少し前…昭和の時代。貧しくも心豊かな暮らしの愛情あふれる物語。幅広い世代の方におすすめの【かみしばい】渋沢栄一が登場する作品も…


おかのけいこさん作、高齢者向け紙芝居「なまたまご」と、渋沢栄一ゆかりの黒須銀行を題材にした紙芝居「道徳銀行」をご紹介します。

2021年8月 カケミヅ

高齢者向け紙芝居「なまたまご」


▲高齢者向け紙芝居「なまたまご」脚本・絵 おかのけいこ

昭和22年、第二次世界大戦後の日本のおはなしです。生まれたばかりの「さんちゃん」を丈夫に育てようと、おかあさんは毎日毎日なまたまごを食べさせます。

この印象的な表紙について、子どもの文化研究所所長の片岡輝氏(元東京家政大学学長・「飛んでったバナナ」他を作詞。)は「シルエットが心象を効果的に表現する。高齢期に達した人間に己の自分史を思い起こさせる作品」と評されています。

些細なきっかけですっかり忘れていた記憶がよみがえる。…さらにそれをきっかけに芋づる式にいろいろなことを思い出すことって、ありませんか?

懐かしいものを見たり触れたりしながら経験を語り合うことは、「回想法」として認知症へのアプローチとしても注目されています。

紙芝居「なまたまご」は主に介護施設、出版社主催の東京・大阪での介護レク、全国紙芝居まつり、県立土屋文明文学館で演じられています。東京芸術劇場で、日本児童文学者協会内の平和を願う会で演じられたことも…。


▲貧しくも心豊かな暮らしの愛情あふれる物語

高齢施設で実演されると、入所者の皆さんは当時を思い起こされて、会話が弾んだり、涙ぐんだりされるそうです。作者のおかのさんご自身も人として、恥ずかしくない生き方を、子に示す母の凛とした姿に実演しながら鑑賞者の方と共に情景を思い起こして胸がつまる、と。

貧しくも心豊かな昭和の生活に触れられる作品。当時を知らない世代の方々にもおすすめの作品です
  

紙芝居「道徳銀行」


▲紙芝居「道徳銀行」脚本 マツワ(おのくみこ&おかのけいこ)・絵 おかのけいこ

明治時代、入間市が豊岡町と言われていた頃、黒須地区に豪農商の繁田家(味噌・醤油・茶業等)がありました。篤農家の渋沢栄一氏と繁田家当主の繁田満義氏は、懇意でした。「論語と算盤」…いわゆる、道徳と経済合一説を唱えた渋沢栄一氏の助言を得て、豊岡町の人と産業発展のためにささやかな庶民の貯蓄を資本とした「黒須銀行」を建てました。そこで得た利益は、年末の慈善袋として、町民に還元したり、学校や公共事業に寄付して、道徳的に運用したことから、創業15周年記念に「道徳銀行」と渋沢栄一が額に書いて贈りました。その額は、合併を経て現在、埼玉りそな銀行となった本店応接室に飾られています。これを題材にした紙芝居作品です。

こちらの紙芝居の実演は入間ケーブルテレビで2021年8月22日~28日「スタジアム入間」にて①13:00~ ②19:30~、1日2回 1週間リピート放送される予定です。
  

作者おかのけいこさんに聞く「なまたまご」誕生秘話

おかのさんとの出会いは入間市博物館でのことでした。印象は…底抜けに明るくて少し…「サザエさん」(笑)。ふとした会話の中から紙芝居「なまたまご」のことを知り、現物を手にしてびっくり!なんとも言えない深い愛情を感じました。

おかのさんに所沢なびで紹介させていただけないか伺ったところ、嬉しいお返事が!

「今回は、数ある作品の中から、私の作品を見出してくださいまして、心より感謝いたします。ありがとうございます。」

そして、恩師の方々との大切な写真と大切な教えも。


▲左:児童文学作家 わしおとしこさん(小学一年生道徳教科書「ともだちをたすけたぞうたち」作者)、中央:児童文学作家 岩崎京子さん(小学校二年生国語教科書「かさこじぞう」作者)、右:おかのけいこさん 

「『未来を創る子どもたちに伝えるものは、デスクワークは勿論、しっかりとフィールドワークを重ねて取材を行い、たとえ、ファンタジーであっても、嘘の無い、心に響く言葉を紡ぎなさい。』と日本児童文学界の大御所である岩崎京子氏と紙芝居のご指導をいただくわしおとしこ氏の両氏から教えを受け、改めて、『言葉の重みと尊さ』を認識しました。」

ーーー現在はどのような活動をされていますか?ーーー
一昨年よりコロナ禍で活動ができない状況ですが、通常は私のライフワークである、絵本と紙芝居の研究と創作。そして、自己啓発となる大学での絵本授業のお手伝い。秋には、東京都美術館よりご推薦をいただいて作品展示を行っています。
創作は、「我が子の今を残したい!」と言う思いで、手作り絵本から始まりました。紙芝居は、毎月、都内認知症介護施設で、人とのふれあいを大切に演じております。20代から続けているボランティア活動を通して、お金には変えられない思い遣りをいただいています。目に見えないものほど、大切ですね。

ーーー「なまたまご」を作ったきっかけは?ーーー
介護紙芝居として、戦後の食糧難での母子愛を描きました。しかし、創作のきっかけは、ある病院で、親に虐待されて大やけどをおった少女を目の当たりにしたことです。頻繁に耳にする幼児虐待に対する警鐘として、母性を思い起こして欲しくて、創作しました

ーーー「なまたまご」のモデルとなったエピソードはありますか?ーーー
戦後の食糧難での母子愛のヒントは、私が高校時代、戦争直後に生まれた先生の「高価な生卵を母親が手に入れて、飲ませてくれたお陰で「虚弱体質で育たない」と、言われていた私でも、どうにか、生きて来られました」という実話から生まれました。

ーーー今後の紙芝居の制作予定はありますか?ーーー
未熟な私ですが、コロナ以前より創作依頼を受けております。しかし、介護を理由に手を付けられない状態です。

ーーーどうして絵本ではなくて紙芝居なのですか?ーーー
「なまたまご」は、手作り絵本として、東京都美術館へ出展したこともあります。今回は、“介護現場でのレクリエーション時に使う”のが目的ですので、特定多数の方が集う施設のお部屋で、多数の方が“お互いに共感しあえる特性”を持つ、日本独自の文化財「紙芝居」でした。
簡単に例えると、絵本は、自己と対峙しながら、自分のペースで、前ページに戻ったりと、自由にイマジネーションを楽しめる、外国で生まれた文化です。いずれも大好きな私の宝物です。


おかのさん、お忙しい中ありがとうございました。
おかのさんがどんな思いで時間をかけて作品を作り、実演を重ねているのか考えると私も胸がつまります。気になった方ぜひ手に取ってみてくださいね。


作品紹介

高齢者向け紙芝居「なまたまご」

武蔵野美術大学奨励賞受賞作品『生卵』(絵巻物・日本画)を紙芝居化
2015年4月10日初版第1刷発行(株式会社雲母書房)

●出版に関するお問い合わせは「くるんば」松村さん(電話:090ー8058ー0649、メール:matsumura@kurumba-m.com)まで

京都の図書館司書さんが病院内「認知症カフェ」で実演されてから、国立大学医学部認知症学会で「なまたまご」が紹介されています。(WEB:京都市醍醐図書館『回想法』を中心に)



記事の執筆者プロフィール

カケミヅ KakemiduPRO
高知で生まれ育って2018年に埼玉に引っ越してきました。所沢なびライターとしてふるさとの文化についてご紹介できるようになれればと思っています。趣味はiPadでイラストを描くことです。

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