【夏を懐かしむ】入間市博物館ALITで夏のテーマのお茶の世界を味わった〜「猛暑から処暑へ」〜


秋が深まる頃になると湧き出てくる感情があります。暑い暑いと文句ばかり言って、…夏さんごめんなさい、という気持ち…。今はあなたが懐かしい。

▲今回は、暑い暑い夏の日の思い出です

所沢市のお隣の入間市は狭山茶の主産地。博物館ALITではお茶に関するさまざまな調査研究、情報の提供もされています。

それは夏真っ盛りの頃、友人が「ALITの展示が面白かったよ。」と声をかけてくれました。
ちょうど以前お話を伺ったことがある学芸員の安部清子さんと会うことができたので、展示についてたっぷり教えていただきました。その中からのご紹介です。

まずはお茶室の楽しみを体験

8月の展示のテーマは「猛暑から処暑へ」①「平和展によせて」②「夏の思い出」というものでした。

8月の暦は、1日「八朔」、7日「立秋」、11日「山の日」、13日「盂蘭盆」、15日「終戦記念日」、16日「京都五山の送り火」、23日「処暑」といった行事があります。
そこで、「平和」、「先祖供養」、「処暑」をテーマに、虫たちと遊んだ夏の思い出を道具に託してみたいと思います。

という説明書きがありました。

安部さんはまず我々二人に「この文字は読めますか?」と尋ねました。(右端の短冊です。)「夏…雲…◯?奇…峰…」。3つ目の文字が難しいです。

初めはうーんうーんと頭を捻っていましたが、「読めなくてもいいんです。漢字からなんとなく情景が浮かびますよね?」と言われ、一文字一文字味わいました。


▲ちょうどこの日の天気とぴったりの文字の並び

「夏雲多奇峰(かうんきほうおおし)」〜四時詩(しいじし) 伝陶淵明より〜、意味は「夏の青空に現れる入道雲のめずらしい峰の形のこと」だそうです。

隣にあるのは虫かご。中を覗くと…なんと和菓子が入ってました。この虫かごはお菓子器だそうです。これからどんな取り合わせを見ることができるのか胸躍る、お茶室のお待合の気分を味わうことができました。

左の短冊は「せみ図 枝上一蝉吟」(しじょう いっせん ぎんず)(文浄老師筆 複製)。頭に浮かんだのはにぎやかな蝉の声。

「ではお茶室を覗いてください。」

こちらはあくまで覗くだけ

正面の床の間を見ると、ここにも蝉!蝉の形をした花入が飾ってありました。

▲「平和」への思いを託しての、茶箱の展示がされていました

点前座(茶席で亭主が茶を点てるために座る場所)には茶箱がありました。

裏千家十五代、鵬雲斎(ホウウンサイ)大宗匠は第二次世界大戦で海軍特攻隊員だったそうです。戦場に茶道箱を持って行き、戦友に頼まれて茶箱の「和敬」点てで一碗を差し上げていたそうです。(その後「一碗でピースフルネス」をスローガンに(2022年現在)99歳の今もなお、世界平和への普及活動を行なっておられます。

抹茶道具については「涼やかさを運ぶ道具 風炉・釜は茶席で火を起こし湯を沸かす道具。本品は極暑のこの時期にだけ使用する透き木釜。風炉と釜との間には、桐材を挟んで、極力火を見せないで、涼やかさの工夫です。平茶碗は、雪の結晶模様により涼やかさを演出しています。」という説明書きがありました。

夏の思い出の取り合わせ。葡萄、蟹、蓮などのモチーフがありました。


▲右上のお茶碗は「雪花紋平茶碗」。平茶碗は夏茶碗とも呼ばれます。白い釉薬に雪の花の結晶で涼やかさが増します。右下は葡萄のモチーフです。夏のモチーフのお道具が集められていました

お道具を一つ一つ味わっていると安部さんが言いました。
「そんな楽しい夏も終わる頃、『処暑』。ヒグラシが夏の終わりを告げているかのようです。」

おお…、と友人と二人で蝉の短冊や蟬籠をもう一度眺め、盛夏から夏の終わりまでを満喫した気分になりました。

特に印象に残った展示3選


▲三浦竹泉(3代)作 「染付桃樹文形水注(そめつけとうじゅもんがたすいちゅう)」

こちらは昭和時代の作品で南宋の詩人陶淵明の『桃花源記』の話を元に創作された作品。
ある時魚を捉えることを職業としていた人が舟で谷川に沿っていくうちに突然桃の花が咲いている林に行きあたります。トンネルのようなところを潜り抜けると…どうやら昔の時代にタイムスリップをしたようで…。元の世界に戻ったのち、もう一度行こうとしたけれど二度と行くことはできなかった。…という世界観が込められている作品。摘みが蝶だったりや注ぎ口や取手に水の紋様があることについて、友人と話し合って楽しみました。

またいつかもう一度阿部さんから直にお話を聞きたいなあと思っています。

友人は以前からそういう思いがあるようで、この日も何度目かの「売茶翁高遊外(ばいさおうこうゆうがい)」(日本に煎茶を普及させた文化人)の展示の説明をおねだり。


▲しっかり解説があるのですが、お話を聞くのはワクワクします

最後にご紹介するのは「鹿摘四方水柱(しかつまみよほうすいちゅう)」。

「鹿の摘みが特徴的」な作品。書かれているのは南宋の詩人楊万里の七言律詩(冒頭)。この詩にたどり着くまで大変だったそうですよ。

実は一度二人で見た時はスーッと通り過ぎてしまった展示物(汗)。解説を聞くと、なんと貴重なものを見逃していたのかと、驚きました。


暑い日も寒い日も、少し足を伸ばしてお茶の文化に触れてみてはいかがでしょうか?
(※テーマは毎月かわるそうですよ😲)

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施設詳細

入間市博物館
電話:04−2934−7711
所在地:埼玉県入間市二本木100
HP: https://www.alit.city.iruma.saitama.jp/

2022年8月取材 カケミヅ


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カケミヅ Kakemidu

高知で生まれ育って2018年に埼玉に引っ越してきました。所沢なびライターとしてふるさとの文化についてご紹介できるようになれればと思っています。趣味はiPadでイラストを描くことです。

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