毘沙門天の化身の虎が祀られる多聞院(たもんいん)へ/仏像イラストレーター・田中ひろみ
所沢在住の仏像イラストレーターで文筆家の田中ひろみです。
来年2022年(令和4年)は寅年(とらどし)です。
所沢市中富の「多聞院」には、小さな張り子の寅がたくさん祀られています。
今回は毘沙門天の化身の虎が祀られる多聞院(たもんいん)を紹介します。
▲多聞院の石像の虎と私
建立はどなた?ご本尊は??~多聞院の歴史~
多聞院の入り口には、【元禄九年川越藩主 柳沢吉保公建立】【武田信玄公守本尊 毘沙門天】【真言宗豊山派 多聞院】の看板が並んでいます。
立派な駐車場も完備され、平日でもお参りの人が次々いらっしゃるお寺さんです。近年では、境内にたくさんの牡丹(ぼたん)が植えられ、通称「牡丹の寺」としても親しまれています。
▲入り口の看板
江戸時代の元禄7年(1694年)に川越藩主の柳沢吉保公が、開拓したのが上富・中富・下富の「三富新田(さんとめしんでん)」。柳沢吉保公は、その三富の祈願所として元禄9年(1696年)に、毘沙門社(現在の多聞院)を創建されました。その後、境内に近隣地域より神明社を勧請し、1868年(明治元年)の神仏分離令によって分離。現在、神明社は隣接しています。
▲毘沙門堂
秘仏武田信玄公の守り本尊は所沢市の有形文化財
多聞院の毘沙門堂には、武田信玄公の守り本尊で兜に入れて持ち歩いていたという1寸4分(約5.32センチ)の純金の毘沙門天像が祀られています。秘仏で、12年に一度の寅年の5月1日にご開帳されます(時間は要確認)。武田信玄公が亡くなった後、縁あって川越藩主の柳沢吉保公の手に毘沙門天は渡り、川越藩領の三富の多聞院の毘沙門堂に安置されるようになりました。毘沙門堂は、1766年(明和3年)に建築された江戸中期の建築物として所沢市の有形文化財に指定されています。
寅は毘沙門天の化身、または使いとされます。毘沙門天が戦勝祈願している聖徳太子の前にご出現されたのが、寅の年・寅の日・寅の刻とされます。そういったことから、毘沙門堂の前には、狛犬ではなく虎の石像が2体安置されています。スリムな体に縞模様が美しい石像の虎です。
▲虎の石像
「身代わり寅」に願いを込めて
「多聞院」では、小さな「身代わり寅」に身に降りかかる災いをたくして奉納すると良いとされています。そのため毘沙門堂や寅の石像の周りには「身代わり寅」が所狭しと奉納されています。「身代わり寅」の授与箱の横には、マジックが置いてあり、名前と身代わりになって欲しいことを書いて奉納するといいそうです。
▲「身代わり寅」
たまたまそこにいらした所沢市観光協会の方にお話を伺うと「約10年くらい前に身代わり寅に、【不合格】と書いて奉納した受験生が、見事合格されたそうです。寅が身代わりに不合格を引き受けてくださったのです」というお話を聞かせていただけました。ご利益ありそうなので、私も名前と身代わりになって欲しいことを書いて奉納しました。
▲私が奉納した「身代わり寅」
また、笠をかぶった笠地蔵の前には石で作られた野菜と米俵が置かれています。これは昔話の「笠地蔵」のお話を伝承するために作られたそうです。笠地蔵の前のサツマイモは、本物かと思うくらいリアルですが石で作られています。ここ三富は、川越藩領で川越のさつまいもがたくさん作られました。隣接する「神明社」には、「いも神さま」が祀られています。
▲笠地蔵
他にも「かわらけ投げ」や土俵に乗せられた「力石」など、いろいろ見所がたくさんあります。
▲かわらけ投げ
▲力石
奥多摩新四国霊場八十八ヶ所の36番の札所でもあり、御朱印もすてきです。四季をとおして野草や、春は桜、秋は紅葉も楽しめるお寺さんです。
▲御朱印
■施設詳細
多聞院
住所:所沢市中富1501番地
アクセス:西武新宿線「航空公園駅」東口から「ところバス」北路線(富岡循環コース)に乗車、「多聞院通り西」下車 徒歩約5分
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