高校卒業時に進めなかった道に30歳で挑戦!指揮者米崎栄和(よねざき しげかず)さん


〜【リポート】吾妻教養講座〜地域一受けたい授業〜音楽のススメ 「オーケストラ演奏の可能性を探る」〜

進路を決める時、大人に大反対されて断念…、時が経つにつれふと「あの時別の道に進んでいれば…。」なんて思い返す方いませんか?米崎栄和(よねざき しげかず)さんは30歳になってから音楽の道に進み指揮者になりました。吾妻まちづくりセンターで開催された米崎さんの特別授業は音楽愛でいっぱい!「夢」についても考えさせられました。

2021年7月21日 カケミヅ

 
 


【もくじ】
1、簡単に語られた簡単ではない自己紹介
2、嫌と言うほど聞いていたのに知らないことが沢山!オッフェンバック喜歌劇「天国と地獄」序曲
3、初演時大砲は撃たれたか?チャイコフスキー 序曲「1812年」

 

1、簡単に語られた簡単ではない自己紹介

私が教養講座で米崎さんの特別授業を受けるのは2回目です。(2020年に開催された「オーケストラを楽しもう♪」のリポート記事はこちらです。https://tokorozawanavi.com/news-kakemidu20201214/

▲指揮者米崎栄和(よねざき しげかず)さん
米崎さんは1968年生まれ。東京理科大学大学院で超電導物質(英語ではsuperconductor)の研究をし、大学院修了後就職して、貴金属材料の研究に携わっていましたが、30歳で指揮者を目指すことにして退職しました。(指揮者は英語ではconductorというそうです。運命を感じますね!)
 
同年代の私はバブルが弾けて10年ほどのあの時代の空気感をはっきりと覚えています。30歳で定職を捨ててクラシックの夢を追うことを、家族に大反対されたと聞いて、それはそうだろうと思います。ユーモラスで笑顔の優しい米崎さんの芯にあるであろう強い想いは想像もできません。
 
2003年、若手指揮者の登竜門であるブザンソン国際指揮者コンクールにて初挑戦で最高位(グランプリなし)に選ばれる快挙を成し遂げ一躍注目を浴びました。実は年齢制限にかなり近づいていたそうで、ここまでの経緯を「運が良かった」とおっしゃったことがとても心に響きました。
 

2、嫌と言うほど聞いていたのに知らないことが沢山!オッフェンバック 喜歌劇「天国と地獄」序曲

 
特別授業の1曲目である「天国と地獄」の楽譜を見た時、嫌な記憶が蘇りました。昭和40年代生まれの私。育った地域では運動会のフィナーレの決戦の花(?)舞台、「紅白対抗責任リレー」とかいう競技でこの曲は使われていました。走るのが遅かった私には、恐怖の競技(泣)。
 
ところが解説を始めた米崎さん。この曲に合わせて歌ったのは有名なカステラのCM曲(笑)。カステラは大好きですー。楽しい気分になったところで、特別授業のはじまりはじまり〜。
 

▲吾妻まちづくりセンター・ホール
 
指揮者の仕事は「楽譜」という平面から「飛び出す絵本」のように生きた音楽を作ること。設計図から建物を作り出すような作業。特別授業の資料の楽譜を見ながらどんな楽器がオーケストラにいるのか、音符にはどんな指示がついているのか、読み取れる作曲者の意図、それをどう音として表現するか…!どうすれば曲がより輝くか!!とても分かりやすい解説でした。
 
私にとっては「急き立てられる」ようなイメージの曲でしたが、本来は心躍る作りになっているようです。
 
しかもこの曲、「前半がいいんですよ!」と米崎さん。私は前半の存在を知りませんでした。解説後にまるまる一曲、スクリーンに映し出された映像と共に味わって聴きました。
 
喜歌劇「地獄のオルフェ」(「天国と地獄」は初演時の邦題です。)は倦怠期を迎えた夫婦がダブル不倫をしている設定なのだとか!
 
苦手になる程聴いていた曲でしたが、知らないことだらけ。興味の尽きない対象に変わりました。
 

3、初演時大砲は撃たれたか?チャイコフスキー 序曲「1812年」

特別授業2曲目は 序曲「1812年」。チャイコフスキーがお金のために作った、本人としては思い入れのない曲だけれど出来栄えがいいと言われているのだとか。
 
まずはCDでいろいろなフレーズをかいつまんでの解説でした。
フランス国歌やロシヤ正教の賛美歌、ロシヤ帝国国歌、軍隊の行進を思わせるフレーズなどが題材になって、発展していきます。折り重なっているところなどもありました。専門知識がなくてもその様子が分かり、すごい!と思いました。
 
オーケストラの楽譜には大砲パートがあるんです!でも、初演に実際の大砲が撃たれたのかどうか、結論は出ていないのだそうです。
 

▲Canは「キャノン砲」だそうです。大砲のマークが!!
 
解説の後は米崎さんが指揮を務めた序曲「1812年」の映像を鑑賞。すごい盛り上がり方でした!!(映像に向かって思わず拍手!)
 

▲所沢市吾妻まちづくりセンター(吾妻公民館)前で撮影
 
将来の「夢」を無邪気に語ることを歓迎されたのは何歳までのことだったでしょう。子どもの頃は想い描く夢が大きければ大きいほど「すごいね」と言われていたのに、進路選択となると「夢ばかり見ないでちゃんと現実を見なさい。」と言われてしまうのはよく聞く話…。(かく言う私にもちょっと言ってみて大人に一笑に付された「夢」があったけれど、大人になってから追いかけるほどの気持ちはなかったし、スムースに進んだとして、果たして弾けたバブルや降りかかってきたいろいろな出来事に立ち向かうことはできたのだろうかと考えました。)
 
米崎さんも夢を大人に阻まれたけれど、大人になったからこそ自分の責任で夢に向かって進んで行けているのですね。
 
米崎さんからはオーケストラ曲への愛、仕事が大好き!と言う思いが伝わってきます。大人になったからこそできることの可能性も…。

今回の聴講生の最年少は小学5年生。情報ではなくナマの存在に触れられることはとても貴重な経験だと思います。子どもにも大人にもぜひおすすめの特別授業。次回の開催も楽しみです。

イベント情報

吾妻まちづくりセンター主催
吾妻教養講座〜地域一受けたい授業〜音楽のススメ
オーケストラ演奏の可能性を探る

日時:7月21日(水)10時〜12時
場所:吾妻まちづくりセンター(吾妻公民館)・ホール
   所沢市大字久米2229-1
講師:米崎 栄和さん

米崎 栄和(よねざき しげかず)さんの プロフィール

1968年大阪府吹田市生まれ。東京理科大学大学院修了後就職するも、音楽への夢断ちがたく30歳で退職。
2001年東京音楽大学指揮科研究生となり、紙谷一衛、汐澤安彦、ヴェリサー・ゲンチェフ、広上淳一、湯浅勇治の各氏に師事。
1999年ハンガリー国際ラバフェスティバルに参加。 国内各地のオペラやオーケストラで指揮・副指揮を務め研鑚を積む。
2003年若手指揮者の登竜門であるブザンソン国際指揮者コンクールにてコンクール初挑戦で最高位(グランプリなし)に選ばれる快挙を成し遂げ、一躍注目を浴びる。
2004年7月、元ウィーン・フィル コンサートマスターのライナー・キュッヒル氏とベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を共演。
これまでにリヨン国立管弦楽団、東京フィル、新日本フィル、東京交響楽団、名古屋フィル、九州交響楽団、大阪センチュリー交響楽団(現日本センチュリー交響楽団)、仙台フィル、群馬交響楽団等を指揮。
2006年9月より1年間、スロヴァキア国立歌劇場で指揮研究員として研鑽を積む。
2008年4月、スロヴァック・シンフォニエッタ・ジリナ(スロヴァキア・ジリナ国立室内管弦楽団)の定期公演に招かれ絶賛を浴びる。2009年2月に再客演の後、2010年2月にも定期公演に出演。
現在、国内外のオーケストラの客演指揮者として活躍中。


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