしたサタデーブックス店主であり、ローカルメディア「西埼玉くらしの学校」主宰の大竹悠介さんにコメントをいただきました。
 
「高橋さんのような素敵な方がいらしてくださりありがたいです。お互いに応援し合えるような関係性で、生活を面白く変えていけたらいいですね。」
 大竹さん、ありがとうございます。
 
 筆者は、サタデーブックスに遊びに行ったら、たまたまその時にいらっしゃった高橋さんにお会いしてこの計画を知ることになり、オープンまで追いかけさせていただきました。これって偶然の出来事といえばそれまでですが、「きちじょう荘」という人が集う場所がなければあり得なかったんですよね。小さな文化複合施設ってまさにこんなことを指しているんじゃないかと思っています。シン図書館、シン設計室を加えて更に動き出した「きちじょう荘」に期待したいです。
 

▲取材日にたまたまいらした所沢なびボランティアライターのぶんさん
 

▲シン設計室の作業スペースとしてつかうことも
 

▲建築家としての資料置場としても打ち合わせスペースとしても活用されています。
 
 オープン当日も、取材日にもたくさんの方が次々に訪れて、このちいさな図書館に笑顔があふれていました。本がたくさん並んでいる場所ってそれだけでもワクワクします。木のぬくもりあふれる机や椅子、本棚も安らぎを感じます。ゆっくり何時間でもここでくつろぎたいなって思えるような居心地のよい場所です。僕にとっても、すでにこの場所はとても大切な場所になっています。
 

 
 所沢市出身ながら、今まで地元に目を向けることがなかったとおっしゃる高橋さんが、自らの事務所を開くにあたって長く仕事場としていた都内ではなく所沢を選んだこと、自分の持つ「本」というツールを「私設図書館」というかたちで地域の共有財産として開放したこと、とても興味深く思っていました。その想いを少しでもこの記事の中でお伝えできたら幸せです。
 誰でも「いる」だけでいい場所、是非みなさまも足をお運びください。
 高橋さんはおっしゃいました
 「この場所がきっかけとなり化学反応が起こっておもしろいことが始まればと思っています」
 きっとそんな場所になります。その未来をこれからも見続けたいです。
 

 

 

 
 きちじょう荘ホームページ https://kichijoso.com/



記事の執筆者プロフィール

じん Jin
写真を撮ったり、ランニングしたり、サイクリングしたりしながら、自然の中で過ごす時間を大事にしています。 すぐそばに素敵な自然が残されてる所沢が大好きです。 少しでも所沢の魅力がお伝えできるようにがんばります。

応援メッセージ大募集!

※採用されたメッセージを掲載いたします。
※ご質問やご要望などは「お問合せフォーム」からお願いします。
お問い合わせフォームにお寄せいただいたご質問は、1週間以内にご返信させていただきます。


この記事を気に入って頂けましたか?
所沢なびをフォローすると最新情報をお届けできます。