みんなで声を出せる日まで〜【埼玉西武ライオンズ】応援団の「スピーカー応援」にかける思い


コロナ禍で誕生した「スピーカー応援」とは?埼玉西武ライオンズ応援団がすごいんです!

現在、多くのプロ野球の球場でスピーカー応援が行われています。

「スピーカー応援」とは、あらかじめ録音された曲や、球場のスタンドとは別の場所で演奏される応援歌をスピーカーから流す応援方法のこと。スタンドで大声を出したり演奏をすることができない、コロナ禍の新しい応援スタイルです。

そんな2021シーズンの主流を占めるスピーカー応援ですが、埼玉西武ライオンズのそれは他球団と一線を隔しています。


▲メットライフドーム(西武ドーム)

応援歌に入る前のコール。リズムバリエーションの多いドラム。交流戦限定でイニング間に演奏されるパ・リーグ連盟歌「白いボールのファンタジー」。おなじみの応援歌は言うに及ばず、短いフレーズからめったに演奏されることのないレアな曲まで。非常に多くの音源が用意されています。

それらの膨大な応援に必要な音を、レフトスタンド後方に設置されたブースから、応援団員が迷うことなく的確に再生する様子は、まるでコロナ前の生演奏に戻ったかのよう。

筆者の周りのライオンズファンからも

「こんなご時世だけど、スピーカー応援があると気持ちがたかぶる」
「もっと録音だというのがわかるような音かと思っていたが、途中で『外野席で本当に演奏している?』と一瞬思ってしまうほどリアルに聞こえて驚いた
「スタンドに一体感が生まれる」
「知ってる応援歌が流れると、やっぱり心の中で盛り上がって嬉しい。手が荒れるくらい拍手しちゃう」
「子供が手拍子をして楽しんでる」
「やっぱり音があるだけで全然違う」

などなど、驚きや興奮、喜びを隠しきれない感想が多く上がっています。

なぜ、これほどこだわりの強い応援方法が実現できたのか。なぜ、これほど大変な応援を行うのか。
 

リアルな応援団にどこまで近づけるか?応援団の誇りを賭けてここまでやった!

6月19日、対千葉ロッテ戦の行われる前のメットライフドームで、ライオンズ私設応援団「所沢同獅会」会長代行の福島さん、会計の本田さん、団員の天野さんの三氏に、その理由を伺ってきました。


▲「所沢同獅会」会長代行の福島さん(左)と、会計の本田さん(天野さんは渋滞のため撮影時不在)

――スピーカー応援開始までの経緯をおしえてください。

福島「開幕してから応援団の活動ができないということで、球場には来てるんですけど何もできないもどかしさがあった。お客さんのほうで自主的な拍手応援が徐々に始まってきていたんですけど、どうしても内野と外野で距離もあるので統一感を出すのが難しい。そこで、他球団でスピーカー応援っていうのは先にやられてたんで、ああいう感じでうちでもできないかと、4月前から球団にご相談をさせていただいたってところです」

――先ほども拍手応援について触れましたが、スタンドにいてもスピーカー応援開始前と、4月27日からの開始後ではスタンドの統一感、熱量に大きな差があるように思われます。応援団のみなさんは、ファンの反応をどう感じていますか?

福島「ファンの方々の反応としては『よくやってくれた』というのが大半。スピーカー応援についてはもちろんさまざまな意見もありますが、概ねいい反応だとは思っています」


――どうしてライオンズの応援団だけ、これほど緻密でリアルな応援ができるのでしょう?

天野「うちは全部、生の音をそのまま録音してやってます。悪い所としては回数が、曲の繰り返しが3回なら3回って決まっちゃってる。でも、例えばPCで打ち込みでやるより、こっちのほうがリアルで臨場感があっていいかなと思いますね」


――その曲ですが、曲数がもの凄く多いですよね。一番驚いたのが、1回裏のライオンズ攻撃前に応援団の挨拶まで用意していることです。

本田「私の声です(笑)」


――聞いていて、「ここまでやるとは。これはとんでもないことをやってるぞ」と感じました。実際何曲くらいあるのですか?

本田「曲とか、ドラムの叩き方なども含め、今56曲ですね」


▲録音再生機に収められている曲目リスト


――録音は全て新規ですか?

福島「そうです」


――録音にはどれくらい時間がかかったのでしょう。

福島「時間はですね、膨大に(苦笑)」

本田「2日かけて録って、1日目朝9時に集合して、夜の8時過ぎまで」


――そんなに!

福島「生録でうまくいかなかったところは録り直したりとか。あと、団員で編集できる方がうまく編集してくれたり。毎週ずっと、メットライフドームでの日程が空くと直してます。『ここで終わり』ってことはない」


――それらの苦労が、スタンドの熱気に繋がっているのですね。しかし、なぜみなさんはそこまでの苦労をしてライオンズを応援したいのでしょうか

天野「応援団だからっていうのが一番ベストな(笑) 『応援団だから』っていう気持ちしかないんで。そうとしか言いようがない」

福島「……難しいですけど、まあ、単純に応援団だから。応援したいから」

本田「一言でいえば、そうですね。あとは、結局、お客さんがなにを望んでるかって言えば、やっぱり、球場に来て、みんなで一緒に応援して。声は出せないですけどね。みんなでライオンズを応援したいっていうところでね」

▲みんなでライオンズを応援したいですね

天野「音がない時なんて、みんな手拍子で応援してくれてて『一般ファンがそんなにやってくれてるのに、なんで俺らはなにもできないんだ』ってなるのが一番嫌だったっていうのがある」

本田「スピーカー応援より前だと合わせるのが難しかったりもしましたが、今の応援スタイルで統一してまとまってやれてるってことは、お客さんの満足度って言うんですか? 生演奏ほどではないにしても、ある程度はみなさん満足して応援していただけているんじゃないかなと」


――今後、このスタイルでなにかアイデアはありますか?

福島「うーん……。今、応援旗を振れてないので、旗を振りたいなあとは思ってますけどね。旗を振れたら『あ、許可が出たんだな』と思ってもらえたら(笑)」

本田「リアルの追求ですね。一昨年までの実際にやってた応援と違いのない、リアルな応援を目指して我々もいろいろやりましたけども、今後もよりリアルを追求して。追求っていうんですかね。リアルな応援にどこまで近づけるか

福島「去年の太鼓応援を経て、多分今年のスピーカー応援になったんだと思う。去年の応援は『太鼓がメイン』ってことだったんでやってたんですけども、賛否両論ありましたね。」

本田「ハハ……(苦笑)」


――昨年も球場で観戦しましたが、「太鼓があるだけでも大分違うな」と思っていました。

本田「お客さんのなかにはね、『それでもありがとう』って、『規制のある中でやってくれて』っていう方もいたんですけどね。」

福島「去年のもどかしさがずっと一年間あって。なので、みんなで色々考えて、今はこれがやれることの最大限」


――その辺りの後悔や反省も、大変な思いをしてまでスピーカー応援をする理由の一つなのですね。
では最後に、今後の応援や野球に望むこと、願うことを教えてください

天野「うーん、望むこと……。まずは普通にトランペットとか吹けるようになりたいかな、球場で」

福島「通常に戻ってほしい(笑)」

本田「ハハハ。その通りですけど。まあ本当に、もとの、みんなで声を出して、選手やチームに声援を送るってことを応援団も含めてみんなでやれることをやりたい。ただ、それまでの繋ぎじゃないですけど、それまでのこの応援っていうのは凄く有意義なのかな、とは思う。その、本当のリアルの応援を目指して、そこまでのあいだこれで頑張りたい

天野「あとはライオンズさんが最近元気ないんでね。そろそろ元気付けてもらわないといけないかなっていう。せっかく今年オールスターもメットライフドームであるんで(笑)」


▲メットライフドーム(西武ドーム)

この日、ライオンズはスピーカー応援の熱烈な後押しもあって、初回6点の猛攻でロッテを下しました。入場制限もあって、来場者数は8000人に届きませんでした。しかし、多くのファンがスピーカーから流れる応援歌に合わせて手や応援バットを叩き、スタジアムでの観戦を心から楽しんでいるようでした。

近い将来、新型コロナウイルスが終息したらスピーカー応援は姿を消してしまいます。月日が経てば経つほど、スピーカー応援は人々の記憶から薄れていくことでしょう。しかし、2021年という厳しく苦しいシーズンに、スタンドの熱気を絶やすまいと、ファンが帰ってこれる場所を守ろうと奮闘した人たちがいたことを、いつまでも心に留めておきたい。所沢同獅会のみなさんのお話を伺って、スタンドのファンを見て、そんな風に感じました。



記事の執筆者プロフィール

浮間六太 Ukimarotta
埼玉西武ライオンズの試合をホーム、ビジター合わせて年間100試合以上生観戦するライオンズ熱愛者。この溢れるライオンズ愛をみなさんに無理矢理お裾分けすべく、思い入れと思い込み全開のライオンズ情報をお届けします!

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