【リポート】吾妻教養講座「オーケストラを楽しもう♪」を終えて



▲令和2年度 吾妻まちづくりセンター主催「吾妻教養講座」が開催されました。

少し早めに会場についたので背筋を伸ばして堂々と歩いてこられた講師である、指揮者·米崎栄和(よねざき しげかず)さんと遭遇しました。席に着くと、机の上に置かれていた参考資料は、指揮棒を振る厳格な様子の写真が入ったプロフィールと、オーケストラの楽譜。「音楽の知識に疎い私なんて場違いなのでは…。」と心配になりました。ところがやっぱり受講してよかった!吾妻分館教養講座の受講リポートです。

2020年11月27日取材 カケミヅ

オーケストラとの練習の様子


▲所沢在住の指揮者 米崎 栄和さん

前半はオーケストラとの練習の様子を映像で流しながらの解説でした。

ある曲の出だしのたった一つの音を、米崎さんのイメージ通りに作り上げるために、基本からしっかりやって「生きた形」を作る工程でした。「絵本でいえば飛び出す絵本を作り上げていくような作業」という表現が印象的でした。

曲は少しずつ進んでいき、米崎さんの熱もどんどん入っていきます。
「『ソーー』ではなくて『ソーーーーーー』という感じ。」というような表現から、「もっと自分の体がものすごく大きくなったような感じで音を出して。」という、イメージを伝えるモノに。
「その表現ではまだ余裕がある。もっと切羽詰まった感じ。僕は野球をやっていたんだけど…そう、ボールを取ろうとしたら股間に当たってしまった時の感じ!もっと切羽詰まって!!」

オーケストラの方々は笑いながらも、明らかに音が変わり、指揮者と一体化して音を作りあげていくようすが分かりました。自分が楽器をひけないのが残念。米崎さんがいうような音が出せるのか、試してみたくなる、ついて行きたくなる指導でした。

オーケストラで合奏をするようなことは、今後の私の人生に訪れそうにはないのですが、イメージを共有して何かを作り出す、という作業は日常茶飯事。他人と分かり合えないことにいらだちを感じることも日常茶飯事。映像を見ながら、もっと自分の気持ちを分かってもらえるまで伝えたり、相手のことをちゃんと理解すればうまくいくこともあるかもしれない、なんて思いました。

それにしても大勢で密集している様子は少々懐かしい景色。こんな状態では、コロナ禍の今、舞台に立つことは勿論、練習さえも厳しい状態にあることが理解できました。


オーケストラを楽しもう♪

いよいよ五線譜を見ながらオーケストラの演奏を聴くことになりました。
ブラームスの交響曲第2番ニ長調。私にとっては初めて聴く曲でした。

レドレ…という3つの音の組み合わせを意識して聴いて行きました。「ここにも出てきます。」「ここでは反対に使われています。僕は『逆行』って呼んでいます。」
前半の映像では米崎さんの指導でオーケストラの方々が音を紡いで行きましたが。後半では当日の受講生が米崎さんに導かれてオーケストラの曲を味わって楽しみました。

映像が終わった後はスクリーンに向かって思わず大きく拍手!
さっきまで「初めて聴く」状態だったものが、受講後は、米崎先生に教わった略語で「ブラニ」と呼んでしまえる存在に…。


終了後お話を聞くことができました

「音楽って楽しいものなんですよ!勉強は大変ですけどね。」と穏やかに笑う姿がとても印象的だったのですが…私が気になったのは米崎さんのプロフィール。同年代の私には「就職氷河期」と呼ばれていた時代に30歳で定職を捨て、夢を追う。しかもクラシックの世界に、なんて信じられないことでした。

勿論家族には大反対されたそうです。そして、「大変でしたよ。」という一言から伝わってきたものはとても文章では表現できるものではありませんでした。

米崎さんの人生こそ飛び出す絵本を作り上げているようなものなのでしょうね。


米崎 栄和(よねざき しげかず) プロフィール

1968年大阪府吹田市生まれ。東京理科大学大学院修了後就職するも、音楽への夢断ちがたく30歳で退職。

2001年東京音楽大学指揮科研究生となり、紙谷一衛、汐澤安彦、ヴェリサー・ゲンチェフ、広上淳一、湯浅勇治の各氏に師事。

1999年ハンガリー国際ラバフェスティバルに参加。 国内各地のオペラやオーケストラで指揮・副指揮を務め研鑚を積む。

2003年若手指揮者の登竜門であるブザンソン国際指揮者コンクールにてコンクール初挑戦で最高位(グランプリなし)に選ばれる快挙を成し遂げ、一躍注目を浴びる。

2004年7月、元ウィーン・フィル コンサートマスターのライナー・キュッヒル氏とベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を共演。

これまでにリヨン国立管弦楽団、東京フィル、新日本フィル、東京交響楽団、名古屋フィル、九州交響楽団、大阪センチュリー交響楽団(現日本センチュリー交響楽団)、仙台フィル、群馬交響楽団等を指揮。

2006年9月より1年間、スロヴァキア国立歌劇場で指揮研究員として研鑽を積む。

2008年4月、スロヴァック・シンフォニエッタ・ジリナ(スロヴァキア・ジリナ国立室内管弦楽団)の定期公演に招かれ絶賛を浴びる。2009年2月に再客演の後、2010年2月にも定期公演に出演。

現在、国内外のオーケストラの客演指揮者として活躍中。


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この記事を書いた人

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カケミヅ Kakemidu

高知で生まれ育って2018年に埼玉に引っ越してきました。所沢なびライターとしてふるさとの文化についてご紹介できるようになれればと思っています。趣味はiPadでイラストを描くことです。

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