作業期間2か月、忘年会に間に合わせよ!「世界食堂」設計士・藤原芳博さん★読者特典あり


参加アーティスト・職人は15人以上!型破りな手法で出来上がった「世界食堂」

昨年末、所沢に出現したネオ大衆食堂「世界食堂」、所沢なびでもこれまでオープンまでの道のりをお伝えしてきましたが、今回は設計に携わった藤原芳博さんにインタビュー。低コスト・短納期・参加アーティスト過多!な現場の裏側とは???

2022年3月取材 前原麻世

 

お店は出来上がっていないけど「忘年会」の予約が入っている!

「世界食堂」は所沢駅徒歩6分、ビルの2階にオープンした令和版大衆食堂である。
その場所が、以前はライブハウスだったという面影を残す2つの入り口を経て店内に入ると、目に留まるのは天井から吊り下がる植栽や、店の窓側の中心に位置する太い橙色の柱だ。それから、店内のいろいろな箇所に目を遣ると、魔訶不識な椅子があることや、恐竜が飛んでいること、ジャンルが不明なレコードが置かれていることなどに気づくのではないだろうか。

その一つ一つはいづれも個性が強いものだ。しかし、ふしぎと「こういうのがあってもいいかもね」と、なんとなく腑に落ちてしまう。そんな印象を受けるのが「世界食堂」という場所である。
この空間を作るために文字通り奔走したのが、設計に携わった藤原芳博さんである。


▲設計士・藤原芳博さん

藤原さんは島根県生まれ、前橋工科大を卒業後、国内外の公共施設・研究所等の設計に携わり、またメーカーのプロダクトの開発にも参加する設計士。2020年7月に所沢市内椿峰ニュータウン内に居を構え、家族とともに所沢市民に。と同時に、勤務先がテレワークを推奨しているため近所のコワーキングスペースで仕事をするようになったのだ。それが、RPG.worksが運営するSAVE AREA内の「アクウカン」。実はその縁で、RPG.worksが新規に開業することとなった「世界食堂」の設計を任されることになったのだ。

さて、この「世界食堂」開業にあたって、プロジェクトのスタートはこの場所で前店である「Mojo」が10月いっぱいで閉業したのち、11月からであった。
そこから作業を始めるのだが、なんと型破りなことに、その新しくできる店にはすでに年末に忘年会の開催が予定されていた。
 

低コスト・短納期、そして”変な人”がいっぱい!?

店舗はオープンしていないのに「2か月後に忘年会の予約が入っている……。」

そんな状況下で藤原さんが導き出したのは「短い期間でやれることをしよう」というものだった。
 
――「Mojo」の空間をスケルトンにしてしまうのではなく、極力残せるものは残し、世界食堂でも使おう。
――コストに関しても潤沢な資金があるわけではないため、お金をかけて手を入れることは避けたい。
 
さらに、このプロジェクトが一般的な店舗オープンに向けた流れとは全く違うものになったもう一つの要素が「ワンストップで工務店に施工を発注”しない”」という点であった。
つまり、オーナー角田テルノさんの周囲のクリエイターや職人10数名を集めて施工していく、というもの。そしてメンバー選定のコンセプトは「私たちの想像できなかった角度を生み出すこと」 
 
――工務店に一括で依頼することではかなわない、施工をする職人さんやクリエイターさんたちが、経験と知恵から発する表現を見てみたい。


▲「Mojo」閉業後、「世界食堂」施主・角田テルノさん現地調査中の様子

テルノさんはその理由を「幼稚かもしれないけど、何が起きるかわからないのが面白いから」と自身のFacebookに投稿している。
藤原さんも「設計者って最終的なイメージから作っていくんですがそれをやったら確実に破綻するな、と。最終的なイメージを提示しないやり方って何があるのかなと模索しながら進めていった」と話す。

かくして、藤原さんが陣頭指揮を執り、「変な人がいっぱい」(藤原さん談)な15名以上のクリエイターや職人を率いたプロジェクトが開始した。
 

天井にクモの巣が!作家の暴走も受け入れる

「最終的なイメージを決めない」という前代未聞の店舗設計プロジェクトは様々な“驚き”やクリエイター・職人どうしの“セッション”を生み出していった。

ある日、現場に来た藤原さんを驚かせたのは、天井に現れたクモの巣のような多数のパイプであった。
犯人(施工者)は家具職人のHi-D氏。

藤原さんが依頼したのは、天井から植物等を吊り下げるためのパイプを天井のラインに沿って取り付けてほしい、というものであったはずだった。決して「縦横無尽に張り巡らしてほしい」なんてオーダーではなかったはずである。
しかしなぜこうなってしまったのか?
おそらく、Hi-D氏が作業を始めたところ、もっと取り付けたい!という衝動に駆られて止められなったのでは、と藤原さんは察する。
一般的な現場だったらそんなことがあったら「今すぐ取り外して!」となるかもしれないところ、そうはならいのが「世界食堂」である。
藤原さんは、このままでいこう、とアーティストの意思を尊重することにした。
オープン4か月が経過した今、店内を彩る植物は増やされることとなり、無数のパイプは結果的に「たくさんものが吊り下げられ、あればあるだけ便利かも」と実用の面で評価を得ている。


 

オーダーは「予想外のできごとが起きてほしい」生まれた策が「バーバパパ」

はたまた別の日には、藤原さんは現代美術のアーティスト・井口雄介さんともにテーブルを作っていた。
実は世界食堂に何台かおかれている天板が寄木風になっているテーブルは既製品ではなく、完全ハンドメイドなのだ。設計はもちろん藤原さん、天板の寄木は井口さんが塗装をテストし、テルノさんが配置をデザインしたものになっている。金属製の脚の溶接は井口さんの友人の鉄工所にお願いした。

筆者も何度か世界食堂に足を運んでいるが「家族で食事をしたあのテーブル、何気なく使っていたけどすべて手作りだったのか!」と驚いた。


▲テーブルの天板の配色はテルノさんがお気に入りのスニーカーから着想を得、デザインした

藤原さんによると、世界食堂の設計に当たって「バーバパパの世界観」をイメージしたのだそうだ。
「全部真っ白にしたり全部グレーにしたりすれば、それなりには見える。でもそれってバラバラなものがバラバラにあるだけな状態にしかならない。そうではなく、バーバパパみたいにいろいろな色があって楽しくて、その時々に応じて形を変えることもできる。いろんな人が色々なものを持ち込んでくるが、何か世界観が通じるような気がする……そういう状態を目指しました。」

プロジェクトが走り出した時点で、藤原さんは参加メンバーについて、何が具体的にできてどういうものが作れる人がいるのかよくわからないままであった。しかし、施主であるテルノさんの「予想外のできごとが起きてほしい」という要望に応えるためにには「バーバパパ」の発想が必要だったのかもしれない。
実際には、「いまあるものとこれから来るものをどうつなげるかをずっと考えていた」のだそうだ。
「これが来るならここにこの色を足そう。」
一つ一つは一見バラバラに見えるが、バラバラなものどうしの中でも関係ができている状況を作れば、そのあと何が来てもだいたい何かと関連付く状況が作りやすくなるはずである。そんなことを繰り返していた。
世界食堂において設計士に求められていたものは「最終的なイメージに向かう」という一般的なものではなかったのである。
 

「Mojo」の名残は?

この場所の「Mojo」時代を知っている人たちにしてみれば、「残された部分」が気になるかもしれないので「Mojo」の名残をいくつか紹介したい。

まず、三角のカウンターはそのまま残されている。年季の入った木製のカウンターの色は、程よい飴色になっている。その色を生かすために、窓枠はもともとの木調を残した着色を行った。


▲17年に亘る「Mojo」の営業の末、程よくエイジングされているカウンター席


▲窓枠は着色してあるところとそうでないところがある

ベンチシートの色もえんじ色のままで変えていない。
奇しくも、クリエイターの方が提案してくれたロゴがちょうどベンチシートの色と似ていた。


▲奇しくも、もともとあったベンチシートが、ロゴの色に似ていた

皆さんは、窓側の壁と窓が防音のため二重だったのを知っているだろうか?それらを壊すことはもちろんせず、藤原さんは外側の窓と内側の窓の間を活用しブラインドを取り付けた。これで、室内を暗くすることができる。さながら“クラブ”のような雰囲気も作り出すことができるわけだ。


▲この構造が“クラブ”への変化を可能にする

 

バラバラだからこそ新しいものが入ってきても受け入れられる

設計士の頭の中にあるゴールを実現するために職人さんが言われた通りに作業するのではなく、多くのクリエイターや職人が寄ってたかって作り上げていくのが「世界食堂」のやり方だ。
「Mojo」の使えるものは残して、自分たちなりにアレンジすることに面白さを感じる。大げさに言えば過去へのリスペクトの表れと言えるかもしれないが、もともとこの地にあってこの街のよりどころとなっていた「Mojo」を生かすことは彼らにとってごくごくまっとうなことであり、本旨であると言えるのはないだろうか。

藤原さんが世界食堂完成後に書き記した言葉に「自分の知らない世界に変わっていく様相をいつまでも一緒に楽しみたいと思っている。」とあった。
バラバラだからこそ新しいものが入ってきたときに受け入れられる度量がある。そんな未来を「世界食堂」を通じて筆者も見てみたい、そう思わせてもらった。

▶藤原芳博さんwebサイト
http://yoshihirofujihara.com/
 

ここがポイント!【世界食堂】

世界食堂のおすすめメニューを紹介します。

★1★ 世界各地のビール!

世界食堂では世界各地のビールのラインナップに力を入れていく予定です。
世界各地のビールとともに世界各地のメニューを楽しんではいかが?

★2★ コブサラダ、ビリヤニ、ローストポーク……世界各地のメニューをどうぞ!オリジナルメニューの「パクチージェノベーゼ」も必食

料理人として世界の様々な料理を自身の舌で体感してきたという世界食堂シェフの黒田さん。
彼の料理知識の引き出しと他スタッフの感性をセッションさせ、日々メニュー開発に勤しんでいます。


▲世界食堂シェフ・黒田さん


▲上段左からホットサンド・ローストポーク、下段左からビリヤニ・パクチージェノベーゼ・コブサラダ

パクチーでジェノベーゼパスタを作ってみた、という「パクチージェノベーゼ」もその一つ。
コレもアリかも! と新たなインスピレーションを得られる料理になっています。

 

所沢なび読者特典!
「所沢なびを見た」でソフトドリンク1杯無料サービス!

この記事をご覧になった方は、来店時「所沢なびを見た」とスタッフにお伝えください! 
ソフトドリンク1杯無料サービスいたします。
※お1人様1回まで
※お1人様につきフードメニュー1品オーダーの場合に限る
※グループでご来店の場合、全員に適用OK
※お子さまの場合キッズサイズのドリンクとなります
※有効期限2022年6月末日 

 

■店舗詳細


住所:〒359-1124 埼玉県所沢市東住吉7−9 ティーイングビル 201
営業時間:
ランチタイム11:30〜15:00
ディナータイム17:30〜21:00
定休日:火曜



記事の執筆者プロフィール

所沢なび編集部 ライター
2010年8月に所沢プロペ商店街に立地します商業施設「所沢サンプラザ」のメンバーにて設立しました。2011年3月の東日本大震災を機に、正確な情報発信の大切さを改めて実感し、本格的に活動を開始しました。

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