狭山丘陵の初冬編(12月下旬) -里山にやってくる冬鳥


所沢市内の南側地域には狭山丘陵を中心に雑木林や谷戸、畑などの景観をもつ里山があります。住宅のある集落でも雑木林や生垣などの緑地環境に恵まれたところには、冬鳥が渡ってきて冬を過ごすことがあります。今回は、初冬の雑木林などで見られる野鳥3種を紹介します。葉をすっかり落とした冬の雑木林は鳥が見つけやすくなります。晴れた日にお出かけしてみませんか。

永石文明

 

古来より趣き深いジョウビタキ

ヒッヒッ、カタカタ。鳴いているのはジョウビタキ(尉鶲)。雄は頭が銀灰白色で、胸が黒色、腹がオレンジ色の派手な色合いですが、雌は地味で全体に淡いオリーブ色。共通するのは翼に白い斑点があること。ロシアで繁殖し晩秋から初秋にかけて日本に渡ってきて越冬する鳥です。ジョウビタキの古い呼び名は「ひたき」。
 
清少納言が平安時代中期に書いた『枕草子』(1002年)には、91例の「あはれ」が使われていますが、特に動物や自然に多いようです。「鳥はこと所のものなれど、鸚鵡(おうむ)いとあはれなり。人のいふことをまねぶらむよ。郭公(ほととぎす)。水鶏(くいな)。鴫(しぎ)。都鳥。鶸(ひわ)。ひたき。(鳥は異国のものだけれど、オウムはたいそう趣き深い。人が言うようなことを真似するというではないか。カッコウ、クイナ、シギ、ミヤコドリ、ヒワ、ヒタキも同じく趣きがあることよ)」で、一つの段落の最後に「ひたき」の名で登場しています。
 

ジョウビタキの雌(ヒタキ科)

若い成鳥の雄が雌に似せるルリビタキ

ルリビタキは、初夏から夏にかけては亜高山帯で繁殖し、晩秋には平地に降りてくる、所沢では冬鳥にあたります。頭や背、尾にかけて青色をした雄が特徴ですが、雄、雌が共通しているのは、青い尾羽とオレンジ色の脇羽です。以前、所沢市の北西部に位置する某大学秩父演習林で初夏、鳥の標識調査の際、ルリビタキが多く生息していた印象をもっていますが、所沢で見られるルリビタキがどこの山から来ているのかわかりません。
 
秩父の繁殖地では「ヒュピロ、ヒュピロ、ヒュピロロ」とよくさえずっていましたが、冬には地鳴き(コール)のみで、「クッ、クッ」「カッカッ」というように低く短く鳴きます。
 
一般的に中小型の鳥の年齢は雛を経て羽が抜け替わって幼羽になったのが幼鳥で、2年目に羽が抜け替わり、その年の秋に成鳥となります。ルリビタキの場合、羽色の変化に不思議な特徴があります。それは、2年目の秋に成鳥になってもまだ全身が青くならないことです。これは体が未熟であることではなく、繁殖は可能でも羽色だけが成鳥にならないことで、英語では「Delayed Plumage Maturation (DPM:遅延羽色成熟:ちえんうしょくせいじゅく)」と呼んでいます。これは、若い成鳥、雄が羽色を雌に似せることで、力の強い雄との闘争を避ける効果があると考えられています。
 

2年目のルリビタキ雄・成鳥(ヒタキ科)

愛らしく小さいもの、ミソサザイ

夏季は高山の渓流沿いなどで営巣するミソサザイですが、冬季は平地へと移動するため、雪の降る冬の訪れとともに山から人里へ降りてきて人家の周りの生垣や農家の小屋や土間の中までに入り、餌となる虫を探します。「チチッ、チチッ」と鋭い声で鳴きながら尾を振る習性があります。ミソサザイの名を呼ぶ方言に「みそっちょ」がありますが、この方言は鳥(ちょう)が訛(なま)ったもので、溝にすむ鳥という意味です。長野県佐久市の方言には「みそっちょこ」とあり、愛らしく小さいものにつける「こ」の接尾語までが付いています。
 

ミソサザイ(ミソサザイ科)
 
冬鳥が見やすい雑木林のある主な所沢市内の公園(公共交通機関利用の場合)

  • さいたま緑の森博物館 糀谷八幡湿地
    アクセス:小手指駅南口発~糀谷バス停下車下車(徒歩約10分)
  • 荒畑富士市民の森
    アクセス:西武狭山線 下山口駅下車 (徒歩約15分)
  • 鳩峰公園
    アクセス:西武西武園線 西武園駅下車(徒歩20分)

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nagaishi

所沢市に引っ越してからすぐに『所沢市の自然』(所沢市発行)の企画に参加させてもらったのが最初の所沢との関わりです。市内をくまなく回って撮影したり原稿を書いたりするうちに所沢の自然の魅力にはまりました。自然が好きで、狭山丘陵自然史研究会では雑木林や湿地、川の生物の調査研究のほか、大学(東京農工大学・立教大学)では自然環境の保全や自然保護文化論を担当しています。趣味の自然への旅が高じて毎日新聞旅行ではネイチャーガイドをしています。

頂いた応援メッセージ

東京都内在住で、白金自然教育園で、野鳥撮影してます。今まで、ルリビタキ♂が、12月に入っていたのですが、昨年から、メス(若オス含む)のみに、なってしまい。今年12月も、1羽オスが、入ったのですが、抜けてしまったようです。気温の暑さの影響でしょうか?1月に、再び入ってくれることを、期待してます。 興味深い鳥のお話、ありがとうございます。また色々、楽しい鳥情報、お願い致します。
2023-12-26 06:30:58

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