所沢の昔話を語る
所沢に民話があるなんて知りませんでしたが、「所沢なび」ボランティアライターのお手伝いをするようになり知りました。
先日、所沢図書館 吾妻分館へ「所沢の昔話を語る:民話」を聴きに行ってきました。
民話の語り手講師は鈴木さんです。
今回のお話の舞台は、現在の所沢市宮本町にある新光寺です。
「あっちいちいの新光寺」
むかし、河原宿(宮本町)の新光寺に、年とったおしょうさんが、一人で住んでおりました。
親切でお人好しなこのおしょうさんに、急にひとつの悩みごとがでてきました。
というのは、新光寺の近くに、一匹のずうずうしい狸が住んで居るからです。
狸は、初めは新光寺の窓から顔を突っ込んで、おしょうさんのお経をあげている姿を、珍しそうに眺めていました。
が、そのうち中へ入り込んで、おしょうさんの後ろにべたりと座り込み、自分もお経のまねを始めました。
「ほう。狸も、お経のありがたさが分かると見えるな。いや、感心、感心・・・・・・。」
お人好しのおしょうさんは、怒るどころか、かえって褒めてやりました。
と、そんなことがきっかけになって、おしょうさんと心やすくなった狸は、次の日から夕方になると、必ず新光寺にやって来ては、おしょうさんを相手に、世間話を始めるようになりました。
いや、そこまではいいとして、困るのは、狸の長っちりなことでした。
座り込んだら最後、夜中になってもなかなか帰ろうとはしないのです。
おしょうさんにしてみれば、どうせ一人ぐらしだし、自分も話好きですから、初めのうちはそれほど思いませんでした。
が、しかし、こうも毎晩毎晩、それも夜中まで続くとあっては、さすがにうんざりしてきました。
おまけに、狸の話ときたら、仲間のきつねが、木の葉をお金に見せかけ、村の店から菓子を買って来たとか、道に落ちでいた馬のわらじを煎餅だとだまして、村の子供たちに食べさせたなどと、くだらない話ばかりです。
ともあれ、そんな日が長い間続いて、すっかり寝不足になってしまったおしょうさんは、とうとう、身体の具合が悪くなってしまいました。
ある晩のこと、おしょうさんの迷惑には、おかまいなく、夜中まで座り込んでいた狸は、さすがに疲れたのか、居眠りを始めました。
いびきをかきはじめたところを見ると、どうやら狸寝入りでもなさそうです。
いくらお人好しのおしょうさんでも、もう我慢ができなくなりました。
今だ!
と思うと、囲炉裏の中の焼けた石を、火鉢でつまんで、狸のまたの間にほおり込みました。
いい気持ちで寝ていた狸は、びっくり!飛び上がって!
『あっちいちい!あっちいちいの新光寺!屋根の上から、火の玉が降りてきた!
もう二度と来てやるもんか、新光寺!』
と、大声で叫びながら、石を外へ投げ捨てて、びっこをひきひき逃げ出しました。
さて、そのあとは・・・・・・?
さすがの狸も、よほど懲りたのでしょう、それからはもう、二度と新光寺には、姿を見せなくなったそうです。
民話資料:ところざわふるさと散歩
なお、この新光寺の本堂は、奈良の法隆寺の“夢殿”の形を真似て造ったということでも知られている古いお寺です。
春は桜の花が、秋は銀杏の紅葉が境内を 賑わせます。
桜の花満開時は、日没より夜10時まで、ライトアップをしています。(雨天中止)
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